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このパフォーマンス2018(海外編)No. 249

#10 アレクサンダー・フォン・シュリッペンバッハ ・トリオ+高瀬アキ「冬の旅:日本編」

text by Kazue Yokoi 横井一江

 

「冬の旅:日本編」Winterreise in Japan
11月23日 座・高円寺
11月24日 横濱エアジン
11月25日 静岡 青嶋ホール
11月26日 新宿ピットイン
11月27日 慶応大学三田キャンパス北館ホール(シュリペンバッハ、高瀬アキのみ)

シュリッペンバッハ・トリオ
アレクサンダー・フォン・シュリッペンバッハ(ピアノ)
エヴァン・パーカー(サックス)
ポール・リットン(ドラムス)

高瀬 アキ(ピアノ)

 

当事者なので、ここで取り上げるのは手前ミソかもしれないが、シュリッペンバッハ ・トリオの来日が遂に実現し、無事終了したという感慨を込めて敢えて選んだ。高瀬アキとシュリッペンバッハ のデュオも13年ぶりである。

実は21年前に、横濱ジャズプロムナードにシュリッペンバッハ ・トリオ(シュリッペンバッハ 、エヴァン・パーカー、パウル・ローフェンス)と高瀬アキ・トリオ(高瀬、ルディ・マハール、井野信義)での出演、そして国内ツアーが決まっていたが、エヴァン・パーカーが個人的な事情から来日出来なくなり、全ての公演でルディ・マハールがシュリッペンバッハ・トリオでも代役を務めたということがあった。それがトラウマになっていたのか、全員が来日するまでは気が気でなかったというのが正直なところである。

残念ながら、今回のドラマーはオリジナル・メンバーのパウル・ローフェンスではなく、グローブ・ユニティ・オーケストラのメンバーでもあり、ローフェンスに代わって度々トリオで演奏してきたポール・リットンでの来日となった。しかし、ローフェンスとは異なったサウンド空間に逆に新鮮味を感じたのは収穫だった。エヴァン・パーカーも通常ならば、ソプラノ・サックスとテナー・サックスの両方を持参するところだが、飛行機内への楽器の持ち込みが制限される航空会社だったためにテナー1本のみ。敢えてテナーを選んだことに、彼のこのトリオに対するスタンスが窺えた。これはこれで、パーカーのテナーを堪能し尽くすこととなったので、良かったのではないかと思っている。それぞれの会場の特徴や空間の響きも考慮に入れたのではないかとさえ思わせる即興演奏は匠の技のようで、パワーで押すフリージャズにはない美しさを湛えていた。3者それぞれ、名匠にふさわしい技量があればこそ、超越した音楽観があればこその演奏だった。やはり、伝説ではない!

最後に、会場に足を運んでくれた皆様、ご尽力をいただいた関係者の方々、多方面で協力して下さった人々に、あらためてありがとうを!

このツアーについては下記連載で書きました。
Reflection of Music Vol. 64 シュリッペンバッハ・トリオ

横井一江

横井一江 Kazue Yokoi 北海道帯広市生まれ。音楽専門誌等に執筆、 雑誌・CD等に写真を提供。ドイツ年協賛企画『伯林大都会-交響楽 都市は漂う~東京-ベルリン2005』、横浜開港150周年企画『横浜発-鏡像』(2009年)、A.v.シュリッペンバッハ・トリオ2018年日本ツアー招聘などにも携わる。フェリス女子学院大学音楽学部非常勤講師「音楽情報論」(2002年~2004年)。著書に『アヴァンギャルド・ジャズ―ヨーロッパ・フリーの軌跡』(未知谷)、共著に『音と耳から考える』(アルテスパブリッシング)他。メールス ・フェスティヴァル第50回記。本『(Re) Visiting Moers Festival』(Moers Kultur GmbH, 2021)にも寄稿。The Jazz Journalist Association会員。趣味は料理。当誌「副編集長」。 http://kazueyokoi.exblog.jp/

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