#1378 沢田穣治&神子直之 at 京都 Jazz Live Sahouril 〜さうりる〜
Everybody’s Song But My Own (Kenny Wheeler)
Text & Photo by Hideo Kanno 神野秀雄
沢田穣治 & 神子直之デュオ
Jyoji Sawada & Naoyuki Kamiko Duo
Jazz Live Sahouril 〜さうりる〜
(京都市右京区西院東貝川町29 田中ビル2F) 公式ウェブサイト
2025年8月5日(火) 19:30
沢田穣治 Jyoji Sawada: contrabass
神子直之 Naoyuki Kamiko: piano
Heyoke Part 1 (Kenny Wheeler)
Angel Song (Kenny Wheeler)
空音 (沢田穣治 Jyoji Sawada)
Maria Lovis (神子直之 Naoyuki Kamiko)
Quiet Moon (沢田穣治 Jyoji Sawada)
Your Strange (沢田穣治 Jyoji Sawada)
Bonita (Antonio Carlos Jobim) with guests
Se Todos (Antonio CarlosJobim) with guests
Spring Has Come (神子直之 Naoyuki Kamiko)
Everybody’s Song But My Own (Kenny Wheeler)
35年にわたりショーロクラブで活動し、京都と東京の2拠点から多様なプロジェクトで精力的に既視感のない音を追求する鬼才 沢田穣治。その沢田を密かに敬愛し続けてきた立命館大学教授にしてピアニスト、世界屈指のケニー・ホイーラー研究家でもある神子直之。ECMリスペクトを共有する2人の初共演が京都で実現した。
沢田は、ショーロクラブを1989年に開始、36年にわたる活動を継続しながら、映画やアニメのサウンドトラック、舞台作品の音楽、フィールドレコーディング作品の制作、アルバムのプロデュースなど幅広く活躍し、マルチインストゥルメンタリストとしてコントラバス、フレットレスベース、ギター、ピアノ、バシェ音響彫刻まで挑む。自己のレーベルUnknown Silenceからも数々の音源を発表している。
神子直之は東京出身で、高校時代に出会ったECMミュージックを演奏したくて東京大学ジャズ研へ。現在、立命館大学教授として研究・教育に携わりながら、ピアニストとして年に数十回のコンボやビッグバンドでのライブ、ジャムセッションホストを在住の関西および東京で行っている。東京では毎月第一土曜日に、青山Jazz Birdで「D.D.B.」として定例ライヴを行なっている。「Azimuth」の大ファンで、Kenny Wheeler (incomplete) discographyを作成してケニー・ホイーラー本人にトロントのIAJEで手渡したところ、没後、ブライアン・ショーとニック・スマートの手に渡り、伝記『Song for Someone: The Musical Life of Kenny Wheeler』の重要な資料として活用されたのも記憶に新しい。
沢田、神子のオリジナルを中心にというコンセプトだが、ふたりの敬愛するケニー・ホイーラーの3曲も織り込んでいる。1曲目に選んだのは『Gnu High』(ECM1069)から<Heyoke>。1975年にケニー、キース・ジャレット、デイヴ・ホランド、ジャック・ディジョネットでNY録音された名盤の1曲目で、爽やかな空気感の中、ライヴの時間が流れ出す。(奇しくも2025年8月6日にはお茶の水NARUの佐々木梨子(as)カルテットで同アルバムから<Smatter>が壷阪健登(p)、高橋 陸(b)、中村海斗(ds)で演奏されていた)。2曲目に同じく『Angel Song』(ECM 1607, 1996年)から<Angel Song>へと続く。
後半では、京都周辺のミュージシャンがシットインし、トム・ジョビンの名曲から2曲が演奏された。後半最後は、神子のオリジナル<Spring Has Come>。桜の季節をイメージしたといい、初めて聴いたが本当に素晴らしい音楽の時間で、既視感のない新しい音の会話が広がっていった。
アンコールもケニー・ホイーラーで、『Flutter By, Butterfly』(Soul Note, 1987年)から<Everybody’s Song But My Own>。ケニーの曲の中でも特に知名度があって愛され、最もカヴァーされる頻度が高い1曲で、かつて東京大学ジャズ研でも演奏されていた。記事冒頭にこの日のライヴ動画を載せたのでご覧になっていただければ幸いだ。
この初共演で、沢田は神子の感性と相性を認めたようで、すでにいくつもライヴの予定を組んできている。共演者として、石川広行(tp)、橋本学(ds)があがっており今後の2人のコラボレーションから生まれる既視感のない音を楽しみにしたい。
【沢田穣治&神子直之 ライヴスケジュール】
11月22日(土) 浜大津 パーンの笛
神子直之(p)、沢田穣治(b)、橋本学(ds)
11月30日(金) 東京・会場調整中
石川広行(tp)、神子直之(p)、沢田穣治(b)
12月5日(金) 横浜・上町63
神子直之(p)、沢田穣治(b)
12月26日(金) 京都・さうりる
神子直之(p)、沢田穣治(b)、橋本学(ds)
【JazzTokyo 寄稿記事】
特集『ECM: 私の1枚』
沢田穣治『Gary Peacock / Tales of Another』
神子直之『Eberhard Weber / Silent Feet』
神野秀雄『Azimuth / John Taylor, Norma Winstone & Kenny Wheeler』
神子直之「車輪職人さん、さようなら」〜R.I.P. Kenny Wheeler (1930-2014)
神子直之「複雑な音楽作りと多様性のピアニスト。安らかに。」〜R.I.P. John Taylor (1942-2015)
『モーツァルト:ピアノ協奏曲第23番・細川俊夫「月夜の蓮」/児玉桃 ・小澤征爾&水戸室内管弦楽団』by 神子直之