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GalleryNo. 285

#40 山崎比呂志作「龍神様」

text by Takehiko Ono 小野健彦

本号で通算200本に到達した私の連載LAL〈Live after Live〉において実に計19回登場を誇る最多登場人物であり、我が国のジャズ史にあって確たる軌跡を刻み続けているドラマーの山崎比呂志氏が、私の「200本」記念」にとプレゼントしてくれた15インチのタムタムドラムヘッドに描いた絵画作品である (因みに氏拘りの雅号は「我薄」)。
本稿の執筆に際し、画材の詳細等をご本人にお伺いしたところ、「そんなにたいした代物じゃないんだから余り詮索しないでくれよ」と言いながらもそのさわりを教えて下さったところによると、ラッカースプレーによる下地にアクリルラッカー絵の具で龍神様を描いたもののようだ。
本品を眺めて見て表面は分かる(添付写真①)。しかし裏返すと何やらサインの様なものがマジックペンで書かれていた(添付写真②③)。これが分からない、「200号記念」をもじったものかとも思いながらまたしても山崎さんにお伺いすると、「表にして明かりにでも透かしてごらん?」と。
成程、分かった(添付写真④)。このウィットに富んだ奥ゆかしさが、演奏同様この方の魅力なのだ。

この作品が描かれた経緯とまつわるサイドストーリーについては、実は本誌No276のLAL#143における昨年3/28・山崎さん81歳記念ライブ(w大友良英氏+広瀬淳二氏)のレポートでも触れており、以下ではそれに加筆・修正を加えつつ本品の説明を進めたいと思う。
私と山﨑さんのお付き合いは、’18/12末の新宿ピットイン公演(w大友良英氏+千葉広樹氏)にまで遡るが(添付写真⑥)、その後の極めて濃密な交流を通して、山崎さんは、今や私にとっては、「ジャズ界の愛すべきオヤジ」のような存在になっている。そんな関係からか、特にこのコロナ禍になってからは、まるでオヤジの生存確認をするが如く、毎週末に電話での互いの近況報告が続き、加えて、その他の情報のやり取りはLINEでというのが日常になっていた。そんなLINEの中に、一昨年11月頃から、ドラムヘッドに描かれた龍の絵が頻繁に含まれる様になって来た。その筆致の鮮やかさに驚愕し、山崎さんに経緯をお聞きすると、それはとある夜、瑞江夫人と散歩をしていて、自宅から程近い鹿島神宮の杜の上に突如現れた龍神様(龍神雲)(添付写真⑦)におおいに触発されて描き始めたのだという。その後送付されて来る作品のいずれもが「自らが龍神様の御加護の下に生きている」という山崎さんの精神性を圧倒的な筆致で表現したものと感じられ、それらを拝見し続けるにつけ、これはより多くの方にご欄頂きたいと思ったのが、その後の流れの発端だった。そう思った私は、僭越ながら、にわか舞台監督よろしく、渋る山崎さんを説得し続け、一方では、なってるハウスの横山新店長に最大限のご協力を要請し、結果的に、当夜(3/28)の舞台背景が実現したという訳である。(詳細写真⑧⑨)
因みに今回プレゼント頂いた作品は記念すべき当夜の舞台を飾った上段右端という訳だ。

小野 健彦

小野健彦(Takehiko Ono) 1969年生まれ、出生直後から川崎で育つ。1992年、大阪に本社を置く某電器メーカーに就職。2012年、インドネシア・ジャカルタへ海外赴任1年後に現地にて脳梗塞を発症。後遺症による左半身片麻痺状態ながら勤務の合間にジャズ・ライヴ通いを続ける。。

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