#1276 このCD2015海外編#09 『Jack DeJohnette / Made in Chicago』
ECM 2392
Henry Threadgill (as, bass fl)
Roscoe Mitchell (sopranino sax, ss, as, baroque fl, bass recorder)
Muhal Richard Abrams (p)
Larry Gray (b, violoncello)
Jack DeJohnette (ds)
1. Chant
2. Jack 5
3. This
4. Museum of Time
5. Leave Don’t Go Away
6. Announcement
7. Ten Minutes
text by Akira Saito 齊藤聡
ヘンリー・スレッギル、ロスコー・ミッチェル、ムハール・リチャード・エイブラムスという、シカゴの前衛集団AACM(Association for the Advancement of Creative Musicians)を代表する面々の共演である。スレッギルとミッチェルとは、70年代のミッチェルの作品『Nonaah』や『L-R-G / The Maze / S II Examples』において共演しているものの、これまでさほど大きな録音での絡みはなかったのではないか。一方、スレッギルとエイブラムス、ミッチェルとエイブラムスとの間にはいくつもの印象深い共演の録音があった。
これまでの活動からはそのような印象が希薄だが、ジャック・デジョネットもシカゴ人脈である。60年代前半には、スレッギル、ミッチェル、デジョネットともに、エイブラムスの「エクスペリメンタル・バンド」に入っていた経緯がある。なお、デジョネットはその後すぐにニューヨークに進出し、チャールス・ロイドのグループに入った。
もっとも心を動かされる音は、ミッチェルの奇怪なサックスだ。昔から今に至るまで、過激な混沌を、直接的にサックスを通して吐き出す。余人の到達できない域に平然として立っているように見える。
それに対峙して、スレッギルもまた、強烈なる存在感を発散する。ミッチェルのソロのなかに唐突に入っていくフルートのおぞましさなんて、ぞくぞくさせられるのだ。時空間を刃の粗いナイフでざくりと切り裂いていくようなサックスも健在である。もはや、かつてのように吹きまくるわけではないし、自身のリーダー作のように緊密なアンサンブルで固めているわけではないのだが、個性だけは消しようもなく残っている。
もちろん、巨大な石の空間に共鳴するような硬い響きと奥深さを持つ、エイブラムスのピアノも素晴らしい。そして、このメンバーの中でデジョネットの影はどうしても薄くなってしまうが、そうはいっても、硬直化されない自遊空間を作りあげているのは、かれのスペーシーなドラムスに違いない。
何度聴いても捉えきることができない音楽である。
(文中敬称略)