#1047 Charlie Parker Jazz Festival 2018 from August 22 to 26 in NYC. Vol. 1
text & photo by Takehiko Tokiwa 常盤武彦
ニューヨークの夏の終わりを飾るジャズのビッグ・イヴェントは、2018年に26回を迎えたチャーリー・パーカー・ジャズ・フェスティヴァルだ。1920年の8月29日生まれのチャーリー・パーカーの生誕を記念して、毎年8月の最終週末に、土曜日はハーレムのマーカス・ガーヴェイ・パークと、イースト・ヴィレッジのトンプキンス・スクエア・パークを中心に開催される。1990年代に始まった当初は、パーカーが公園の向かいに1950年代住んでいてニューヨーク市のLandmarkに指定されているアパートがあり、その前の道路2ブロックがCharlie Parker Placeと命名されているトンプキン・スクエア・パークで日曜日の午後だけ開催されていた。当時はウォルター・ビショップ Jr.(p)ら、パーカーと行動を共にしたプレイヤーも登場したが、もう健在なのはロイ・ヘインズ(ds)、シーラ・ジョーダン(vo)ぐらいになってしまった。それから26年、今やジャズ・モービル、ニューヨーク市公園局が主管する夏のコンサート・シリーズ、サマー・ステージ、今最も熱いイヴェント・プロダクション、リヴァイヴ・ミュージック、ニュースクール大のジャズ&コンテンポラリー・ミュージック科、ジャズ・ミュージシャンの福利厚生団体であるジャズ・ファウンデーション・オブ・アメリカ、若手アーティストの登竜門ヴェニュー、ジャズ・ギャラリーと提携し、金曜、土曜、日曜の野外コンサート、ファミリー・イヴェント、パネル・ディスカッション、映画の上映と、都市型のジャズ・フェスティヴァルとして規模を拡大してきた。2018年は8月22日から26日にかけて、様々なイヴェントが例年通り無料で開催された。まずは8月24日のマーカス・ガーヴェイ・パークでのコンサートをリポートしよう。
8月24日のコンサートは、7月上旬から9月上旬まで、水曜日の夜にグラント将軍墓地公園、金曜日の夜にマーカス・ガーヴェイ・パークを中心に、ニューヨーク市内各地で野外ジャズ・コンサートを1960年代後半から提供している、ドクター・ビリー・テイラー(p)がファウンダーのジャズ・モービルとの提携イヴェントだった。毎週のジャズ・モービルのコンサート同様に午後7時に開始する。登場したのは、若手の中でもトラディショナル・ジャズ、ブルース、ファンクまで幅広いレパートリーを持ち、圧倒的な歌唱力を誇るブリアナ・トーマス(vo)。カサンドラ・ウィルソン(vo)のルーツ・ミュージック路線をサポートしていたマーヴィン・スウェル(g)が、ミュージック・ディレクターを務め、スタンダードからブルースまでを豪快に歌い、ハーレムの観衆を早くも沸点に導いた。
そしてフェスティヴァル前半のハイライトは、チャールズ・トリヴァー(tp)のリーダー・デビュー・アルバム『Paper Man』のリリース50周年記念コンサートだ。ポスト・フレディ・ハバード(tp)の最右翼だったトリヴァーが、ゲイリー・バーツ(as)、ハービー・ハンコック(p)、ロン・カーター(b)、ジョー・チェンバース(ds)を迎えて、新主流派のホープの満を持してのデビュー作で、イギリスのブラック・ライオンからリリースされた。オリジナル・メンバーからはゲイリー・バーツが参加。リズム・セクションには、バスター・ウイリアムス(b)、ジャック・ディジョネット(ds)とトリヴァーと同世代の巨星たちが並んだ。そしてシークレットだったピアニストには、ジェイソン・モランが起用された。1970年代にストラタ・イーストを拠点に活躍したトリヴァーは、1990年代には、教育活動が中心となりシーンから遠のいたが、デヴィッド・ワイス(tp)の尽力で、2000年代後半からシーンにカムバックし、野心的なビッグバンド作品をリリースしている。前日には、ナショナル・ジャズ・ミュージアム・イン・ハーレムで、ゲイリー・バーツとパネル・ディスカッションを開催し、当時を回想した。この夜は、ジャック・ディジョネット、バスター・ウィリアムスが叩き出す強烈なビートに乗り、トリヴァーとバーツが熱いソロを繰り広げ、モランが理知的なアウト・フレーズを奏でる。新旧の尖鋭的アーティストが、まさに一体となった瞬間だった。
【関連リンク】
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