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このディスク2018(国内編)No. 249

#06 『佐山雅弘/ブリッジ』

text by Keiichi Konishi 小西啓一

『佐山雅弘  / B’Ridge』 KICJ-786  ¥3,000 + 税

<B’Ridge >
佐山 雅弘 Masahiro Sayama (Piano)
織原 良次 Ryoji Orihara (Fretless Bass)
福森 康 Yasushi Fukumori (Drums)

01.Ballad for Yasushi(佐山 雅弘)
02.しなやかな指をもちなさい(織原 良次)
03.Radio Song(Esperanza Spalding)
04.Space Bridge(織原 良次)
05.umi(佐山 雅弘)
06.sora(佐山 雅弘)
07.riku(佐山 雅弘)
08.鉄と火花(織原 良次)
09.Lullaby of Bassist(佐山 雅弘)
10.ヌデレバの追走(織原 良次)
11.人間が住んでる(織原 良次)
12.Three Women(Jaco Pastorius)

国内編の方だがこの作品が、今年のベストかはしかとはしない。だが最も心に残った~沁みたアルバムとして上げさせてもらった。11月に亡くなってしまったピアニストの佐山雅弘の遺作『ブリッジ』。知り合いからTELで“佐山雅弘が亡くなったよ”と知らされ、前日の片山広明の死のニュース以上にショックだった。闘病中とは知っていたが早かったなーと言った思いで実に寂しい。そこでこの遺作を改めて聞き直し、再度惚れ直しでしまったが、彼のジャズに賭ける情熱が苦しい体調の中(?)でも強く迸っているのだ。佐山とはもう30数年の仲で、新作を発表すると“番組出してよー”と催促のtelがあり(ぼくはラジオ日経の「テイスト・オブ・ジャズ」という、55年超の歴史を誇る恐らく世界最長(最良では勿論無い?)ジャズ番組のプロデューサーでもある)、時々スタジオに遊びに来てもらったし、スタジオのピアノでソロも披露してくれた。その彼が苦しい闘病生活の中でもアルバムを出せるほどに…と一安心していた矢先の死去の知らせ。合掌!

アルバムは若い気鋭のベーシスト(織原良次/音楽監督)とドラマー(福森康)を伴った、ニュー・トリオ“ブリッジ”のデビュー作にして終作。“ロック・バンドの様な威勢の良いトリオ“を…と言う趣旨で始められた、このトリオならではの力感溢れた作品で、若い2人の弾け飛ぶアグレッシブ・プレー(“鉄と火花“とも形容できる)をバックにした、佐山ならではの“極めて美しいピアノ技“が激しくも心優しく弾む感涙作。2人それぞれに捧げられた”佐山愛“に溢れる、”バラッド”と”ララバイ“が特に印象深い。今イチ話題にならなかったのは大変に残念なところだが、心に残る秀作。

http://sayamamasahiro.com/bridge-%E9%8C%B2%E9%9F%B3%E8%A8%98%E2%91%A0/

小西啓一

小西啓一 Keiichi Konishi ジャズ・ライター/ラジオ・プロデューサー。本職はラジオのプロデューサーで、ジャズ番組からドラマ、ドキュメンタリー、スポーツ、経済など幅広く担当、傍らスイング・ジャーナル、ジャズ・ジャパン、ジャズ・ライフ誌などのレビューを長年担当するジャズ・ライターでもある。好きなのはラテン・ジャズ、好きなミュージシャンはアマディート・バルデス、ヘンリー・スレッギル、川嶋哲郎、ベッカ・スティーブンス等々。

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