8/27 ライル・メイズ遺作『Lyle Mays / Eberhard』 『ライル・メイズ/エバーハルト』をリリース
Text by Hideo Kanno 神野 秀雄
ライル・メイズの遺作となる<Eberhard>と名付けられた13分の作品が2021年8月27日にリリースされる。<Eberhard>は言うまでもなく、ECMに多数の名作を残しているドイツのベーシスト、エバーハルト・ウェーバー(1940年〜)に捧げられている。 マリンビスト、ナンシー・ゼルツマンの主催するゼルツマン・マリンバ・フェスティヴァルからの委嘱で2009年に書き上げられ、2019年からライルが加筆拡張して、2020年2月10日にライルが亡くなる数ヵ月前、2019年後半にライルと親交のあるトップミュージシャン16人が集まりロサンゼルスで録音された。これはライルの7枚目かつ最後のリーダーアルバムとなる。ライル・メイズの訃報とその生涯については、「ライル・メイズ逝く (1953.11.27-2020.2.10)」を、追悼特集はこちらを参照されたい。
『Lyle Mays / Eberhard』
『ライル・メイズ/エバーハルト』
2021年8月27日(金) CD、レコード、デジタル、ストリーミングで世界公開
CD、関連グッズの通販はLyle Mays Store
Lyle Mays (piano, keyboards, synthesizers)
Bob Sheppard (sax and woodwinds)
Steve Rodby (acoustic bass)
Jimmy Johnson (electric bass)
Alex Acuña (drums and percussion)
Jimmy Branly (drums and percussion)
Wade Culbreath (vibraphone and marimba)
Bill Frisell (guitar)
Mitchel Forman (Hammond B3 organ, Wurlitzer electric piano)
Aubrey Johnson (vocals)
Rosana Eckert (vocals)
Gary Eckert (vocals)
Timothy Loo (cello)
Erika Duke-Kirkpatrick (cello)
Eric Byers (cello)
Armen Ksajikian (cello).
ドイツのベーシスト、エバーハルト・ウェーバー(1940年〜)は、ライルが共演の機会を持ちながら、ライルへ作曲においても多大な影響を与え、11回のグラミー賞を受賞したパット・メセニー・グループ(PMG)での共演者だったパット・メセニーにも多大な影響を与えた。ライルの親友でありPMGメンバーのスティーヴ・ロドビーは、このアルバムでプロデュースに参加し、アコースティック・ベースを担当し、本作について、100%ライルの音楽でありながら、エバーハルトへの謙虚なトリビュートになったと述べている。(なお、パット・メセニーは『Hommage à Eberhard Weber』(ECM2463)をエバーハルトに捧げている。シュツットガルト、横浜、デトロイトのレポートを参照)
明るく繰り返し持続するマリンバから、エバーハルトが書いた空気感のあるピアノのフレーズ、もちろんライルが弾き出し、さまざまな楽器が重なり、繋がりストーリーを紡ぎ出していく。16人の奏者が同時に音を出すことはほとんどない。エバーハルトからの作曲スタイルとベースラインの影響を反映しつつ、フィリップ・グラスのようなミニマリズム、ブラジル音楽の感覚まで内包し、科学者のようにメロディ、ハーモニー、リズムなどにおける各要素を実験し、追求しながら完成させていく。
スティーヴ・ロドビーは以下のように語っている。「ライルの健康状態は2019年に悪化し、それと同時に、ライルは<Eberhard>を録音しようと決めました。この曲をあらゆる点から加筆拡張し再構築しました。」「その結果がこの録音で、亡くなる直前にライルに聴こえていた音を聴くことができます。それはこのアルバムがライルの音楽の最終形であるという意味ではなく、もしも彼が長生きできたら、さらに新しいプランを考え実行していたことでしょう。」 ライル・メイズが見ていたこの先の景色を共に見に行きたい。