#09 マタナ・ロバーツ
2018年11月24日(土) 西麻布 スーパー・デラックス
Matana Roberts (as, vo)
Text by Akira Saito 齊藤聡
マタナ・ロバーツが初来日した。滞日中の演奏は、3日間にわたる「スーパー・デラックス エディション」最終日における1セットのインプロヴィゼーションのみである。
登壇すると、マタナは、来ることのできた喜びと、観客から感じるエネルギーについて早口で呟いた。そこから30分強だろうか、文字通り圧巻のアルトソロを披露した。彼女は呼吸のサイクルと同調させるように、息継ぎや感情を増幅させるように、アルトを吹く。そのブロウには血や情や泥が溢れんばかりに詰まっている。
アルトだけではない。「Chicago…, Get out my Chicago, I love it.」と、自身のルーツたるシカゴへの愛を呟き、また、「Something in the universe shifts…」と呟きつつ、共感する観客の声とともにドローンを創出した。これは「dedicated moments to you and me」であり、そして、「Let’s celebrate life.」。パフォーマンスの最後は「My name is Matana Roberts.」と締めくくった。痺れてしまい、しばらくは忘れられそうにない。
筆者自身は彼女のグループをいちどNYで観てもいるのだが、アルトソロは我がすべてさらけ出されるようであり、やはり特別だ。ソロ作品『Always.』(Relative Pitch、2014年録音)での印象を遥かに凌駕していたのだが、それは、同じ場を共有したからに他ならない。
(文中敬称略)