#1981『Angelo Verploegen & Jasper van Hulten – The Duke Book』
『アンジェロ・フェルフーヘン&ヤスパー・ファン・フルテン/ザ・デューク・ブック』
text by Hiroaki Ichinose 市之瀬浩盟
Just Listen Records JL019
Angelo Verploegen (flugelhorn)
*Angelo plays a Hub van Laar Flugelhorn model 3B
Jasper van Hulten (drums)
1. Blues in Blueprint /Ellington 04:34
2. Satin Doll /Ellington, Strayhorn, Mercer 05:10
3. Come Sunday /Ellington 05:34
4. Interlude I – Bounce /Verploegen, van Hulten 00:50
5. Caravan /Ellington, Tizol, Mills 04:50
6. Interlude II – Humming /Verploegen, van Hulten 01:13
7. A Flower is A Lovesome Thing /Strayhorn 04:58
8. Take the A Train /Strayhorn 05:52
9. Interlude III – Curls /Verploegen, van Hulten 00:49
10. In a Sentimental Mood /Ellington, Kurtz, Mills 05:26
11. Interlude IV – Hush /Verploegen, van Hulten 00:59
12. Smada /Ellington, Strayhorn 04:40
13. It Don’t Mean A Thing /Ellington, Mills 03:42
14. Interlude V – Last Call /Verploegen, van Hulten 00:48
15. Sophisticated Lady /Ellington 04:50
Recorded in DSD 256, 19 & 20 April, 2019, at MCO Hilversum, the Netherlands
Recording engineer: C,Jared Sacks
Mastering engineer: Tom Caulfield
Producers: C.Jared Sacks & Jonas C. Sacks
Microphones: Bruel & Kjaer 4006, Schoeps & AKG
「やりやぁがったなぁ!」
皆さん誰でもお気に入りの奏者の新譜、初めて出会った未知の演者の演奏でそれまで自分が聴き慣れていた永遠のスタンダード・ナンバーが全く意表をついたアレンジで自分の身に降り被ってきたときに思わずこんな唸り声を小さくあげ、ニヤけることがあるのではないか。
そんな楽しい新譜がオランダから届いたのである。フリューゲルホーン奏者のアンジェロとドラマーのヤスパーが挑んだデューク・エリントン・ナンバーの数々である。
フリューゲルホーンをトランペットに置き換えドラマーと挑んだデュオとなれば誰もがまず、mu suits (’69/BYG) とEl Corazon (’82/ECM1230) / Don Cherry – Ed Blackwellを思い起こすことであろう。 太古の大地の響きを届けてくれた2作であった。一方で本作では決してフリーに走らずに深淵な世界を求めていく2人の”おと”があった。技巧に走らず一音一音確かめるように奏でていくアンジェロのフリューゲルホーンにヤスパーがその間(ま)を自由自在に埋めていく。ここには本家の極上のスイング感は全くない。その代わりにヨーロッパジャズが持つ独自の静謐さの中に育まれる極上のノリがある。デュークの演奏を通り抜けてきた2人がデュークに敬意を表し、真摯に演奏を捧げ、2人が自分たちの音でお返ししているのが嬉しくてしかたがない。
ひとつ私事を記させていただくと、(新型コロナではありませんが)3月の終わりにちょっと体調を崩して床に伏せっていたところへ膀胱炎の追い討ちを喰らってしまった。医師から処方された薬と共に時を同じくして “特効薬” と称して編集長から紹介されたのが本作。抗生物質の投与で悪玉菌の撲滅に成功したが、この2人の凛とした音が排尿時の苦痛を一掃してくれたと聴き直す度に感謝するのである。
全く知らなかった2人であったが、これでまた次の快感を楽しみに待ち続ける奏者が私のライブラリに加わった。
こうして毎月本誌の執筆者の皆さんからのご紹介で未知の奏者の作品を知り、触れ合い、感動を得られることに日々感謝するのである。日々触手を巡らせ新たなる感動、快感を勝ち取るのである。
アラ還の私ではあるが、また次に「やりやぁがったなぁ!」と唸るにはまだまだこの審美眼に白内障を入れるわけにはいかないと自らを鼓舞する今日この頃である。
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