#1591 『柳川芳命+Meg Mazaki/四谷怪談』

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Dual Burst-05
2019年2月9日発売

Text by 伏谷佳代 Kayo Fushiya

柳川芳命 Homei Yanagawa (alto & soprano sax, harmonica)
Meg Mazaki (drums / percussion)

1.Two Murder Cases (9:10)
2.Conspiracy (6:04)
3.The Hell! (6:45)
4.Bloody Marriage (11:23)
5.Lament (8:16)
6.Vengeance in the Retreat (12:14)

Total time: 53:52

All improvised by Homei and Meg
Recorded on January 4, 2019
Mastered by Nio


タイトルどおり『東海道四谷怪談』の凄惨なシーンをモチーフとしたフリー・インプロヴィゼーション。語りの平松千恵子と行った「怪談と即興音楽」のイヴェントが発端という。

怨念を晴らすという成就を除き救済の全くないストーリィとフリー・フォームの組み合わせから、怒髪天を突く空気の切り裂き感のみを予測するなかれ。もちろん柳川芳命の音の立ち昇りや轟音には凄まじい迫力があるが、その音楽には常に馥郁とした哀感と、人々の記憶の領域に揺さぶりをかける独特の曳きがある。掛け値なしに「いい音」なのであり、ナチュラルさの分断や度肝を抜くような間歇性といった、フリー独特の外形的影響を被らない、びくともしない属性なのだ。一音が深く強靭で、それ自体に物語を有す。怒涛のフリーの裏側にある、沈黙との親和性。その狭間に浮かび上がる濃厚な佇まい、重力に抗う持久力、翻るディテイル。Megのドラミングもダイナミックながら、瞬間の機微を鋭利に捉える繊細さを内包している。時に酷薄な速度で降り注ぎ、時に瞬間にこびりつく影となる。だが、その豹変は単なるコントラストではなく、全方位的な連続性のうえに立つ。優れた身体技法を見るようだ。ノイズ的な奏法もノイズとして感じさせない、しなやかな音楽性が冴えわたる。

言葉では伝えきれない強度を伝えるのが音楽であろう。通常のサウンド・トラックと異なるのは、本作は単に視覚や情景を後押しするものではないことだ。人間そのものに肉迫できているか。特定の物語をベースとしながらも、この根源的な問いは独立している。現在のような時代になっても、フリー・フォームが決してなくならない所以でもある。ライヴでの直販もしくは通販のみの少数リリース。柳川のホームページを参照されたい。(https://homeiyanagawadotblog.wordpress.com/) 
(*文中敬称略)


<関連レヴュー・リンク>

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伏谷佳代

伏谷佳代

伏谷佳代 (Kayo Fushiya) 1975年仙台市出身。早稲田大学卒業。幼少時よりクラシック音楽に親しみ、欧州滞在時 (ポルトガル・ドイツ・イタリア) に各地の音楽シーンに通暁。欧州ジャズとクラシックを中心にジャンルを超えて新譜・コンサート/ライヴ評、演奏会プログラムの執筆、翻訳などを手がける。

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