JazzTokyo

Jazz and Far Beyond

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CD/DVD DisksNo. 309

#2295 『Trio San / Hibiki』

Text by Akira Saito 齊藤聡

JAZZDOR

Satoko Fujii 藤井郷子 (piano)
Taiko Saito 齊藤易子 (vibraphone)
Yuko Oshima 大島祐子 (drums)

01. Hibiki
02. Soba
03. Yozakura
04. What You See
05. Wa
06. Ichigo

藤井郷子と齊藤易子のデュオによる『Beyond』はかなりの異色作であり、微細な音の遷移帯に聴く者の意識が連れていかれるような世界を提示したものだった。藤井のピアノソロ『Stone』もまた、音が創出され波となって広がってゆくさまを否応なく想像させられる作品だった。そして本盤のタイトルはいみじくも『響』。

だからといって、このサウンドが藤井だけの個性によるものかと言えば否だ。また、藤井と齊藤のデュオに大島祐子が加わったのだという説明は適切ではないだろう。音のありようを問いなおすようにグラデーションのみを注視する作品ではないのだ。むしろ、本盤では、トリオとしての可能性がさまざまに模索されているのではないか。ダイナミックレンジの大きさはその証左である。

静かに、三者が「それぞれに」音を響かせはじめる。やがてこちらにも感じられるような音の交感に移行するプロセスはドラマチックだ。齊藤がヴァイブならではの残響の大きさと長さを活かしてピアノの横を駆けのぼったり、トリルで夢のようにピアノを浮上させる力を与えたり。三者が四方にエネルギーを放出するさい、あるいは静かに動きをはじめようとするさい、藤井のピアノが構造的にサウンドを収斂させる力を発揮する局面もある。パーカッシヴなピアノがあたかも大島のドラムスに力を注入したかのようにふるまい、ドラムスが天高く飛翔することもある。対照的に、そのドラミングは野太い音のときも息遣いを感じさせるほど繊細でもある。

もちろんそれだけではない。注意深く耳をそばだてれば、コミュニケーションが多様な現象となるありよう自体を音楽として受け止めることができる。

(文中敬称略)

齊藤聡

齊藤 聡(さいとうあきら) 著書に『新しい排出権』、『齋藤徹の芸術 コントラバスが描く運動体』、共著に『温室効果ガス削減と排出量取引』、『これでいいのか福島原発事故報道』、『阿部薫2020 僕の前に誰もいなかった』、『AA 五十年後のアルバート・アイラー』(細田成嗣編著)、『開かれた音楽のアンソロジー〜フリージャズ&フリーミュージック 1981~2000』、『高木元輝~フリージャズサックスのパイオニア』など。『JazzTokyo』、『ele-king』、『Voyage』、『New York City Jazz Records』、『Jazz Right Now』、『Taiwan Beats』などに寄稿。ブログ http://blog.goo.ne.jp/sightsong

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