#03 橋本孝之 Solo Improvisation
Text by 剛田武 Takeshi Goda
敬意と礼儀が求められる世界への回答。
表現者として人前で何かを披露する行為は鍛錬や経験に関わらず、行為者と受け手の関係性に大きく依存する。行為者と親密な関係性を持つものにとっては、彼(彼女)の発する言葉・音響・動作・意識は如何に難解・独善・微弱・前衛であっても伝わるものであり、例え理解できなくても愛惜しむ気持ちからあからさまな嫌悪感を抱くことは有り得ない(もちろん可愛さ余って憎さ百倍という例もあるだろうが)。
ところが受け手が全く接点のない赤の他人である場合、表現者が如何に真剣且つ誠意的に自らを曝け出そうとも、いや真摯であればあるほど、逆に理解しようとする意志すらない無責任な他者が反感を煽るような言葉で嘲り、便乗する糞どもが火に油を注ぐ傾向がある。そこには敬意も礼儀も存在しない。
そんな悲しい表現行為への冒涜を日常的に目にするこの世界に生きていると、この日国分寺の地下のクラブで行われた橋本孝之の初めてのワンマン公演に集まった愛のある観衆との間で繰り広げられた表現行為の素晴らしさがひと際眩しく記憶の中で光を放つのを感じる。このような理想的な表現環境がより広く伝わり実践されれば、神様なんかいなくても、この世の中をもう少し住み良い世界に創り変えることが出来るに違いない。(2019年12月15日記)