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InterviewsNo. 294

Interview #253 RINA pianist

RINA
国立音楽大学にてジャズピアノを小曽根真に師事。2015年バークリー音楽大学のオーディションを受け、学費全額免除を獲得して入学。在学中にジャズ・パフォーマンス・アウォードを受賞。ラルフ·ピーターソン(ds)率いるバークリー選抜学生カルテットのピアニストに抜擢され、スイスのベルン・ジャズ・フェスティヴァルに出演したほか、フランスのナンシー・ジャズ・フェスティヴァルにも出演している。2018年 エリス・マルサリス国際ジャズ・ピアノ・コンペティション2018では、13カ国/160人以上の参加者の中から7人のファイナリストに選ばれ、第2位受賞、並びに最優秀作曲賞を受賞。そのような輝かしい実績を積み重ねた後の2020年に1stアルバム『RINA』を発表。現在は、2021年に佐藤潤一(b)、小田桐和寛(ds)と結成した RINA Trioや、小川晋平(b)とのデュオ、ソロ・ピアノ演奏など多彩な演奏活動を展開している気鋭のピアニスト。

Interview by Kazune Hayata 早田和音
Photo by Kenji Hayashi ©︎林 建次

――ジャズやピアノとの出会いについてお聞かせください。

私が最初に触れた楽器はエレクトーンでした。ヤマハ音楽教室に通っていた姉の影響だと思うんですが、3歳くらいから私も教室に通い始めるようになりました。その後、小学生になってからは、エレクトーンと並行してピアノも習うようになったんですけど、自分としてはエレクトーンの方に興味があったので、当時はピアノをやらされるのがすごく苦痛でした。譜読みもしたくなければ、練習もしたくない。お稽古も辞めたり再開したりの繰り返し。子供の頃はピアノにまったく興味が持てませんでした。

――そのRINAさんがピアノに、そしてジャズに興味を持つようになったきっかけは?

最初にジャズ・ピアノがいいなと思えるようになったのは中学生の頃だと思います。友達がピアノでチック・コリアの曲を演奏するのを聴いて、カッコいいと感じたのを覚えています。でもその時はそれだけで終わってしまいました。大きな変化が起きたのは高校3年生の夏休みでした。

――どのようなことがあったのでしょうか?

国立音楽大学が高校生を対象に実施した夏期講習です。そこで初めて小曽根真さんにお会いして、ブルースやリズム・チェンジの曲などを一緒に演奏させてもらったんです。その当時はジャズの知識は何もなかったんですが、エレクトーンをやっていたおかげで、左手のベースラインも取ることができましたし、ある程度のことはできたんですね。最初は譜面を見ながらの演奏だったんですが、そのうちに小曽根さんが“自由に演奏してみて!”っておっしゃって。言われるままに頑張って弾いてみたら、どんどん楽しい気分になって、“あっ、これだ!”と思って、進学を決めました。

――大学ではどのように学ばれたのですか?

小曽根さんが国立音大で教鞭を執ってらしたので、4年間、小曽根さんにレッスンを見てもらうことができました。小曽根さんのレッスンはまったく楽譜を使わないんです。例えば#9のコードを教わる時も、いきなりその音を聴かされて、“これは何色に感じる?”っていうように感覚として身に付けていきました。スタンダードを毎週3曲ずつくらい演奏していくのですが、そのすべてが楽しくて、“この3曲を覚えれば、次の新しい3曲を教えてもらえるんだ”みたいなワクワク感。“小曽根さんのように弾けるようになりたい”という一心で、とにかく楽曲を覚えて、練習しまくっていきました。

――小曽根さん以外にお好きなピアニストというと?

私の場合は、大学進学と同時にジャズを学ぶようになったので、レッスンを受けながらスタンダードを覚え、さらにいろいろなピアニストの演奏を聴いていくというように、すべてがひとつになって進んでいきました。最初はオスカー・ピーターソンを聴いて、それからいろいろなピアニストに広がっていったのですが、レッド・ガーランドやウィントン・ケリーをよく聴くようになりました。

――その後、バークリー音楽大学に進まれて、2018年にはエリス・マルサリス・ピアノ・コンペティションで2位を獲得なさいました。以前、小曽根さんとお話しした時に、その時の審査員を務めていたブランフォード・マルサリスからRINAさんに関するメールが届いたというお話をされていました。“今度のコンペティションで、ちゃんとしたジャズの語法で演奏できるのがふたりいた。そのうちのひとりがRINAなんだけど、マコト、あの子はお前が教えたんだろう。そうでなければ、あれだけ本格的なニューオーリンズ・スタイルのピアノが弾けるわけがない”とおっしゃっていました。

そうなんです。私のところにも直ぐに、ブランフォードさんのコメントを知らせる小曽根さんからのメールが来ました。あのコンペティションはとても楽しかったです。ファイナルに残れれば、審査員を務めるブランフォードさんやジョン・バティステにも会うことができるという憧れ半分な気持ちで参加したんですけど(笑)、無事にファイナルに残れたうえに受賞までできて最高の気分でした。ニューオーリンズ・スタイル、ビバップ、オリジナル、歌の伴奏、という4つの観点から審査されるのですが、どれも国立音大のレッスンでやってきたことだったのでとてもリラックスできましたし、とても前向きな気持ちで臨むことができました。

――その後、現在は、佐藤潤一(b)さん、小田桐和寛(ds)さんを迎えたRINAトリオを中心に活動なさっていますが、このトリオについて教えてください。

帰国後、真っ先に結成したトリオです。佐藤さんも小田桐さんもずっと以前から憧れていたミュージシャン。ふたりとも国立音楽大学の先輩ではあるのですが、そういう縦の関係のようなものはまったく無くて、とても楽しくやれています。このトリオの最大の魅力は、みんながありのままの自分を出せる点。それはたぶん、互いに理解し合えているからできているのでしょうね。演奏中に、私のふとしたフレイズをきっかけにして、演奏が発展することもありますし、こちらが音を出す前に、それを察知されて先に突っ込まれてしまうなんていうこともあります(笑)。とにかく本当に楽器で会話をしている感じ。トリオで一緒に演奏するようになって1年が過ぎようとしていますけど、ライヴをするたびにどんどん高いゾーンに昇っていくような手応えを感じています。

――そのトリオですが、11月10日にコットンクラブへの初出演が決まったそうですね。

そうなんです。コットンクラブは憧れのステージだったのでとても喜んでいます。

――どのようなライヴになるのでしょうか?

1stアルバム『RINA』の収録曲も演奏しますけど、それ以外にも最近になって、「レディオ・ステーション」をはじめとする新しいレパートリーも増えてきているので、新曲も含めて2セットの中でいっぱい演奏しようと思っています。オリジナル曲中心ですが、クラシック曲への挑戦もやろうとしているので、そちらも1~2曲入れようと思っています。このトリオの最新ヴァージョンを披露します。


コットンクラブ公演紹介記事はこちら

――最後に、今後どのようなアーティストになっていきたいとお考えですか?

現在、今お話ししたRINAトリオの他にも、小川晋平(b)さんとのデュオ演奏をやっていますし、今後はソロ・ピアノの演奏も積極的に行なっていく予定です。そうした演奏活動の中でしっかりとした自分の個性や音楽性を培って、RINAという音楽を表現できるアーティストになることが大切だと思っています。私が小曽根真さんに憧れてジャズの道に進んだように、私の音楽が次世代に繋がっていくようになるといいですね。

RINA / Shadows Of The Mind

早田和音

2000年から音楽ライターとしての執筆を開始。インタビュー、ライブリポート、ライナーノーツなどの執筆やラジオ出演、海外取材など、多方面で活動。米国ジャズ誌『ダウンビート』国際批評家投票メンバー。世界各国のメジャー・レーベルからインディペンデント・レーベルまで数多くのミュージシャンとの交流を重ね、海外メディアからの信頼も厚い。

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