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R.I.P. 鈴木勲No. 289

日本ジャズ界の大恩人 by 斉藤 良

Text by Ryo Saito 斉藤 良

また1人、日本ジャズ界の巨星がこの世を去ってしまった。鈴木勲さん。日本ではオマさんの愛称で親しまれ、アート・ブレイキー、ロン・カーター、ジム・ホールなどの伝説的なジャズマンと実際に音楽活動を共にしてきた、本物のジャズジャイアンツである。

自分の感じるオマさんのベースの魅力はなんと言っても「スピード」だと思う。楽器を速く弾くという意味ではなく、「音楽全体をデザインする構成力」と「インスピレーションを実際に音にする速度」がずば抜けて速い。音楽が始まったその瞬間にはもうやってしまっているような状態。言わばゾーンの中に入って演奏しているような、常に先の世界を生きているような、スリリングな音楽体験を何度も目の当たりにしてきた。

そんな驚異的なベーシストであり音楽家のオマさん。その幅広い活動の中でも何より素晴らしいと思うのは、若い世代の日本のジャズミュージシャンに、己の到達している音楽的境地を全身全霊で伝えようと、生涯をかけて取り組んできてくれた事だと思っている。

今の日本のジャズシーンの第一線で活躍する音楽家の多くが、オマさんからの叱咤激励を浴びて育ったと言って良い程にオマさんチルドレンは多い。

また、意欲的な活動をしていたオマさんはジャズシーンを超えて、DJとのコラボなどでHip Hopシーンにもファンを獲得している。

天国に行ったオマさんは、先にあっちに行った多くの伝説的なミュージシャンから引っ張りだこで大忙しだと思います。いつかあっちに行った時にオマさんをガッカリさせないように自分も頑張らないと。

日本ジャズ界の大恩人、鈴木勲さん。
沢山の思い出と素晴らしい音楽をありがとうございました。

合掌

斉藤 良 (1998〜2001 鈴木勲グループ在籍)


斉藤 良 Ryo Saito – Drummer
1978年広島市出身。7歳から和太鼓、12歳でジャズドラムに転向。16歳で市内のジャズクラブで清水末寿グループのドラマーとしてプロデビュー。19歳で上京後、鈴木勲、本田竹広、高橋知己、加藤真一等のグループに参加。2010年、初のリーダーバンド「秘宝感」を結成し、同年アルバムリリース。その後はジャズやブラジル音楽を中心に、小野リサ、saigenji、orange pekoe、tryphonic、松下美千代Trio、DOMADORAなど多岐に渡る活動を繰り広げる。

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