#1054 リューダス・モツクーナス×大友良英×梅津和時
Text and photos by Akira Saito 齊藤聡
2018年12月8日(土) 横浜・白楽 Bitches Brew
Liudas Mockūnas (ts, ss)
Yoshihide Otomo 大友良英 (g)
Kazutoki Umezu 梅津和時 (bcl, cl, ss, as)
1. Mockūnas+大友
2. Mockūnas+梅津
3. トリオ
4. トリオ
ファーストセット、モツクーナス+大友。初っ端からテナーの重音で攻めるモツクーナスの横で、大友は金属的な音を探るように大きくしてゆき、やがて指弾きによる抒情を展開する。モツクーナスはソプラノとの2本吹きもみせたが、この日の主役はやはりテナーであり、音のエッジが鋭角に粘っている。弦の存在感が増してきて、ふたりは突然演奏を終えた。激しい音世界の入口である。
セカンドセット、モツクーナス+梅津。バスクラ、ソプラノ、クラと次々に多人格化してゆく梅津に対し、モツクーナスはソプラノをベンドさせ、あるいは、ごぼごぼと泡立たせる。このデュオは、沸騰しては再加速を繰り返すモツクーナスと、流れるように音世界を移し変えてゆく梅津との、奇妙な空中戦のような様相を呈した。梅津のアルトが持つ圧の強さも強い印象を残した。
サードセット、トリオ。イソギンチャクのように多方面に触手を伸ばす梅津、重量を維持しながら連続と断絶とを繰り返すモツクーナス、幅広さと重層的な響きとをもって音のコミュニケーションの形を作る大友。あるいは、大友のポルタメント、梅津のフレージング、モツクーナスの大きな慣性。三者それぞれの個性が展開された。
モツクーナスは、循環呼吸で息継ぎなくテナーを吹くと同時に、驚くほど強く粘るタンギングを行った(後で、梅津も驚いていたと聞いた)。それは他にみたことのない、破裂しながらも太くうねる奔流を作り出すものだった。
既に演奏の潮目は変わっている。梅津は強くファナティックな匂いを撒き散らし、モツクーナスはゆったりとブロウを濁らせた。大友はというと、弦やエフェクターのうねりの振幅を過度にエスカレートさせてゆき、ときに、モツクーナスと梅津のふたりの遊撃をいかに響きで包み込むか狙っているようにみえた。
4日間にわたる、Bitches Brewにおけるモツクーナスのレジデンシー。初日は浦邊雅祥とのデュオ、2日目は坂田明・林栄一との共演。3日目に共演した纐纈雅代については、自身を取り巻く音を良く聴いて演奏に反映させるプレイヤーだとの印象を持ったという。そしてこの日、彼がそれぞれ海外で観たという梅津、大友との共演を、最高のプロセスとして残した。
(文中敬称略)