JazzTokyo

Jazz and Far Beyond

閲覧回数 8,532 回

CD/DVD DisksConcerts/Live ShowsNo. 317

#1319 映画『ECMレコード=サウンズ&サイレンス』2024年10月18日劇場上映
『 sounds and silence – Travels with Manfred Eicher』

Text by Makiyo Sakai 酒井麻生代
Photos: ©2009 suissimage / Recycled TV AG / Biograph Film

映画『ECM レコード – サウンズ&サイレンス』
『sounds and silence – Unterwegs mit Manfred Eicher』
『sounds and silence – Travels with Manfred Eicher』
A Film by Peter Guyer and Norbert Wiedmer

2024年10月18日(金)より ヒューマントラストシネマ渋谷 他 全国順次ロードショー
出演:マンフレート・アイヒャー、アルヴォ・ペルト、アヌアル・ブラヒム、エレニ・カラインドルー、ディノ・サルーシ、アニヤ・レヒナー、ジャンルイジ・トロヴェシ、ニック・ベルチュ、マリリン・マズール、ヤン・ガルバレク、キム・カシュカシャン 他
監督:ペーター・グイヤー/ノルベルト・ヴィドメール
2009 年/スイス/87分
配給:Eastworld Entertainment /カルチャヴィル
映画公式ウェブページ


“The Most Beautiful Sound Next To Silence.“ 寂の次に美しい音。

私自身、唯一無二のこのECMサウンドに惹かれ始めたのはいつの頃なのだろうと辿ってみたが、それがどのアルバムだったかを特定することができず、気付いた時には、私の愛聴盤はECMで溢れていた。

この世で一番好きなアルバムはずっと変わらず、ケニー・ホイーラーのリーダー作品『Gnu High』(ECM1069)〜ケニー・ホイーラー(flugelhorn)、キース・ジャレット(p)、デイヴ・ホランド(b)、ジャック・ディジョネット(ds)〜であり、この出会いは私の人生に彩りと豊かさをもたらし続けてくれていて、宝物である。
そして、音楽家として大切にしているアルバムは、ピーター・アースキン・トリオの 『You Never Know』〜ジョン・テイラー(p)、パレ・ダニエルソン(b)、ピーター・アースキン(ds)〜だ。道に迷いそうになった時などは、この音楽に戻るようにしている。

私の直近のリリースアルバム『Makiyo Sakai & Phillip Strange / Bring the Light』の音楽は、完全にこれらの作品の影響を大きく受けており、実は、ジャケット・デザインもECMカタログを読んでイメージを膨らませたため、アルバムを手に取ったお客様方からは「ECMの音が聴こえてきますね」などと言われるほどだ。

なぜ、私がこれほどまでにECMに魅了され続けているのか。
この映画を通して、それは更に明確になったとともに、このレーベルへの愛情とマンフレート・アイヒャーをはじめ、ミュージシャンたちへの敬意は深まるばかりであった。

張り詰められた空気の中に、美しい音の光の矢が、煌めきを放ちながら伸びていく。豊かな音の響きは大地を包み込みながら、自然と心の中を優しく満たしてゆき、やがてそれは生きる喜びとなり希望となる。

芸術性の高い音楽と最高の録音技術が重なった時にしか味わえない、貴重な瞬間の連続。映画の中での様々なシーンの描写も美しく、どこを切り取ってもECMのジャケットを彷彿させるような、創造性に満ちたものであり視覚でも大変楽しませてもらえた。

ジャズ、クラシック、コンテンポラリー、ワールドミュージック、アンビエント、そのようなカテゴライズは超えて、ただただこの世に存在する音の美しさというものをそのままに表現し、聴くものに想像力を与え、それはある種の祈りのように、国境を超えて世界をひとつにするような音楽が今日も響き渡っている。


酒井麻生代 Makiyo Sakai: フルート奏者・作曲家
大津市出身。11歳よりフルートを始め、学生時代はクラシックを学び、様々なコンクールで受賞。大阪教育大学 教養学科 フルート科卒業。 ボストンに短期留学以降、ジャズに転向。帰国後、拠点を東京に移し、岡淳氏、グスターボ・アナクレート氏に師事。
2016年、ポニーキャニオンよりメジャーデビュー。リーダーアルバム「Silver Painting」と「展覧会の絵」をリリース。
ブラジル音楽にも精通し、自身を中心とするユニットBanda Felizのアルバム『Boa Viagem』をリリース。 その後、渡辺貞夫グループなどで活躍中のギタリスト、マルセロ木村とのデュオアルバム『Vida』をリリース。
最新アルバムは、世界的ジャズピアニスト、フィリップ・ストレンジとの全曲オリジナルのデュオアルバム『Bring the Light』。
都内を中心に、年間約240本のジャズライブの他、歌謡曲や演歌においても活動し、渡辺真知子、布施明などのサポートでのテレビ出演、八代亜紀のレコーディング等、幅広いジャンルのアーティストとの演奏を行なう。作曲家としての評価も高く、楽曲提供なども行なう。
*最新情報はこちらから* H.P.BLOGTwitterInstagram、 CD: makiyo.thebase.inYouTube


【Jazz Tokyo 関連記事】
R.I.P. パレ・ダニエルソン 心からの敬意と感謝をこめて by 酒井麻生代
jazzahead! 2024 at Bremen ジャズアヘッド!2024 at ドイツ・ブレーメン by 酒井麻生代
[映画] 『ECMレコードーサウンズ&サイレンス』2024年秋 劇場上映 by 神野秀雄
[映画] Music for Black Pigeons 〜ECMミュージシャンやアイヒャーの音楽観を追う。ヤコブ・ブロらによるサントラ盤をリリース。 by 神野秀雄

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください