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特集『ECM: 私の1枚』

伊東佑季
『Miroslav Vitous, Jan Garbarek / ATMOS
』
『ミロスラフ・ヴィトウス、ヤン・ガルバレク/アトモス』

東京で演奏活動を始めた頃、コードレスでライブをする機会があった。
まだまだ演奏経験も少なく、ベース=バック、サイドマンというイメージから自分自身が抜け出せず、何を弾けばいいのか、どんな曲を演奏すれば良いのか悩んだ末に、ベースと管楽器など単音楽器のデュオ音源を探していた時に見つけた1枚。

ヴィトウスは以前から聞いていたが、初めて聞いたガルバレクのサウンドとの混じり合いは衝撃でしかなかった。この個性の塊は一体なんなんだろうと。

単音楽器同士とは思えぬ音の広がり、空間に紡がれる音を聞き、しがらみから解放された感覚になり、
管楽器とベースのデュオのあり方を覆された。

全てオリジナル、そしてフリーインプロビゼーションも含まれており、その中ではオーケストラヒットも使用されているなど、構成をそのまま参考にすることは難しいが、デュオという形に制限はなく、想像以上にハーモニックなことができるし、聴かせることができるのだと感じた。

それ以前から自分のベーシストとしての在り方に悩むことがあったが、これを聞くと「ベース」というものに自分自身が範囲を狭めていたことに気が付く。

アルバムとして全体的に静寂と仄暗さを感じる1枚ではあるが、私自身には、灰青色におぼめく朝の光を感じる1枚だ。


ECM 1475

Miroslav Vitous (double-bass)
Jan Garbarek (soprano saxophone, tenor saxophones)

Recorded February 1992 at Rainbow Studio, Oslo
Engineer: Jan Erik Kongshaug
Produced by Manfred Eicher


伊東佑季
 いとうゆき
ベーシスト、作編曲家。北海道旭川市出身。幼少時よりクラシックピアノを学ぶ。学生時代は吹奏楽部に入部する傍ら、JMIAジュニアジャズオーケストラとの出会いをきっかけにジャズを始める。洗足学園音楽大学入学後、ボストンバークリー音楽大学へ入学。卒業後はNYへ拠点を移す。帰国後は関東を中心に活動し、2019年11月に初のソロベースアルバムをリリース。また、山本玲子(vib)とのデュオユニット”te-te”、土屋絢子(vo)・津嘉山梢(pf)とのトリオ”ことは、と”、また自己のトリオやビックバンド等にも力を入れる。作編曲家として、自身の音楽のルーツから、ジャズのみならず様々なジャンルの作品作りにも力を入れている。
伊東佑季ウェブサイト”あひるのつぶやき”


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