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Jazz and Far Beyond

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BooksNo. 261

#098 『Jazz Art of Takao Fujioka』

書名:Jazz Art of Takao Fujioka
著者:藤岡宇央
出版社:JAGRA
初版:2017
定価:2000円

関西を中心にジャズ・ファンの間で愛読されているジャズ情報誌『Way Out West』の100号を記念して刊行された藤岡宇央(ふじおか・たかお)のイラスト(ジャズ・グラフィック)集。『Way Out West』は、2009年に藤岡が創刊、表紙を飾る藤岡のイラストが際立つ月刊誌だ。かつてジャズ専門誌『ジャズ批評』が毎号和田誠のイラストを表紙に掲げ定期購読の動機のひとつになっていたが、『Way Out West』も藤岡のイラストがコレクションの対象になるに違いないと思えるほどジャズ・ファンにアピールする完成度だ。
藤岡は、1978年、大阪生まれ。デザイン学校を卒業後、デザイン事務所に勤務。20代後半にジャズとジャズ・グラフィックの魅力に取り憑かれ、自らもジャズ・グラフィックの道に進むことを決意する。2008年、NYのThe Jazz Galleryで日本人として初めて個展を開いたことで自信を得、自らのグラフィックを表紙に使った月刊誌『Way Out West』発刊に至る。ジャズ・ファンなら誰でも想像するように、『Way Out West』は1957年のソニー・ロリンズの名盤『Way Out West』(Contemporary) に因んだタイトルで、West=関西だ。以来、同誌の編集・発行に携わる。内外のジャズ・アルバムやジャズ・フェスのポスターのアートワークも手がけるが、2016年には世界でもっとも伝統のある「ニューポート・ジャズ・フェスティバル」のメイン・ヴィジュアルを担当、また、2017年には『Stan Getz/Moments in Time』(Resonance) がJJA (Jazz Journalists Association) の Jazz Awards「Album Art of the Year」にノミネートされるという実績を持つに至る。
ミュージシャンからの指名も多く、本誌でも取り上げたオランダのトランペッター、ギドン・ヌネス・ファズも『Night Train Nostalgia』で藤岡のグラフィックをアートワークに使用していた。

ジャズ・アルバムを飾ったイラストではディヴィッド・ストーン・マーチンが知られているが、藤岡のグラフィックはさらにデフォルメを効かせ、より戯画化された作風だが、なかにはコンテンポラリーなタッチの作品も見られる。LPアルバムの復活があちこちで聞かれる昨今だが、藤岡にとっては作品発表の場としてまたとないチャンス到来といえるだろう。これからも世界中のジャズ・ファンの目を大いに楽しませてほしい。

https://twitter.com/jazgra

最後に、藤岡がアートワークを担当した最近のアルバムを挙げておこう。ポーランド出身のサックス奏者アダム・ピエロンチック Adam Pieronczykとよく知られたベース奏者ミロスラフ・ヴィトウス Miroslav Vitous のデュオ『Live at NOSPRA』(Jazz Sound, 2019) である。藤岡の作風が遺憾無く発揮されている上に、彼らの音楽性まで彷彿とさせる素晴らしい作品である。

稲岡邦彌

稲岡邦彌 Kenny Inaoka 兵庫県伊丹市生まれ。1967年早大政経卒。2004年創刊以来Jazz Tokyo編集長。音楽プロデューサーとして「Nadja 21」レーベル主宰。著書に『新版 ECMの真実』(カンパニー社)、編著に『増補改訂版 ECM catalog』(東京キララ社)『及川公生のサウンド・レシピ』(ユニコム)、共著に『ジャズCDの名盤』(文春新書)。2021年度「日本ジャズ音楽協会」会長賞受賞。

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