JazzTokyo

Jazz and Far Beyond

閲覧回数 19,655 回

このディスク2012(国内編)~No. 201

このCD2012 国内編 #07 『ポール・ウィンター・コンソート/MIHO: Journey to the Mountain』

text by Seiichi Sugita 杉田誠一

Living Music

Paul Winter(ss)
Eugene Friesen(cello)
Don Grusin(key)
Jordan Rudess(key)
Druba Ghosh(sarangi)
Arto Tuncboyaciyan(vocals, sazabo)
Paul McCandless(oboe, E-horn, heckelphone, b-cl)
Yukiko Matsuyama(koto)
Glen Velez(perc)
Steve Gorn(bansuri)
Yangjin Lamu(voice)
Tim Brumfield(p, organ)
Cafe DeSilva(perc)
Eriko Koide(carillon)
Shumei Taiko Ensemble
Chorus of Worcester Polytechnic Institute, conducted by Wayne Abercrombie
Shumei Chorus, conducted by Hiroko Matsui

1. Saxohone (Song of Miho)
2. Sarangi (Dawn Raga)
3. Arto (Before It’s Too Late)
4. English Horn
5. Koto
6. Frame Drums
7. Bansuri & Saxophone
8. Yangjin
9. Bendir & Heckelphone
10. Saxohone (Reprise)
11. Arto (Singing to the Mountain)
12. The Welcome (Song of Miho)
13. Koto Spring
14. Elephant Dance
15. Whale Raga
16. Love is not in Your Mind
17. Twilight
18. Andante
19. Remembering
20. Saturday Night In Peach Valley
21. Song for Miho
22. Morning Sun

録音:2010年 ミホミュージアム(滋賀県甲賀市)


“MIHO Journey to the Mountain”は、2011年のグラミー・アワードである。実は、エンジニア・加藤 明に対する評価が受章の理由である。
最近オーディオに少々お金をかける。1950年代後半のマッキントッシュ(アンプ)、アルテック(スピーカー)、それからトーレンス(プレーヤー)。カートリッジはシュアー。CDプレーヤーはSACD対応のマランツ。オーディオが完全に生き返る。CDも、アナログでかけると、とってもやわらかく、自然に聴こえてくる。とりわけ、”MIHO”は、ぜひともアナログのシステムで聴かれたい。
加藤 明は、金剛 督(tas,fl) と林あけみ(p)のギグにふらりとやって来る。“MIHO”の録音の良さにまず刺激を受ける。自然の音よりもさらにスポンテイニアスで、リアルなのだ。
少々陳腐な質問をぶつけてみる。

__録音は何処で?
「MIHO Museum(滋賀県甲賀市信楽町)です」
山の中腹、静かな森林の中にポツンと位置している。イメージは「桃源郷」。
設計はイオ・ミンパイ。代表作にルーブル美術館「ガラスのピラミッド」。MIHO Museumの全容積の8割が地下に位置する。
「録音は深夜、電源を完全に切って行いました」
__電源は?
「完璧なソーラー電源を用いました」

今回、参加した琴アーチストに、松山多貴子がいる。松山は、1993年以来LAをホーム=根拠地として活動。ポール・ウィンターからオファーを受けたのは2010年。ポール・ウィンター・コンソートとのコラボは、完全アドリブだときく。
ポール・ウィンター・コンソート(1967年結成)が、大学時代に学生バンドNo.1になって以来、全くブレることなく、未だ演奏し続けていることは、ほとんどアクチュアルな事件だといっていい。さまざまな民族音楽を極め、大自然というか、大宇宙との共生を限りなく志向する。『MIHO』では、ウグイスやクジラとすら話ができるのです。
観音開きでアルバムに収められている1800年代の伊藤若冲が描いたクジラとゾウの絵は、特筆に値する。ポール・ウィンター・コンソートの神秘主義と、底知れないパワー・スポットのひとつといえよう。
ニュー・エイジ~ヒーリング・ミュージック~ワールド・ミュージックを侮るなかれ、なのだ。
なお、「コンソート」といういいようは、シェイクスピア時代のアンサンブル・バンドから名付けられた。(杉田誠一)

*初出 JazzTokyo #182 (2012.12.30)

杉田誠一

杉田誠一 Seiichi Sugita 1945年4月新潟県新発田市生まれ。獨協大学卒。1965年5月月刊『ジャズ』、1999年11月『Out there』をそれぞれ創刊。2006年12月横浜市白楽にカフェ・バー「Bitches Brew for hipsters only」を開く。著書に、『ジャズ幻視行』『ジャズ&ジャズ』『ぼくのジャズ感情旅行』他。

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください