JazzTokyo

Jazz and Far Beyond

閲覧回数 22,076 回

CD/DVD DisksNo. 298

#2230『ウクレレ・スイング・トリオ/reach for tomorrow』

text by Hilo Ukulele ヒロ竹之内

STEPS-re  USTC-2022 2022年10月26日発売

スインギー坂野  ukulele
高畠博文  wood-bass
西浦慎吾  percussion

1. My Romance /作:リチャード・ロジャース
2. 黄昏のボッサ(Twilight bossa) /作:スインギー坂野
3. Feel So Good /作:スインギー坂野
4. Cry Me A River /作:アーサー・ハミルトン
5. Deep Forest /作:スインギー坂野
6. Haleiwa Town /作:スインギー坂野
7. 雨上がりの街(City After Rain) /作:スインギー坂野
8. Coffee Break /作:スインギー坂野
9. Masquerade /作:レオン・ラッセル
10. Reach for Tomorrow /作:スインギー坂野


レッツ・スイング!心地良い粋なウクレレジャズを。

ウクレレ・スイング・トリオ は、2012年結成のウクレレを中心としたアコースティックJazzトリオ。メンバーは、スインギー坂野 (ウクレレ)、高畠博文 (ウッドベース)、西浦慎吾 (パーカッション) の3人組。

結成10周年にして7枚目の最新アルバムを紹介しよう。『Ukulele Swing Trio/reach for tomorrow』(ウクレレ・スイング・トリオ/リーチ・フォー・トゥモロー)。

ウクレレによるジャズ演奏の代表格はHerb Ohta (ハーブ・オータ) が先ず頭に浮かぶ。もちろんたくさんのジャズを演奏するウクレレプレイヤーはいるのだが。
日本のジャズ・ファンにはオーストラリアの人気ヴォーカル&ピアニスト、ジャネット・サイデル・トリオのギタリスト、チャック・モーガン(Chack Morgan)によるウクレレ演奏はお馴染みかも知れない。ウクレレの演奏がたっぷり楽しめるアルバム『マナクーラの月』は数年にわたりジャズ・アルバムのベストセラーとなった。残念ながらジャネットもチャックも数年前に他界している。101歳で初来日しウクレレ・ファンを驚かせたビル・タピアのジャズ・ウクレレも印象深い。
日本ではジャズに特化したウクレレ・プレイヤーはそれほど多くはない。その中ではここに紹介するスインギー坂野の活動に注目したい。

スインギー坂野は元々ジャズ・ギタリスト。冒頭で紹介したハーブ・オオタがウクレレでジャズを演っているのを聴いていて、ギターと並行してウクレレを弾き始めた時から自然とジャズ・ウクレレ奏者に。ギターに比べて、手軽さとジャズ・セッションでも十分通用するのでハマったそうだ。坂野の相棒であるウクレレのことも紹介しておこう。ハワイ製のKoAloha (コアロハ) のコンサート・サイズ。写真にある2本のうち左側がメインで使っているウクレレとのこと。コアロハの特徴としては、音量が驚くほど大きい。鳴りが良いのだ。どちらかと言うとハワイアン・ミュージックに最適のモデル。もうワン・サイズ大きなテナー・ウクレレを使うプレイヤーが比較的多いが坂野の切れ味の良いフィンガー・ピッキングには向いている。ベースとパーカッションとのコンビネーションにはウクレレ本来の軽やかな音色が心地良い。ウクレレでジャズ!粋だ。

トリオとしての活動は、結成の1年前にジャズ・ボーカルのライブ・イベントにそれぞれが呼ばれた時に、スインギー坂野はギターだったが2曲ほどウクレレで演奏した時のサウンドが気持ち良かったとふり返る。そして坂野がふたりに声を掛けてトリオを結成。そしてジャズ・ストリートに出演し活動スタートすることになる。
これまでの実績としては、ウクレレがメインの楽器ということもあり、ウクレレの本場ハワイのグラミー賞と言われるナ・ホク・ハノハノ・アワード (第40回) “ベスト・インターナショナル・アルバム賞” を2ndアルバム『My Favorite Things』で受賞し、その後も数回同賞にノミネートされている。

ウクレレ+ウッドベース+パーカッションが織りなす絶妙なジャズ・ミュージックが楽しめる。ウクレレ・スイング・トリオというど直球のグループ名が示すとおり、芯のあるウッドベースの音と安定したスイング感を生み出すリズムをキープするパーカッションの上で軽妙で多彩なフレーズを奏でるウクレレのコンビネーションは10年共に過ごしたトリオの真骨頂だ。
このアルバムに収録されたスタンダード曲についてスインギー坂野氏に話を聞いた。〈My Romance〉はジャズス・タンダードの中で一番好きな曲とのことで気持ちが乗っている。〈Cry Me A River〉は普通はバラードだけど得意なボサノバでアレンジしステージ映えしそう。〈マスカレード〉はポップス寄りの有名な曲。ジョージ・ベンソンの名演奏などで馴染みのある曲なので取り入れたそうだ。スイング感ある軽快な演奏が気持ちいい。また、アルバムタイトル曲の〈Reach for Tomorrow〉 はコロナで沈んだ気持ちや色々止まってしまったことからの脱出を信じて作ったオリジナル曲。他のオリジナル曲もそれぞれの楽器の息の合った演奏でスタンダード曲に引けを取らない魅力を放っている。

参考までにHPのライブスケジュールをお知らせしておこう。http://jbsb2008.wix.com/ukuleleswing


ヒロ竹之内 (Hiloukulele)
初心者にウクレレを教え、歌って弾けるように導く達人。ワーカー、ママ、キッズなどにあらゆる機会を捉えて教えた生徒数は4000人以上。自らもバンドを率い、ライヴハウスやフェスに数多く出演、ウクレレの楽しさを伝えている。
ウクレ レムック本「ウクレレ・アラモード」、「親子でウクレレ」の初心者向けウクレレ講座や楽 譜作成、ミュージシャンへのインタビューなど執筆活動も積極的。 「ウクレレでコミュニケーション!」をテーマに、人に寄り添うウクレレの楽しさや面白さ を普及活動中。

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください