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特集『ECM: 私の1枚』

阿部善武『Carla Bley & Steve Swallow
 / Go Together』
『カーラ・ブレイ&スティーヴ・スワロー/ゴー・トゥゲザー』

Steve Swallowはコントラバスからエレキベースに転向(コントラバス奏者としては腰痛は避けるのが難しい)して以来、初期はフェンダー系のマグネチックピックアップの楽器を使用しましたが、次第にピエゾ素子で音を拾うParker、Harvey Cironなどとともにでオリジナルの楽器を作り上げるように進んできました。
理由は様々にコントラバスからエレキベースに転向することはあることですが、楽器を変えるにあたって指で弾いていたものをピック(しかもコパーと呼ぶ金属製)弾きにしたというのは、普通のベース弾きでは考えられません。しかしながら作り上げてきた音色は正にアコースティックな弦楽器の音であり、そしてミュージシャンとしては当然であるけれども唯一のものです。真似をしようと様々な素材のピックを試してみましたが、彼のような音はもちろん出せません。

ピッキングの技術はJim Hallに学んだと語っています。それが、ベースラインでもベースソロでも現代的なグルーヴとメロディラインに生きてくる。クラシックなジャズだけではなくいろいろなビートの楽曲でのかっこよさにつながっています。

また、通常のエレキベースに高い音域のC弦を張った5弦仕様の楽器とすることによってアコースティックギターのようなソロワークを実現しています。彼によれば「テナー歌手の音域が欲しかった」とのこと。歌うために必要なのでしょう。進化してきた最近の楽器の音色はJohn Scofield名義のSteve Swallow作曲集で聴くことができます。そしてその演奏はギタートリオとしては究極といえると思います。

私がSteve Swallowで好きな演奏はCarla Bleyとのデュオ演奏です。2人のデュオでもっとも好きな演奏は動画で残っている「Lawns」ですが、アルバムとしては『Go Together』を選びます。『Go Tigether』は何というか聴いていて幸せになります。よく歌って、よくスイングし、ちょっと色っぽい2人の対話がうらやましい。CDカバーを開けるとこれまた楽しい。洒落てますねお二人。
この時期の楽器はParkerです。その後のCitronへ向かう転換期の音ですがアコースティックな響きが素敵です。こんな音のベースを奏でてみたいといつも思っています。


WATT 24

Carla Bley (Piano)
Steve Swallow (Bass)

Recorded August 1982-September 1992, Grog Kill Studio, Willow, NY


阿部善武
 あべよしたけ
楽器用ピエゾピックアップ製作。
福島県立福島高校ジャズ研究部、成蹊大学コンパルサウンズ・ジャズオーケストラを経てアマチュアのコントラバス、エレキベース演奏を続けている。

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