#05 『ソニード・ソラール(太陽の音)』『ザ・サウンド・オブ・リスニング』
text by Keiichi Konishi 小西啓一
今年の1枚「海外編」の方だが、こちらも色々と刺激を受け愉しませてもらった、趣きの異なる2枚を挙げたいのだが…。そこは1枚にということで、いつものようにあまり陽の目を見ることのない、ラテン・ジャズ作品から…。
そのラテン・ジャズの傑品とは…、80年代後半になっても依然健在で NYシーンに君臨、その活性化に邁進続ける、ザ・キングことエディ・パルミエリ (p) が、現在のNYラテン・ジャズのトップをひた走るカーティス兄弟(ザッカイ(p) &カーティス(b))。彼等をメインにした新プロジェクトのプロデュース役を務めた、話題のアルバム『ソニード・ソラール(太陽の音)』。パルミエリも2曲でゲスト出演しており、新プロジェクト名がそのままアルバムのタイトルで、ルイス・フーシェ (ts) などの逸材も参加する、4管編成と3人の打楽器隊という9人の大所帯。この期待プロジェクトのお披露目作でもある。御大パルミエリが高く評価する、カーティス兄弟の新たな旅立ちを記したこのアルバム、胸ワクワクのコラボにレコード店の店頭で見つけ即買いしたのだが、これが大正解。”熱さと哀愁”たっぷりのラテン・ジャズはこれで決まりといった感じで、 21世紀のラテン・ジャズここにありのたっぷりの満足感を得られるもの。曲目もチューチョ・バルデスの〈マンボ・インフルエンシアード〉、ティト・プエンテの〈ラン・カン・カン〉、クレア・フィッシャーの〈モーニング〉などお馴染みのものが並ぶが、中でも特筆すべきはオーラスのパルミエリの〈スーツ 175〉。彼自身も参加し若手達と共に、ラテン・ジャズならではの狂喜乱舞の悦楽世界を現出する、愛好家も初心者も共に愉しめるお得で嬉しい1作。
そしてもう1枚は、今や白人ドラマーの代表格で故デビッド・ボウイとの共演でも知られる売れっ子、マーク・ジュリアナの最新作『ザ・サウンド・オブ・リスニング』。こちらは前者の対極にあるようなコンテンポラリー・ジャズ・アルバムで、シャイ・マエストロ (p)、ジェイソン・リグビー(sax)等、NY の俊才達を伴ったマーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテットによる最新作。深遠・静謐でいて軽快さも伴った充実の音世界が展開され、自己の内面世界を深く見つめ直す、ジュリアナの新たな地平が提示されている。今ぼくの最も好きなシンガー(彼のパートナーでもある)グレッチェン・パーラトの真の傑作『フローラ』にも一脈通じる、多彩で清冽な “境” に心惹かれる。
2枚共に22年のシーンを飾る優れた作品です。