#07 『Hard To Understand/Jaromír Honzák (ヤロミール・ホンザーク)』

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text by Ring Okazaki 岡崎凛

Animal Music CD:2020

David Dorůžka (electric & acoustic guitar)
ダヴィド・ドルーシュカ
Luboš Soukup (clarinet & tenor saxophone)
ルボシュ・ソウクプ
Vít Křišťan – piano, Fender Rhodes, Wurlitzer, electronics
ヴィート・クシシュチャン
Jaromír Honzák (electric & acoustic bass)
ヤロミール・ホンザーク
Martin Novák (drums, percussion)
マルチン・ノヴァーク

1.François Truffaut
2.Just Thinking
3.Rain Cloud
4.Simple Truth
5.Tamquam
6.Hard To Understand
7.Cryptic
8.Foolish Senior
9.Tamquam 2
Composed by Jaromír Honzák except 5&9 (medieval song)

Produced by Jaromír Honzák and Petr Ostrouchov
Recorded and mixed by Milan Cimfe (*Sono Records)
Mastered by Pavel Karlík (*Sono Recordsp)
*Sono Records: recording studio located in Nouzov (western suburbs of Prague)


チェコ・ジャズ界をリードし、意欲作を出し続けるヤロミール・ホンザーク(b)のクインテットのメンバーには、チェコを代表する音楽レーベル、Animal Musicのオールスター的プレイヤーが集っている。その1人であるダヴィド・ドルーシュカの柔らかなギターの音が、本作ではとりわけ美しい。浮遊感あるギターの音色を生かした奏法は、この数年で多くのジャズ・ギタリストが得意とするものになっているが、ドルーシュカもその名手の1人だ。彼をはじめ、サックス奏者のルボシュ・ソウクプなど、ヤロミール・ホンザークの指導を受けて成長した1980年代生まれの若手たちが、中堅プレイヤーとなってチェコのジャズ界の柱となりつつある。そんなふうにこの国のジャズ界の発展を実感できるのも、ヤロミール・ホンザークのクインテットを聴く楽しみになっている。
(本作はチェコで2019年12月末リリースだが、流通したのは2020年1月で、本年度作となる)

1曲目の「フランソワ・トリュフォー」は、メロディアスなパートが多く、聴きやすい曲。トリュフォーの特定の映画と関連があるのかと思い、彼の映画を多く手がけたGeorges Delerueの曲をいくつか聴いてみたが、これという類似を見つけられなかった。むしろ、フランシス・レイやミシェル・ルグランの映画音楽に近い気がする。推測ではあるが、本作はフランス映画音楽全般へのオマージュと、トリュフォー映画への賛美を兼ねているのではないかと思う。
4曲目 〈Simple Truth〉はエレピの音が効いたジャズロック風室内音楽で、静かでスローな曲。クラリネットとギターの音が美しく絡まっていく。

6曲目〈Hard To Understand〉は、不協和音を交えた不穏な曲調に透明感ある美しさが重なるような室内楽風の作品。「理解しがたい」というのがこの曲とこのアルバムのタイトルだが、それがどういう意味なのか、この謎めいた曲を聴きながら考えるが、けっきょく分からない。
冒頭のテーマ部分では、奇妙なメロディーをギターとクラリネットが美しく絡み合うように演奏し、コンパクトにまとめる。その後ドラムが加わり、サックスが伸びやかな長いソロをとる。その背後でうねるような音のギター、微かに輝くような音を加えるエレピの音が、絶妙なバランスを保ちながら、最後のテーマ部へとつないでいく。

全般に存在しない映画のための映画音楽のような曲が多い。ミステリアスな映画、スペースファンタジーなど、このアルバムを聴きながら、さまざまな映画のシーンを思い起こした。リスナーの想像力をおおいに刺激してくれるアルバムだと思う。そして、ヤロミール・ホンザークらしい詩的な表現に満ちている。チェコを代表するこのベーシストの作品をまだ聴いていない人に、まず聴いてほしい一枚だ。

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<参考>
以下はアニマルミュージックの公式ホームページの本作の解説(英語)の和訳:

2年前の『Early Music』でアンジェル賞(チェコ版の音楽アカデミー賞)を獲得したヤロミール・ホンザークの新作『Hard to Understand』がリリースされた。著名なベーシスト、ホンザークとともに今回のレコーディングに参加したのは、チェコのオールスターチームと言っていいだろう:ダヴィド・ドルーシュカ(g)、ヴィート・クシシュチャン(p)、ルボシュ・ソウクプ(sax)、マルチン・ノヴァーク(ds)の4人である。

ジャズ界以外でも、エベン・ブラザーズ (Eben Brothers, Bratři Ebenové) とイヴァ・ビトヴァー[チェコ内外で人気のあるフォーク系ユニットと女性歌手]との共演を長くつとめるホンザークは、モダンジャズ教育の創始者として、さらに若手と中堅プレイヤーたちのリーダー的存在として尊敬されている。彼のリーダー作はアンジェル賞の年間ベスト・ジャズアルバムに選出されている(ホンザークはこれまで5回アンジェル賞を授与されてきた)。

瞑想をたどるような作風で、洗練されたものでありながら、親しみやすく、複雑になり過ぎず、常にリスナーを魅了するのが、ヤロミール・ホンザークの音楽と言えるだろう。

https://www.animalmusic.cz/en/album/jaromir-honzak-hard-understand
(写真もこちらから転載しました)

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岡崎凛

岡崎凛 Ring Okazaki 2000年頃から自分のブログなどに音楽記事を書く。その後スロヴァキアの音楽ファンとの交流をきっかけに中欧ジャズやフォークへの関心を強め、2014年にDU BOOKS「中央ヨーロッパ 現在進行形ミュージックシーン・ディスクガイド」でスロヴァキア、ハンガリー、チェコのアルバムを紹介。現在は関西の無料月刊ジャズ情報誌WAY OUT WESTで新譜を紹介中(月に2枚程度)。ピアノトリオ、フリージャズ、ブルースその他、あらゆる良盤に出会うのが楽しみです。

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