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このパフォーマンス2018(海外編)No. 249

#09 マタナ・ロバーツ

2018年11月24日(土) 西麻布 スーパー・デラックス

Matana Roberts (as, vo)

Text by Akira Saito 齊藤聡

マタナ・ロバーツが初来日した。滞日中の演奏は、3日間にわたる「スーパー・デラックス エディション」最終日における1セットのインプロヴィゼーションのみである。

登壇すると、マタナは、来ることのできた喜びと、観客から感じるエネルギーについて早口で呟いた。そこから30分強だろうか、文字通り圧巻のアルトソロを披露した。彼女は呼吸のサイクルと同調させるように、息継ぎや感情を増幅させるように、アルトを吹く。そのブロウには血や情や泥が溢れんばかりに詰まっている。

アルトだけではない。「Chicago…, Get out my Chicago, I love it.」と、自身のルーツたるシカゴへの愛を呟き、また、「Something in the universe shifts…」と呟きつつ、共感する観客の声とともにドローンを創出した。これは「dedicated moments to you and me」であり、そして、「Let’s celebrate life.」。パフォーマンスの最後は「My name is Matana Roberts.」と締めくくった。痺れてしまい、しばらくは忘れられそうにない。

筆者自身は彼女のグループをいちどNYで観てもいるのだが、アルトソロは我がすべてさらけ出されるようであり、やはり特別だ。ソロ作品『Always.』(Relative Pitch、2014年録音)での印象を遥かに凌駕していたのだが、それは、同じ場を共有したからに他ならない。

(文中敬称略)

齊藤聡

齊藤 聡(さいとうあきら) 著書に『新しい排出権』、『齋藤徹の芸術 コントラバスが描く運動体』、共著に『温室効果ガス削減と排出量取引』、『これでいいのか福島原発事故報道』、『阿部薫2020 僕の前に誰もいなかった』、『AA 五十年後のアルバート・アイラー』(細田成嗣編著)、『開かれた音楽のアンソロジー〜フリージャズ&フリーミュージック 1981~2000』、『高木元輝~フリージャズサックスのパイオニア』など。『JazzTokyo』、『ele-king』、『Voyage』、『New York City Jazz Records』、『Jazz Right Now』、『Taiwan Beats』、『オフショア』、『Jaz.in』、『ミュージック・マガジン』などに寄稿。ブログ http://blog.goo.ne.jp/sightsong

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