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Concerts/Live ShowsNo. 310

#1289 今宵☆jazzyに!SUPER JAZZ NIGHT

text by Tomoyuki Kubo 久保智之
photo by Toshio Tsunemi 常見登志夫

<今宵☆jazzyに!SUPER JAZZ NIGHT>
2024年1月18日(金)文京シビックホール

クリヤ・マコト(pf)
渡辺香津美(g)
寺井尚子(vn)
マリーン(vo)
エリック・ミヤシロ(tp)
本田雅人(sax)
納浩一(b)
則竹裕之(ds)
安井源之新(perc)
MARU(vo)
KOTETSU(vo)

森口博子(mc/vo)

1. Barbary Coast feat. 納浩一&則竹裕之
2. Elegant People feat. 本田雅人
3. Overjoyed feat. エリック・ミヤシロ
4. I can recall SPAIN feat. 寺井尚子&KOTETSU
5. Lush Life feat. KOTETSU
6. Agua de Beber feat. MARU
7. Manhattan Flu Dance feat. 渡辺香津美
8. All of me feat. 森口博子
9. Ubugoe feat. 森口博子
10. It do mean a thing feat. 本田雅人
11. This is me feat. MARU
12. Tango Pour Claude feat. 寺井尚子
13. Soleil feat. 渡辺香津美
14. Last Dance feat. マリーン
15. Mac’Arther Park feat. マリーン
16. It’s Magic feat. マリーン
Enc. Tombo Misturada


BS日テレの人気音楽番組「今宵☆jazzyに!」の第9回めのイベントが、「SUPER JAZZ NIGHT」と題して、文京シビックホールで開催された。本イベントのバンド・ディレクター/アレンジャーのクリヤ・マコト(pf)を中心にした、ジャズ・フェスティバルのような豪華なオールスターメンバーによる夢の共演だ。出演者リストを見るだけで、いったいどんな展開になるのかと大きく胸が高鳴る。

開演を告げるベルのあと、若干緊張感の漂うホール内は、オープニングの司会をつとめる森口博子の明るいトークによって、和やかな笑いと大きな拍手に包まれた。ホールの中が少しリラックスした雰囲気に変わる中、クリヤ・マコト、納浩一(b)、則竹裕之(ds)の三名からなるユニット「Acoustic Weather Report」による演奏がしっとりとスタートした。曲はウェザー・リポートの〈Barbary Coast〉。そのあと、豪華なメンバーがかわるがわるフィーチャリングされ、このトリオのサウンドを核にした熱い共演がさまざまに繰り広げられていった。

このトリオにはまず最初に、本田雅人(sax)とエリック・ミヤシロ(tp)が加わった。本田雅人をフィーチャーしたウェザー・リポートの〈Elegant People〉は、イベントらしい楽しさのようなものとは別方向の、硬派な演奏。次曲、エリック・ミヤシロをフィーチャーしたスティービー・ワンダーの〈Overjoyed〉は、ハイノートは少なめ。柔らかな音色で会場に優しい空気が満たされた。

続いて、安井源之新(perc)、寺井尚子(vn)とKOTETSU(vo)が加わり、クリヤ・マコトと安井源之新のユニット「RHYTHMATRIX」が1/10にリリースした2ndアルバム『BRIGHTNESS』からの曲が3曲演奏された。安井源之新のパーカッションが入ると、バンド全体がとても活き活きとした雰囲気になるのが素敵だ。まず、寺井尚子とKOTETSUフィーチャーによる〈I can recall SPAIN〉。アルバムではイントロのアランフェス協奏曲パートはスキップされているが、この場では寺井が熱く熱く情熱的に歌い上げていった。KOTETSUはスキャットにも定評があるが、後半ではそのスキャットにボーカル・エフェクターで自身でハーモニーを効果的に加えながら、エンディングを盛り上げていった。次曲〈Lush Life〉もアルバムと同様、KOTETSUがフィーチャーされた。前半の中低音域から後半の高音域までのとても広い音域を、艶のある声で伸びやかに歌い上げていった。ミュージカルなどでも活躍中のMARU(vo)による〈Agua de Beber〉は、とてもソウルフル。アルバム『BRIGHTNESS』に収録されているバージョンとは、またひと味違う魅力を伝えていた。

渡辺香津美(g)がフィーチャリングされた〈Manhattan Flu Dance〉は、本田雅人とエリック・ミヤシロの両氏がメロディのユニゾンに加わり、とても艶のあるサウンドとなっていた。

出演者がほぼ出揃ったところで、司会の森口博子(vo)もフィーチャリングされた。曲はスタンダードの〈All of me〉と、『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』主題歌の〈Ubugoe〉。森口博子が歌うと、会場がふわっと明るく感じられるのがとても不思議だ。

ここまでで9曲、約1時間20分。後で分かることだが、実はここまでで、まだ前半戦という感じであった。

ここでクリヤ・マコトからは「今日は曲をたくさん用意してきました。今日中に終えることができるか心配なんですよね。休憩無しでどんどん行きますが、皆さん大丈夫でしょうか? そう、ホールコンサートですがトイレは自由に行ってくださいね!(笑)」というMCがあり、会場は大いに湧いた。

クリヤ・マコトによれば、「今宵☆jazzyに!」は、いつもは歌が中心となっているイベントだが、今回は念願の「インストゥルメンタル」が中心となる初めての内容になったとのこと。冒頭からMCでそのことについて熱く語っていたが、その後も繰り返しこのことについて語っていた。バンド・ディレクターとして、またアレンジャーとして、今回のコンサートにかける熱量・気合はいつも以上に大きいものだったのだろう。

ここから、出演アーティストのフィーチャリングは2周目に入った。
本田雅人は速いユニゾンのある〈It do mean a thing〉、MARUはグレーテストショーマンの主題歌〈This is me〉、寺井尚子は情熱的なタンゴの〈Tango Pour Claude〉を、それぞれ情熱的に歌い上げた。渡辺香津美のフィーチャリング2周目は〈Soleil〉。ここでの渡辺のギターは、Abe Riveraの「Be Bop」。氏が長年愛用しているフルアコタイプのギターであるが、このホールでのそのギター・サウンドは、箱の鳴りも格別で、とても素晴らしい音色を奏でていた。

そして迎えたクライマックス、ここでマリーン(vo)が登場! ドナ・サマーの名曲〈Last Dance〉と〈Mac’Arther Park 〉が華やかに展開された。これは、2013年にクリヤ・マコトがプロデュース、アレンジを行ったマリーンのドナ・サマー・トリビュート盤『マリーン・シングス・ドナ・サマー』からの選曲。クリヤ・マコトの都会的なアレンジが光る。そして2時間超のこのコンサートのラスト曲は全出演者が参加し、あの大ヒット曲『It’s Magic』! そしてあのイントロのギターのカッティングはなんと渡辺香津美! しかも抱えているギターは、なんとテレキャスター! これは凄い! 大部分の人が立ち上がり、皆が踊っている。会場は大きな興奮に包まれ、ダンスホールと化した。

熱気に包まれたまま、アンコールの〈Tombo Misturada〉へ。安井源之新が長いパーカッション・ソロをとり、さらに盛り上げる。ソロ中には左回りにクルクルと回転するパフォーマンスを何度もみせ、会場は大いにヒートアップ! 「Samba de Janeiro」としても有名なあのサビのフレーズを、観客もみなで踊りながら歌い出すというたいへんな盛り上がり! 大・大・大歓声の中、コンサートは幕を閉じた。とても楽しくて幸せな気分に満たされるコンサートであった。ホールでのコンサートができるようになってきたいま、こうした楽しくて賑やかなジャズ・コンサートが、今後もたくさん開催されることを願ってやまない。

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<参考情報>
★渡辺香津美が〈Soleil〉で使用したギター、Abe Riveraの「Be Bop」については、youtubeの「いわゆるMyギター」シリーズを参照されたい。余談だが、この動画の中でも〈Soleil〉が演奏されている。

(渡辺香津美「いわゆるMYギター」#006 Abe Rivera篇)

 

★下は、渡辺香津美氏が〈It’s Magic!〉で使用していた、テレキャスター。P90の搭載されたタイプというのも珍しいが、そもそも香津美さんがテレキャスターというのがとても珍しいのでは?!

久保智之

久保智之(Tomoyuki Kubo) 東京生まれ 早大卒 patweek (Pat Metheny Fanpage) 主宰  記事執筆実績等:ジャズライフ, ジャズ・ギター・マガジン, ヤング・ギター, ADLIB, ブルーノート・ジャパン(イベント), 慶應義塾大学アート・センター , ライナーノーツ(Pat Metheny)等

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