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特集『ECM: 私の1枚』

芳垣安洋『Jack DeJohnnette New Directions / In Europe』
『ジャック・ディジョネット・ニュー・ディレクションズ/イン・ヨーロッパ』

ジャズをきちんと聴き始めた時から、ECMのものはジャズ喫茶などでリアルタイムに耳にしてきました。その頃はキース・ジャレットのものが多かった気がします。

大学4年の時に知ったジャック・ディジョネットの『New Directions / In Europa』は、私が彼の音楽にのめり込んで行くきっかけになった作品でした。もちろんECMの拠点のあるヨーロッパ勢の作品も好きでしたが、ディジョネットの他にも、AEOCやナナ・ヴァスコンセロス、ドン・チェリーなどのアメリカのミュージシャン(特にアフロ=アメリカンやブラジルの打楽器奏者達)がこのレーベルに残した録音は他にあまり類のない不思議な魅力に満ちているように思えます。


R: 『New Directions』(ECM1128) L: 『Special Edition』(ECM1152)

ディジョネットが若い頃シカゴのAACMのメンバーであったことはあまり話題に上らないのですが、この『New Directions』(ECM1128)や後の『Special Edition』(ECM1152)、近年のロスコー・ミッチェル達とのコンサートなど、活動を共にする音楽家にAACMのメンバーやシカゴ出身者が多くいます。チャールズ・ロイドやマイルスのバンドで培った関係から広がったNYのジャズシーンでの活動とともに、この大きな要因が彼自身のリーダー作品の特異性に関係していますね。ロックやファンクとも違う斬新な8ビート、サンバとキューバ音楽とをミックスしたようなラテンテイストのリズム、独特の音の粒だちや発音、ワールドミュージックの影響も受けたユニークな楽曲、今だからこそ認識できる、ディジョネットにしかできなかった、その後の彼が創造してきた音楽が、初めてくっきりとその輪郭を現したのがこのNew Directionsだったと思います。

アルバムの冒頭<Salsa For Eddie G>という、エディー・ゴメスに捧げて書かれた曲の、なんともメロディアスでしかもドラムのコントロールの技法全てが際立った演奏は未だに私の好きなトップ3に入っています。


ECM 1157

Jack DeJohnette (drums, piano)
Lester Bowie (trumpet)
John Abercrombie (guitar, mandolin guitar)
Eddie Gomez (bass)

Recorded June 1979, Willisau, Switzerland


芳垣安洋 よしがきやすひろ
パーカショニスト。1980年代、学生時代に関西のジャズシーンで活動を始めたのち、サルサ、アフリカ音楽、民族音楽など幅広いエリアで演奏を行うようになり、1990年代に入ると、Art Ensemble Of ChicagoやJohn Zornなどの影響を受け、しだいにメインストリートのジャズだけでなく、ロックや即興演奏やノイズ音楽などへも活動の場を広げる。
1990年代中ば、東京に移住し、内橋和久とのAltered States、不破大輔の渋さ知らズ、大友良英Ground Zero、 大友良英ONJQ〜ONJO、勝井祐二、山本精一とのROVO、菊地成孔DCPRGなどのジャズ〜アヴァン・ポップを牽引したバンドのメンバーとして活動。他にも、山下洋輔や坂田明、渋谷 毅、板橋文夫、梅津和時、片山広明、をはじめとするジャズ、UA、おおはた雄一、カヒミ・カリィ、元ちとせ、ハナレグミなどのポップス、「いだてん」「あまちゃん」など大友良英などの作曲家たちが制作するTVや映画の音楽、文学座などの舞台音楽、Co.山田うんなどのコンテンポラリーダンスの音楽など、さまざまなエリアで演奏活動を行うようになる。大友良英のグラウンドゼロや渋さ知らズオーケストラなどをきっかけに、アメリカやヨーロッパのフェスティバルなどに出演するようになる。
グルーブのある音楽から即興まで、幅広い音楽性を持つ打楽器奏者として、現在も「Orquesta Libre 」「Orquesta Nudge! Nudge!」「On The Mountain」「MoGoToYoYo」「Vincent Atmicus」等多様なグループを主宰し東京を中心に演奏活動を行う。
中でもOrquesta Libreでは、ROLLY、柳原陽一郎、スガダイローなどの独特のサウンドを持つアーティストたちとのコラボレーションも行う。
打楽器を中心としたアンサンブルのワークショップリーダーとしての活動も、Orquesta Nudge! Nudge!などとともに継続して行っている。近年、東京都の主催企画「アンサンブルズ東京」日本財団の「True Colers Festival」などにもこの活動が繋がるようになっている。
日本のみならず、ヨーロッパやアメリカ、南米の音楽家との共同制作も行い、Lester Bowie、Don Moye、John Zorn、Bill Laswell、Enrico Rava、Barre Phillips、Lee Konitz、Rod Williams、Billy Martin、Cyro Baptista、Santiago Vasquezらと共演を重ねてきた。特に近年、Kasper Tranberg、Simon Toldam、Mark Solborg、Adam Pultz Melbyeらのデンマークの音楽家たちとの国境を超えた活動も続けている。

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