#2014 『NordNote』池長一美 & 浅川太平
Text by Hideo Kanno 神野秀雄
『NordNote』 池長一美 & 浅川太平
『NordNote』 Kazumi Ikenaga & Taihei Asakawa
Time Machine Record TMCD-1020 (2020年5月20日)
1.Into the sound(Taihei Asakawa)
2.Lady of silences (Taihei Asakawa)
3.Non (Taihei Asakawa)
4.Line (Taihei Asakawa)
5.Sænk kun dit hoved du blomst (Carl Nelsen)
6.Cirkus (Taihei Asakawa)
7.May wind (Kazumi Ikenaga)
8.Fragility (Taihei Asakawa)
9.In love in vain (Jerome Kern)
10.Beautiful dreamer (Foster)
NordNote:
池長一美 Kazumi Ikenaga (drums)
浅川太平 Taihei Asakawa (piano)
Recorded at 100ban studio in Kobe, November 25th 2019
Produced by Kazumi Ikenaga and Taihei Asakawa
Recorded, Mixed and Mastering : Akihiko Goto (Time Machine Record)
Design : Yumi Nishimoto
Cover Photo : Martin Dam Kristensen
Piano Tuning : Yuko Suzuki
北欧のアーティストとのライブやレコーディングも多いドラマー池長一美と、北海道出身で「北」をモチーフに数多くの作曲を続けているピアニスト浅川太平が結成したユニット「NordNote」。二人の「北」へのオマージュを音で具現化するプロジェクトのファースト・アルバムがリリースされた。池長は、JAZZ TOKYOに、ヨン・クリステンセン追悼文を寄せているようにバークリー在学中から北欧を意識しつつも、自身の音を模索して来た。2013年10月、池長、浅川に太田 剣(sax)とのベースレストリオが最初の出会いだったという。太田 剣の回想によれば、六本木アルフィーで『Paul Motian, Chris Potter & Jason Moran / Lost in a Dream』(ECM2128)の編成とサウンドに憧れてトライしたくて、考え得る最高の人選が池長と浅川だったと言う。池長、浅川、橋爪亮督(sax)、萬恭隆(b)による「the poetry of impressionism」(2014〜2017年)を経ながら、並行して2016年にデュオを開始し、4年越しのファースト・アルバムとなった。
浅川が6曲、池長が1曲を持ち寄り、カヴァー3曲を加えているが、このアルバムの素晴らしさは、オリジナル曲の数々の確かな構成とその美しさによるところが大きく、その上に二人の繊細で深みのあるインタープレイが構築されていく。1曲目<Into the sound>への「己の内側に、創造の外側に向かって音を紡いでいく。流れゆく時間をあるがままに導き入れる。旅はここから始まる。」という浅川のセルフ・ライナーノートがこのアルバムの世界観を的確に言い当てていると思う。
個人的には、ノルウェーのオスロ〜トロムソを経て北の果て、スヴァールバル諸島のロングイェールビーン(スピッツベルゲン、北緯79°)、南の果てではアルゼンチン・ウシュアイアまでを見届けて来た。それだけに「北」という言葉に象徴される厳しさと暖かさ、二人の目指す研ぎ澄まされた感性が理解できる気がする。その感性を録音の音響上でもみごとに実現しており、Time Machine Recordのオーナーでエンジニアの五島昭彦がミニマムのマイキング(基本は2本のみ)で、後藤の師匠の金田明彦による「金田式DC録音システム」で収録されたという。そして、ぜひライヴで聴いてみたいデュオ・ユニットだ。
【NodeNote CDリリース ライヴ】
2020年8月20日(木) 19:30
新宿ピットイン
2020年9月26日(土)19:00 20:30
西宮市フレンテホール
2020年10月3日(土)15:00
多摩センター Warp