#2173 『DAY & TAXI / RUN, THE DARKNESS WILL COME!』
text by Yoshiaki Onnyk Kinno 金野Onnyk吉晃
percaso 39, percaso productions, Switzerland, 2022
Christoph Gallio-alto saxophone, soprano saxophone, C merlody
Silvan Jeger-double bass, electric bass, voice,shrutibox
Gerry Hemingway-drums, percussion
DAY & TAXIは、1957年スイス生まれの作曲家、クリストフ・ガリオが結成したサックス、ベース、ドラムのトリオとしてスタートした。
私と彼は1986年以来親しい友人であり、日本やスイスのいくつかの都市で時々一緒に演奏してきた。彼はDAY & TAXIで来日し、向井千惠、風巻隆など、様々な日本人ミュージシャンと共演した。DAY & TAXIは香港でも演奏した事がある。
彼の主な作品はDAY & TAXIのための作曲で、年々そのスタイルを変えている。それは初期には、テーマやフリー・インプロヴィゼーションの動機のようなものだった。それが、より複雑なアンサンブルや、繊細なポリフォニーへと変化していく。さらに、アントン・ウェーベルンの作品のように、1曲2分程度の小品が連なるようになった。これらのテイストは、いかにもヨーロッパ的なモダニズムであり、構築的であると感じた(このCD所収の<Corinne>は、そのようなタイプの作品である)。アルゼンチン留学を経て、クリストフの音楽はよりバイタリティに溢れ、自然な即興性に回帰している。Cメロディ・サックスの音色を取り入れた新しい試みが効果的だ。
かつて彼はスティーブ・レイシーに師事し、その影響下でソプラノサックスを演奏していた。元々ソプラノだけでなく、アルトサックスも得意としている。
この最新アルバムでは、個性的なシンガー、Silvan Jegerを迎え、新しいアプローチが明らかにされた。彼は優れたベーシストでもあり、私はDAY & TAXIのジャパン・ツアーで共演した。彼の歌はエモーショナルなものではなく、独白的な語りに近い。
ドラムはGerry Hemingwayで、90年代にSteve Lacyトリオのドラマーとして活躍していたテクニカルなタイプだ。私はLacyの 『Amien concert 』で彼を知り評価していた。
とにかくトリオの新しい試みは、スウィンギーな細密画のような印象だ。それは例えば「オルタナティヴ・ロック」を彷彿とさせる。
また、彼らは「声」ではなく、「歌」という第4のサウンドを採用した。第5の音もある。Silvanが弾くハルモニウムの一種「シュルティボックス」。これがドローンとなり、クリストフのCメロサックスが力強く歌い上げる。このCDに収録されている <Too much nothing>は、彼のこれまでの音楽とは大きく異なる。
この作品は、Christoph自身のレーベルから入手可能である。
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