#09 『Michel Doneda, Frederic Blondy, Tetsu Saitoh / Spring Road 16』

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Text by Akira Saito 齊藤聡

Relative Pitch Records RPR1121

Tetsu Saitoh 齋藤徹 (contrabass)
Frederic Blondy (piano)
Michel Doneda (soprano sax, sopranino sax)

1. No end road pt 1
2. No end road pt 2

Recording made by France Musique on April 11th 2016 at Radio France – Paris
Sound engineer: Jean-Louis Deloncle
Mastering: Weasel Walter
Cover Art: 1978.10.1 by Hyokichi Onari (大成瓢吉)
Packaging design: Spl@T!
Executive producer: Kevin Reilly
Dedicated to Mai and Reiko Saitoh
Thanks to the ONARI famiry, Anne Montaron, the team of ”a l’improviste”, la maison Radio France, Poby, Barre Phillips and Kevin Reilly

Special thanks to Wataru Matsumoto (松本渉) who released Michel Doneda and Tetsu Saitoh’s “Spring Road 01” on the Scissors lebel

In memory of Tetsu Saitoh (齋藤徹)

齋藤徹とミシェル・ドネダが出会ったのは1994年のことである。齋藤の敬愛するコントラバス奏者バール・フィリップスが、齋藤の渡仏時にドネダに引き合わせたのだった。これを機にほぼ同い年の齋藤とドネダとは兄弟のように共演を積み重ねることになる。2007年春にはドネダが4度目の来日、またフレデリック・ブロンディが初来日し、それぞれ齋藤と共演するのだが、その直前の2月にはフランスにおいて三者が初共演を果たしていた。それほどまでに遠距離を行き来し、音楽的な関係を強化する仲だったということができる。その際に録音された『Carré Bleu: In Memory of Bernard Prouteau』(Travessia)においては、ブロンディが内部奏法により弦に多様にアプローチし、ピアノ内部の反響をサウンドに活かしており、それがドネダと齋藤のダイナミックに執念深くつながり続ける音と重なり、上質の即興演奏となっていた。

本盤は、このトリオによる2016年の再演の記録である。『春の旅16』というタイトルは、過去の齋藤とドネダとのツアーを記録した『春の旅 01』(Scissors)や『春の旅:デュオ日本ツアー2003』(Travessia)が意識されたものだ。前回の共演から9年が経ち、三者が入念に重ね合う音が驚くほどに深化している。

序盤からブロンディは指と棒でピアノ内部の弦からさまざまな音を出し、齋藤もまた指と弓でコントラバスの深い響きを作り出す。この世のものとは思えない音空間、言ってみれば幽玄そのものだ。この中のあちらこちらでドネダの息遣いが聴こえる。どこかで誰かの発する音が届くたびに動悸を覚える。そのインパクトは、ドネダやブロンディの音価が長くなってくるとさらに増すものであり、息を潜めて聴いている者たちとの共犯関係だとさえ言うことができる。

十数分が経過し(ここで便宜的に2曲目に入る)、ブロンディがようやく鍵盤に触り、齋藤のピチカートとともにサウンドの時間軸に前向きのヴェクトルをもたらす。ドネダは循環呼吸奏法により大きな速度の波を、また横向きにフルートのように吹いて風を、音空間に持ち込んでみせる。そして、齋藤がコントラバスに向き合ってさまざまな音を出し、ブロンディが弦からガラスのような高周波を出す。静謐さと激しさが共存した時間である。

終盤においては、ブロンディが弦の擦音を増幅し、ドネダが循環呼吸の連続音により生命力を発露し、齋藤も確信したように弓で弦を震わせ続け、三者がひたすらにサウンドに力を注入してゆく。

これは大いなる響きの音楽だ。

(文中敬称略)

齊藤聡

齊藤 聡(さいとうあきら) 著書に『新しい排出権』、『温室効果ガス削減と排出量取引』(共著)、『阿部薫2020』(共著)、『AA 五十年後のアルバート・アイラー』(共著、細田成嗣編著)、『開かれた音楽のアンソロジー〜フリージャズ&フリーミュージック 1981~2000』(共著)など。『JazzTokyo』、『ele-king』、『Voyage』、『New York City Jazz Records』、『Jazz Right Now』などに寄稿。ブログ http://blog.goo.ne.jp/sightsong

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