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R.I.P. 近藤等則No. 271

時間を止めたりズラしたり、怒鳴ったりする近藤さん bassist 菊地雅晃

text by Masaaki Kikuchi 菊地雅晃

・・・近藤さんを生で初めて見たのは、80年代か90年代か忘れたが、渋谷のイケベ楽器という楽器屋だった。

僕が店内を冷やかしていたら、カウンターで店員に向かって大声で、クレームだか質問だか、とにかく物凄い剣幕で怒鳴っていたところを見たのが最初だった。
「あ、近藤等則さんだ。・・・なるほど、こういう人か・・・面白いなあ」と思った。

それ以来、近藤さんとは、実は今年の6月?くらいまで全然面識がなかった。
7月に一緒にライブをやらせて頂いたが、元はといえば、ウチの近くの「masa2sets」という音楽バーで「こないだ近藤等則さんが来た」という話を聞いたので、「へえ~この近くにお住まいなんだ」というのが始まりだった。

その話を聞いてから1年位は何もアクションを起こさなかったが、ある時ふと、「近藤さん、誘えないかな・・・」と思い、コネもなにも無かったけど、メールでいきなりお誘いしてみた。結果、近藤さんは快諾してくれた。

近藤さんのスタジオがウチから自転車で10分位のところという至近だったこともあり、早速お邪魔させて頂き、バカ話から、真剣な音楽の話まで数時間しゃべらせて頂いた。

ライブの打ち合わせのためという名目だったので、最初はとりあえず自分の音源などを聴いて頂くべく、僕らしくPCのセッティングなどをいきなり始めたのだが、「そんなことはええから。とりあえず落ち着いて話そうや。」ということで、なるほど、わかりました、ということで椅子に座らせて頂き、頭の力を抜いて、とりあえず一服、から始まった。

ヨーロッパでのインカス・ICP関係時代のお話やら、色々な音楽についての話や、女の話や、その他ここに書けない話まで、多岐にわたってお話させて頂いた。

・・・近藤さんは物事を全てハッキリ言う人で、さっきの「そんなことはええから。とりあえず話そうや」とか、そんな感じなのだが、しかし険悪にもならないし、アトにも引かない。

・・・そもそも物事を、キツいことでもガツガツハッキリ言う、というキャラクターのミュージシャンの人は、僕はプーさん(菊地雅章p)で散々に鍛えられ、慣れていたので、ケンカにもならず非常に楽しくしゃべれた。

非常にお茶目な面もある、いくら毒舌を吐いても憎めない「カワイイ」と言ってもいいくらいの人で、僕はとてもラクに楽しくしゃべれた。

近藤さんも毒舌だが、僕も毒舌なので、二人でいろいろとミュージックシーンやミュージシャンや「様々な楽器」に対しての建設的(?)な悪口を言い合って、大笑いしながら非常に楽しい時間を過ごさせて頂いた。

・・・そのうち、「じゃあ今度のライブはどんな感じにしようか?」という話になり、僕の音源をいくつか聴いて頂いたのだが、どの音源に対しても、良い事も悪い事も非常に的確でスルどい事を言われるので、「おお、やはり凄い人だ!!」と思った。「悪いほう」の批評に関しては、とても的確な事をいわれるので、すごく勉強になった。

・・・自分でも感じていた、僕の音楽の欠点というか特徴?に関してもかなり的確な事を言われるので、やはり「おお凄い!!」と思った。

そのうち、僕の音源を聴きながら、例のエフェクトトランペットを吹きはじめられた。

どうやって合わせるか、あるいは合わせられるか模索しているようだった。

その時思ったことは、とてもキレイな音を出す人なんだなあ、ということで、エフェクトの操作や使い方など含めて、隅から隅まで神経が行き届いた音を出しておられた。

・・・その後、ライブまでは僕の方がちょっと忙しく、近藤さんからは「はよ来いや~!!」と矢のような催促がきたが、結局ライブ当日までそれ以上の打ち合わせはできないまま、本番に突入したが、録音・録画に関しては、うまくいっておらず、結局記録らしいものはオートレベルで録ったあまり画質の良くないものしか残っていない。

これを近藤さんに見せたところ「ちょっと世に出せるクオリティじゃないね」と言われたので、これはとりあえず封印ということになった。

しかし、そのライブでも近藤さんのエフェクトトランペットは冴えていた。僕はいつもの如くウッドベースにリングモジュレーターをかけてフィードバックさせたりした他、自分で作ったダブのトラックや、雨の音などを流したり、色々試行錯誤しながらやっていたので、自分的に失敗(?)した部分もかなりあったが、これを機にもっとスキルを高めねばと思った。

・・・近藤さんは、その時のライブでもとてもユーモアのあるMCをされ、近藤さんも久々のライブということで楽しんでくれたようだった。

僕はいわゆる「多動児(ADHD)」なので、近藤さんがMCをしている間にも、自分のセッティングが気になってしまい、近藤さんのMCのジャマをする気は全然なかったが、たまにセッティング確認のときに「ボッ」とかPAから音が出てしまうことがあり、近藤さんに何回かツッコまれた。「お前、落ち着きないなぁ~」とか「お前、だから音出すなっちゅうねん!!」とか、まるで漫才のボケとツッコミのようで楽しかった。

・・・しかし、またライブの機会を作ろうと思っているうちに、いきなり、ほんとにいきなりこんな事になってしまい、とても残念な気持ちだ。もっと早くに機会を作ればよかったと思うことしきり。

・・・あのような、昔ながらのガンコなミュージシャンがどんどん居なくなってしまう。

今の時代にそぐわないといえばそぐわないかもしれないけれど、やはりああいう人は色々な意味でとても貴重だと思う。

・・・近藤さん、最後の最後にとても貴重な勉強をさせて頂き本当にありがとうございました。

あの世でも、時間を止めたりズラせたりして、どうぞお楽しみ下さい。

でももう少し遊んでほしかったです。


菊地雅晃(きくちまさあき)
1968年東京生まれ。ベーシスト・ギタリスト・作曲家・DTMer幼少より両親などからピアノを中心に様々な音楽の手ほどきを受け、コントラバスを井野信義氏、ゲイリー・ピーコック氏に師事。作曲を内田勝人氏に師事。スタンダード・ジャズ、インプロヴィゼーション、現代音楽、クラブ・ミュージック、フィールド・レコーディング、ロック、クラシックなど、様々な音/音楽の演奏・制作を行っている。
最近のコアな研究分野としては、DTMによるシスティマティックな微分音の追及、また、差音と加音を12平均律に強制ピッチ・クオンタイズした「奇妙な新しい調性による音楽」の追及、さらに「ポリ・ミュージック」の追及などを行っている。「3拍5連」の「なまらない」ポリリズムが得意。

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