#2172 soraya 〜壷阪健登&石川紅奈〜 『ひとり/ちいさくさよならを』
Text by Hideo Kanno 神野秀雄
soraya
〜石川紅奈 & 壷阪健登〜
『ひとり/ちいさくさよならを』
1. ひとり
2. ちいさくさよならを
3. ひとり(Instrumental)
4. ちいさくさよならを (Instrumental)
lyric: 石川紅奈 Kurena Ishikawa
music: 壷阪健登 Kento Tsubosaka
bass: & vocal: 石川紅奈 Kurena Ishikawa
piano & arrangement: 壷阪健登 Kento Tsubosaka
drums: 金本聖潤 Seijun Kanemoto (ひとり)
percussion: KAN (ちいさくさよならを)
flute: 片山士駿 Shun Katayama (ちいさくさよならを)
recording & mix & mastering: 吉井雅之 Masayuki Yoshii(Aobadai studio)
Illustration : Curico Momoto
a&r producer : 杉本陽里子 Yoriko Sugimoto (ondo)
exective producer : 佐藤詳悟 Shogo Sato (FIREBUG)
produced by ondo
2021年4月各配信プラットフォームから聴くことができる。
sorayajp.lnk.to/1stSG
CD: Ondo ONDM-01 価格:1000円(税込) 2022年4月29日 限定生産発売
ウッドベース弾き語りでも注目を浴びる気鋭のベーシスト石川紅奈と、バークリー音楽大学を主席卒業後、ボストンで活躍しながらCOVID-19で帰国したピアニスト壷坂健登のデュオ。筆者が壺阪健登&石川紅奈のデュオライヴを浜町SESSiONで聴いたとき、確かロビーにはハロウィンの飾り付けがあったからもう半年が過ぎたのか。そのときは、ホテルのレストランということもありスタンダードとカヴァーのみの安定の選曲と演奏だったので、その素晴らしさを讃えながらもライヴレポートに「ぜひオリジナルもぜひ聴いてみたい」というようなことを書いたが、半年後にこんな形でリリースされるとは想像もしていなかった。
石川は、埼玉県出身、県立朝霞高校ジャズバンド部への入部をきっかけにベースの音色、質感に惹かれる。高校生のときに国立音楽大学のオープンキャンパスで演奏したところ、小曽根 真教授からぜひ国立に来て欲しいというメッセージが届く。そして国立音楽大学ジャズ専修にてジャズベースを井上陽介、金子 健に師事。大学卒業後には、ヴォーカルを高島みほに師事。これまでに小曽根 真、池田 篤、大西順子、JUJUなどと共演している。またFMラジオ川越で日曜23時から「ジャズ喫茶くれな」のパーソナリティを務める。筆者は数年前にポーランドジャズ関連のイベントで紅奈に知り合う機会があったが、その後Twitterにベース弾き語り映像が上がってきてその素晴らしさにノックアウトされていた。
壷阪健登は横浜市出身で、慶應義塾大学を卒業後、奨学金を得てバークリー音楽大学へ。2017年、オーディションを経て、ダニーロ・ペレスが音楽監督を務める音楽家育成コースのBerklee Global Jazz Instituteに選抜される。2019年にバークリー音楽大学を主席で卒業、ボストンを拠点にライブやレコーディング、他アーティストへの楽曲、アレンジ提供と活躍していたが、COVID-19のため帰国した。ジャズピアノを板橋文夫、大西順子、作曲をヴァディム・ネセロフスキー。テレンス・ブランチャードに師事し、ミゲル・ゼノン、ジョン・パティトゥッチ、パキート・デリヴェラ、キャサリン・ラッセル、フランシスコ・メラ、黒田卓也などと共演。帰国後、東京でもライヴ出演の機会が増えていて、筆者は、黒田卓也とのセッション、片山士駿、浅利史花とのユニット「キリヱ」で出会い、その美しい音色と個性豊かなテイストとグルーヴに魅せられている。
石川のベースの確かなグルーヴと柔らかく浮遊感のある声が「ベース弾き語り」という形の中で、高音域から低音域までのシームレスな表現を実現している。壷阪のボストンを中心に活躍し現地で認められていただけのピアノ、キーボードの表現力、編曲の色彩感と構成美。二人の出会いからは単なるPops作品という域を超える素晴らしい世界を生み出している。ヴォーカルバージョンとインストルメンタルバージョンの双方が納められているのも違いが際立って面白い。
そして大切な仲間たちであり気鋭のミュージシャンたち、ドラムスの金本聖潤、パーカッションのKAN、フルートの片山士駿の参加も見逃せない。壷阪と片山はギターの浅利史花を交えた「キリヱ」というトリオでレギュラー活動をしているのでそちらも注目して欲しい。片山のスティーヴ・クジャラからの影響も受けた”フレトレスフルート”的奏法もこのプロジェクトによく合っている。
石川も壷阪も、小曽根真の気鋭のミュージシャンを紹介するプロジェクト「From Ozone till Dawn」の一員となっている。小曽根が高校生の石川に国立音大への進学を勧めた一方、壷阪については2021年に六本木アルフィーにおける(中山が欠席となった)中山拓海カルテットでの演奏を聴いてその才能を見出したという経緯がある。ジャズミュージシャンとしての実力を物語る話である一方、石川と壷阪についてはそのユニークで規格外の活躍にも期待が膨らむ。
今後さらにオリジナル曲を増やし成長していくユニット「soraya」をライヴで観ることを楽しみにしたい。
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