#005 渡辺貞夫著『ぼく自身のためのジャズ』
タイトル:『ぼく自身のためのジャズ』
著 者:渡辺貞夫
編 者:岩浪洋三
出版社:荒地出版社
初 版:1969年11月15日
定 価:¥600
幻のSKYEレーベルの CD による世界初の復刻がスタートしたが(HOT LINE / LOCAL参照)、レーベル・オーナーであったゲイリー・マクファーランドの楽友・サックス奏者渡辺貞夫が以下のコメントを寄せている:《 1965年のある日ニューヨークで初めてゲイリー・マクファーランドに会った。当時ストレートなジャズばかり演っていた僕が彼を通していろんな音楽を知りそれを機に視野がひろがったと思います。スマートでセンシティブで思いやりのあったゲイリー。そんな彼が残したSKYEのアルバムが30数年ぶりに日本で紹介されるのを心から嬉しく思います。》渡辺貞夫が3年半振りに米国留学から帰国してまもなく著わした本著の裏表紙にはそのマクファーランドからの手紙の抜粋が掲載されている:《きみがアメリカから去り、きみのすばらしいアルトサックスとフルート、そしてあのユーモアまで聞けなくなったのはとても残念だ!!》出版社から持込まれた企画を彼が固辞し(音楽家は音楽を通して自己を語るべきである)、評論家の岩浪洋三氏が口述筆記・編集することで実現したものである。渡辺貞夫はまず人間としてきわめて誠実であり、音楽家としてもきわめて誠実なひとである。このことは彼と一度でも接する機会のあった人間は誰でも納得するだろう。プロとしてデビュー15年目になる彼が人生とジャズについて語り尽くしたこの著書からも彼の誠実さが溢れ出ている。彼は次の言葉で本著を締めくくる。《ぼくは、アメリカで演奏していて、日本的であるとか、東洋的であるとかいわれたことはなかった。自分に正直な演奏をすればそれでいいと思う。意識してなにかをやろうということになると、かえってマイナスになると思う》
初出:JazzTokyo #10 (2004/11/20)