Jazz and Far Beyond
Remembering Tomasz Stanko by ECM (Manfred Eicher)
ハービー・ハンコック、チック・コリア、キース・ジャレットがピアノ界を支配した時代にピリオドが打たれ、とりわけ21世紀はゴンサロ・ルバルカバ、小曽根真、そしてブラッド・メルドーの時代となった。
9月が刺激的な月になることは間違いない。来日ミュージシャン情報と冒険的な試みを行っているプロジェクトなどについて紹介したい。
スタンコはコメダから大きく影響を受けた作曲法、そして即興演奏家としての類い稀な才能、よくスラブ的と表される陰影を湛えた叙情性と奔放さを併せもった稀有な存在だった。
今年の初め彼はNYから私に電話を寄越し、固く結ばれた二人は最後の会話を交わしたが、私はとても幸せだった。トマシュ、音楽をありがとう、心から感謝する。
RIP Tomasz Stanko
Spotify にマンフレート・アイヒャーが選曲した Remembering Tomasz Stanko がプレイリスト投稿されている
多くのブラック・ピープルにとって、根拠地=ホームとは、教会であること。
The Queen Of Soul、アレサ・フランクリンが他界してしまった。アレサのもっともヒットした曲、<Respect>と、同年に同じようにヒットした<ナチュラル・ウーマン>は、アメリカの公民権問題に多大な影響を及ぼした。今回は趣向を変え歴史を紐解いてみた。また、この曲<Respect>の構成の面白さも解説。
「ソウルの女王」というのもよく解ったが、ジャンルを超えたシンガーだと痛感した。私は彼女に比較的近い良い席にいてよく見えたが、私と同じ人間とは思えない程の存在感とオーラがあった。
初来日を果たす稀代のトランぺッター/インプロヴァイザー、ピーター・エヴァンスの豊かな音楽性を理解する手助けとして、彼のディスコグラフィーから参加ミュージシャンや内容などを考慮して計15枚を取り上げたカタログミニレビュー。
シャーメイン・リー『Ggggg』は、型破りなノイズの探求であり、聴き手に音楽とノイズとの境界について検討を促すとともに、周辺の普通の音が持つエネルギーにも気付かせる。
レンピス/ピート/デイジー『Throw Tomatoes』では、高速の動きと、三者の拮抗とが次々に展開される。三者は独自のスタイルを持って即興音楽を形成している。ある者が他の者に応答し、旋律、リズム、音色の変化が音楽となってゆく。
1960年、27歳のクインシー・ジョーンズは自己のバンドを率いて、ヨーロピアン・ツアーを行っている。この時、彼とバンドメンバーがユニフォームとして着用していたセーター・ルックが当時、如何に画期的なものであったか、この奥の深いテーマを探ってみた。
山田唯雄の素晴らしい点は、何と言っても、芯のある美しい音。その美しい音をダイレクトに捉えた録音の良さも特筆すべきだろう。
彼らは何も声高に「これが俺のジャズだ」とは主張しなかった。彼らの存在自体がジャズの現在形だった。彼らはことさらにフリーであることを主張しなかった。
ALM盤とは違った側面を見せる今回のアルバムは、今後ALM盤と対をなすアルバムとして後世の記憶に残って行くのではないだろうか。
NY在住のヴォーカルインプロヴァイザー、コンポーザーの北村京子がリーダーを務めるカルテット「Tidepool Fauna」のデビューアルバム。言葉を排した北村の「声」を起点に、モノクロームの夢境を彷徨うような玄妙な美しさが作品全体を透徹する。
そして、あたかも荒野の向こうから座頭市がのそのそと歩いて来るような、映像を想起させる演奏。いきなり、抜き身を構えた連中が襲って来る。しかし、十秒もかからず、皆倒されてしまう。
一聴、その音楽に驚嘆し、多様式主義だのポストモダンだのと言葉を探したり、ゲーム、アニメの音効を思い出したり、落ち着いた顔で内心慌てている。
まさに久しぶりに聴く大野えりのヴォーカルに満喫した一夜であった(なお、この夜のライヴはプロデューサーの三田晴夫氏の下でライヴ・レコーディングされた。
89歳の「パパ」山木幸三郎 (gt,arr,comp) 以下ニューハードの歴戦のメンバー達も佐藤允彦も素晴らしかったのでどうしても新たな展開を期待してしまう。
ものごとの本質に最短で肉迫する手段の多様さ、その蓄積と人生における醸成。芸術家の格ここに極まれり—フレイレの存在はそれを如実に物語る/ The diverse techniques closing in on the very essence in the shortest time; their accumulation and gradual development in his life. The extreme status of an artist is revealed here – nothing truly shows it more than the presence of Freire.
境界音楽の騎手として、このクァルテットはどこまで疾走し続けるのだろうか。今後も目が離せない/As cutting-edge of transborder music, just how far will this quartette keep ranging? We cannot take our eyes off them.
シンプルな楽器だが、難題を押し付ける難しさを克服した名録音と言える。
さて、録音はワンポイントの真髄を貫いた空間表現で、楽器のオン・オフが音像を構成。自然空間に現れる楽器の色彩に納得。
音像の表し方、楽器のエッジの表現に度肝を抜かれる。
ピアノがピンポイントで奏でている良質サウンドから、突然ノイズの世界が巨大音量でという仕掛け。
良質な録音が、目の前に張り付いた音源の拡大鏡となって、気分が高揚する。
スタジオ録音の持ち味、丁寧なバランスのバックに支えられて、アルトが朗々と鳴る
サウンドスケープと言える表情で、音像のあからさまの押し出しのない演奏空間帯は、ボリュームを上げたくなる。
ピアノの特殊な奏法と筐体の打音に、時に、何の音?と耳が緊張する。