#1390『Matt Mitchell / Forage』
text by Masanori Tada 多田雅範
現代ジャズ・ピアノ・シーンの諸相をあぶり出す6アルバム連続試聴記
Screwgun Records
Matt Mitchell (piano)
1. PÆNË 04:15
2. TRĀÇĘŚ 09:56
3. ÀÄŠ 13:26
4. RÄÅY 07:09
5. ŒRBS 05:07
6. CLØÙDĒ 13:08
7. SÎÏÑ 04:58
現代ジャズ・ピアノの王権は揺るぎないクレイグ・テイボーンなのだが、今回のピアノ盤6枚レビューを契機に、蓮見令麻とマット・ミッチェルの三権分立状態になったものだなあ、と、夜中のリスニングルームでひとりごちている、
マット・ミッチェル、プレイズ、ティム・バーン!
80年代のJMT(現在はWinter & Winter)、90年代自己のレーベルScrewgunを経て、新世紀ECMレーベルの現代ジャズ登用大リーグ化の先鋒を切り、かつ、もっとも獰猛なクリエイティヴィティを放っているサックス奏者ティム・バーン、54年生まれだからもう62さいだ、
そのティム・バーンの楽曲を!、曲名が既発のものではないような気がするが、ピアノ・ソロで、
マット・ミッチェル、41さい、前作『Vista Acoumulation』(PI Recordings)を昨年の現代ジャズベストテンの1位に掲げたわたしたち(タダマス=四谷音盤茶会)だったが(音楽サイト musicircus http://musicircus.on.coocan.jp/main/2015_10/tx_3.htm)、2年連続でこの高水準なジャズ・ピアノ・ソロをリリースされては、黙っておられない、
わたしは都内のすべての図書館にあるジャズ棚のほとんどのジャズ盤を査定し終わったので、すっかりジャズ離れしてしまってクラシックと小沢健二と日本の伝統的音楽を聴く余生に入ろうとしていたけれども、ここはJazz Tokyo稲岡親分に折り入ってと6枚レビューをするスペースをいただいて、わたしの痕跡を残したい、
前々作『Fiction』(PI Recordings)も、わたしたちは年間ベストの4位に掲げている、
帝王ティム・バーンのバンド「スネイクオイル」がECMレーベルから指定席のようにリリースされている現況にあって、そのピアニストであるマット・ミッチェルの他でもないティム・バーン作品集を、ECMレーベルから出さない理由はない、
が、ティム・バーンの自己レーベル「スクリューガン」からリリースされるという事実、これが示すのはマット・ミッチェルの拒絶か、ECMアイヒャーの却下である、
本作『Forage』に叩きつけられている確信ある表現に触れると、拒絶であり不要だという厳しい判断だ、そもそも、作品集と銘打たれてはいるが、コンポジションをインプロヴァイスする、ジャズする、という平たい理解には収まっていない事態のようにこの音楽の訴求は畳みかけてくる、
(これはアブストラクトだろ?フリーだろ?と言うリスナーには抗議したい、これはれっきとしたジャズ演奏であり、鍛錬によってしか到達しえない言語であり、ジャズ史が獲得してきた論理を統合してなお、果敢に未踏の領域に突き進む倫理の果てに、崩れそうにさえなって血まみれになって弾いているドキュメントなのだ)
(懐かしのスクリューガンからのリリースなのかあ、と本ジャケを手にした刹那、20年前にタワーレコードのフリーペーパーで高見一樹さんと初対面したときに「たださんはECMフリークなのにスクリューガンまで聴くのですか?」と嬉しそうに声かけてもらったことを思い出す、当たり前じゃないですかと生意気な返答をしたと思う、高見一樹がミュゼやイントシキケイトの誌面で垣間見せる一言コメントのような本音は音楽ファンの灯台であるし、神は細部に宿る、のだ、高見一樹の耳を著作にすべきだ、きいているのか河出書房新社よ、キアリスよ、間違った、トルミス?、いや、アルテスよ、)
(しかし、好き勝手書いているなあ、ウェブならではのJazz Tokyo、最高だぜ、こないだ斎藤聡さんと初対面しました、オプスヴィーク新譜レビュー素晴らしい!)
それにしても、マット・ミッチェル、41さい、これからが末恐ろしいな、
6枚のピアノ盤をレビュー、同時掲載されてこそ意味が出るところもある、ばっさりと野球中継をしてしまうと、ハマシアン華麗なる三振、テイボーンあわやホームランの2点三塁打、マエストロはレフト上段特大ファール、蓮見消える打球満塁ホームラン、タラス適時ヒット打点1、ミッチェル球速162kmノーヒットノーラン仁王立ち、といったところか、次回は大相撲春場所モンゴルシンジケートの暗躍、