小野健彦の Live after Live #201~#206

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text and photos by Takeo Ono 小野健彦

#201 11月07日(日)
自由が丘・hyphen ハイフン
http://r.goope.jp/hyphen
さがゆきsongbook水の輪:さがゆき(vo/g) ファルコン(g)

穏やかな天候に恵まれた立冬の候。霜月に入り初訪問のライブの現場が続く。
今日の「アフタヌーンコンサート」の現場は、自由が丘・HYPHEN〈ハイフン〉。
東急線・自由が丘駅北口から商店街を彷徨いたどり着いた先のビルの階段をスタッフの方に介助頂きながら地下一階迄降りると、そこには白壁に木製調度を基調とするなんとも落ち着いた暖色系の雰囲気に包まれた空間が広がっていた。
そのステージに登場したのは、このコロナ禍の中嬉しいご縁を頂き、この秋繁くお逢いしているさがゆき氏(VO/G)と本日待望の初対面となったファルコン氏(G)のDUO。このおふたり、なんと今日が初共演とのことで、開幕前から静かな緊張感が店内を支配しているのがわかる。今日の事前告知タイトルは、さがゆきsongbook水の輪。
果たして、開演早々我々は、この卓越した色彩空間感覚を持つ表現者おふたりの奥行きと間口の広い音創りの交歓にぐっと惹き込まれて行くことになる。
互いに互いの息遣いをゆったりと感じつつ、その呼吸のダイナミクスレンジを慎重に推し測りながら、次第に互いの領地に鮮やかに切り込んで行く展開にこちら聴き人は度々息をのむ瞬間が訪れる。そうしたふたりの関係性がゆっくり会場全体を満たして行くが、それはあたかも湖水への一滴により生まれた水紋に似て、思わず本日のタイトルとの符号を想起してしまった。共に至極丁寧な音運びは何とも好感の持てるものであり、互いを穏やかに刺激し合うことで互いが一層際立ち、瞬時に理解し合えたふたりの目指す生きた音達が明確な輪郭をもって我々の眼前に立ち上がって来る。片時もダレることなく、終始心地の良い緊張感を持続させた2時間を経てふたりが結んだ音像は、儚さと背中合わせの懐かしさ溢るる甘酸っぱさと凛とした瑞々しさを湛えた浪漫とでも言える揺蕩いの地平だった。唯、ふたりの遊ぶ湖の透明度は余りに高く、時に一条の光射し湖底を悠々と泳ぎ行く深海魚?の蠢く姿も見てとれて、その怪しさとどこか危険な香りを内在するサウンドが、この時を飛び切り刺激的なものとして感じさせてくれた点を書き忘れてはなるまいだろう。


#202 11月12日(金)

下北沢・アレイホール
http://alleyhall.music.coocan.jp/hall/
「邦楽サロン」:塩原庭村(長唄)張理香(伽耶琴カヤグム)

今宵は、邦楽演奏家・塩原庭村氏がマンスリーにて開催されている「邦楽サロン」に韓国伝統音楽の撥弦楽器・伽耶琴(カヤグム)の名手・張理香氏がゲスト出演されるとの報に触れ、下北沢・アレイホールにやって来た。
いつもはひとり旅のLALであるが、今日は、過日、他所にて今宵の話題になり、同行を快諾頂いたピアニスト・小太刀のばら氏がご一緒というのもなんとも嬉しいところ。
最早、再開発が進み、昔の勘の全く効かなくなった下北沢の雑踏に鉄筋コンクリート打ち放しの瀟洒な景観を誇るアレイビルはあった。エレベーターで3F迄あがると、これまた如何にもスッキリとした味わいの、寸法も程よいホールスペースが我々を迎え入れてくれた。
さて、話を前に進めよう。
定刻の18時丁度に庭村さんがひとり現れ定位置に座す。「今日は理香さんの演奏をじっくりと聴いて欲しい」との座主としての思惑からか、自らの唄いは約15分とやや控えめ。それでも、長きに亘る修練に裏打ちされた技巧を余すことなく発揮して、所々で仄かな物悲しさをも湛えたその表現はおおいに聴き応えのあるもので、簡潔明瞭なオープナーとして、場を鎮める配慮が十分に行き届いたものであったと言える。その後、阿波茶ときな粉菓子が振る舞われた簡単なティーブレイクの後、いよいよ理香さんの登場となった。
思い返せば、私が理香さんとの得難い御縁を頂いたのは、’19/11の庭村さんの勉強会・「三七郎(庭村さんの旧名)の会」。以来同’19’20と連続してこの時期に理香さんの自主公演「韓絃楽・滅紫月」にも伺って来ただけに、最早この時期に理香さんの演奏に触れないと年の瀬を迎えられないといった気分にもなっているのも偽らざるところ。その「滅紫月」公演では、伽耶琴と玄琴(コムンゴ)が披露されたが、今宵は伽耶琴に絞り、韓国伝統音楽を代表する器楽独奏曲〈散調〉が届けられることに。
今宵は通常であれば、長さ約50分程迄に及ぶ様々に紆余曲折を経る構造を持つこの大曲を、当夜は凡そその半分に簡潔にまとめ上げる構成が採られることとなったが、それでも、この卓越した表現者の、大曲全体を常に視野に入れつつ、刹那に賭ける「凄み」を十二分に味わうことが出来た。時々刻々と変化する場面では様々に拮抗する境地が次々と出現した。それは伝統と革新、緩と急、密と粗、そうして気品と野趣味、とでもいったところだったか。そうした極めてデリケートな場面場面をひとつひとつ丁寧に紡ぎながらそこに自らの主張を明確に提示する大胆な手際と作法の前では、最早演奏時間の短さなど忘れてしまう程であった。
演奏中、客席から拝見していると、今日初めて感じたことであるが、理香さんはずっと息を詰められているようだった。呼吸さへ置き去りにしてありったけの気を12絃に乗っけているかとみまごうばかりのとてつもなく気概のある姿が胸に迫り来た。これでまた、佳き歳の瀬が迎えられそうだと強く感じさせられたひとときであった。


#203 11月13日(土)

西荻窪・アケタの店
http://www.aketa.org/
今泉裕 (hmca/perc)藤澤由二(p) 山崎弘一(b) 藤の木みか(perc)上村勝正(カバキーニョ)有明のぶ子 (vib)

前夜の下北沢ライブの後、一度湘南の自宅まで帰り翌日また都心へと出直すのは如何にも非効率的と思い国分寺の叔母宅に一泊して臨んだ今日のライブの現場は、西荻窪アケタの店。
今宵のステージには、これまでなかなかタイミング合わずでご縁を頂けなかった待望の今泉裕氏(hmca/perc)のグループが登場した。その磐石のメンバーは、藤澤由二氏(P)山崎弘一氏(B)藤の木みか氏(perc)上村勝正氏(カバキーニョ)の面々に加えてレギャラーの楠本卓司氏(DS)が今日はお休みのため、有明のぶ子氏(vib)がゲストで加わるという賑々しくもおおいに期待のそそられる編成。
冒頭、バンマスの「今日も心を込めて演奏します」のMCで開始されたステージはサンバやショーロなどのブラジル物を中心に軽快に進行して行くが、そのいずれもがバンマスのお人柄を反映して、如何にも実直で良心的な肌触りを纏って供されるのが大層心地良い。しかし、引き締まったサウンドを繰り出すリズム隊を得、かつ曲始まりにバンドへテンポを指定する際のバンマスのユーモアたっぷりの身振り手振りのダンス?とも相まってそこには所謂お行儀の良さだけに止まらない遊び心が随所に垣間見えて来るのがこのバンドの真骨頂と見た。そのキラキラ光る原石とでもいえる遊び心のスパイスがそこここに散りばめられたサウンドにドップリと身を委ねていると、晩秋の宵、都会の片隅の地階には予想だにしなかったような陽の光が燦燦と降り注ぎ爽やかな涼風が頬を撫でて行くような錯覚にしばしば陥いることに。徒に陽気過ぎることのない、抑制の効いた「横揺れの愉楽」に満ちたそんな稀有なバンドサウンドとの充実のファーストコンタクトだった。
そう言えば、前日11/12は暦の上では最上吉日とされる「天赦日(てんしゃにち)」。どうやら今週末のLALはそんな塩梅のひとときの連続になるようだ。時短営業も終了し、23時近く終わりの西荻窪から湘南に帰るのは億劫にて、今宵も引き続き国分寺の叔母宅泊。さて、明日はどんな風が吹くのだろうか。


#204 11月14日(日)

横浜・白楽・Bitches Brew
http://bitchesbrew.web.fc2.com/cafebar.html
仲野麻紀(as, metal cl) 野口’UFO’義徳 (ジェンベ)

緊急事態宣言も解け、加速するLAL。
先週金曜日から続いた3日目の日曜日昼ライブの現場は、横浜・白楽・Bitches Brew。
今日は、仲野麻紀氏(AS/メタルクラリネット)の同所での2DAYS公演の2日目。
前日の星衞氏(チェロ/篠笛)に続いて昨日は、名古屋から参戦の野口 ‘UFO’ 義徳氏(ジャンベ)との初共演であり、現在は巴里在で後述の様にマルチ過ぎる才能を持つ逸材である麻紀さんの長期日本滞在の時機を捉えた好企画と言えた。
その麻紀さんの多面体の活動の一端を列挙すると、E.サティの楽曲を採り入れた演奏を行うユニットKy〈キィ〉での活動の傍ら、音楽レーベル、コンサートの企画・招聘を行う〈openmusic〉を主宰しつつ、北阿モロッコ、西阿ブルキナファソ等の伝統音楽家達との交流を体験し(その道程を綴った著作『旅する音楽』は、「第4回鉄犬ヘテロトピア文学賞」を受賞)更に今月からはFMラジオのパーソナリティも務めるという、まさに世界の時空を股にかけた八面六臂の活躍振りをみせている。
対するジャンベ奏者のUFOさん、「苦手なMCの代わりに」と前置きした後の解説によれば、このジャンベという楽器、アフリカ起源の太鼓で心材をくり抜いた胴に山羊革を張ったものだという。そのUFOさん、名古屋市天白区にある、その名も「african percussion nagoya」の代表であるとともに、各所コミュニティにおけるジャンベ指導者で、更には名古屋近郊のみならず上京しての旺盛な活動を行なう精力的な表現者でもあり、その実、年に数回は西阿マリを訪れ、村落の数だけあると言われる多種多様なリズムパターンを現地のマスターから直に学ぶことに粉骨する求道者の一面をあわせ持つなかなか魅力的な人物。
さて、前置きが随分と長くなってしまった。肝心の音、である。
定刻15時から少し押し気味にスタートし、前後半に分かれたステージでは、両セット共に、各々のソロショーケース(1st:麻紀さん、2nd:UFOさん)の後、御両人揃い踏みのバトルが繰り広げられたが、ソロパートを配置したことで、自らの音楽性のエッセンスを落ち着いたペースで雄弁に語ってくれる余裕のある時間が生まれ、それは聴き人にとっても眼前の表現者達の音楽的資質を受け入れる導入部として間尺の程良い構成だったと思う。それでも、やはりこの日の最大のクライマックス的聴き所は、この卓越した表現者同士の掛け合いのひとときであった。
所々でルーパーエフェクターを駆使して、自らの影武者を創ることで音像に奥行きを生み出しながら、捻りのあるメロディの軌跡を描いた麻紀さんに対して、極く素直で迷いのない直線・鋭角的かつ激烈なリズムを繰り出し続けるUFOさんの鮮烈なまでに渾然一体となったその両者の在り様に触れていると、所謂楽典に照らせば笑われてしまうこと必至の表現ではあろうが、メロディとリズムは共に互いの外に在るのではなく、まさに互いの内に在るものだ、などと感じ入ってしまった。
熾烈なぶつかり合いの中にあってもその所々に透かし出され見え隠れするおふたりのどこか冷めた目付きとでもいうものが、その音の連なりを単なる熱狂に終わらせることなく極めて落ち着いたものにしていたことが私にはなんとも心地良かった。
メロディとリズムの境界線を軽々と往き来しながらアフリカ〜ユーラシアの悠久の大地の鼓動が、小気味の良い小股の切れ上った姿で立ち現れた、そんな時間の流れだった。

#205 11月19日(金)
町田 Jazz Coffee & Whisky Nica’s
http://nicas.html.xdomain.jp/
高橋知己(ts) 浜田均(vib) 伊東佑季(b) 三科律子(ds)

今日のライブの現場は町田・ニカズ。
高橋知己氏(TS)の新譜『Work』発売記念ということで、レコーディング・メンバーの浜田均氏(Vib)伊東佑季氏(B)〈私はお初〉三科律子氏(DS)が勢揃いしてのニューカルテットでのひととき。昨年古希を迎え、今年に入り意欲的なアルバム『Seven』『Work』を相次いでリリース、更には前週迄8日間休み無しの西方への旅をこなすなど目下乗りに乗っている知己さん。実はその知己さんと浜田さん・ニカズマスター元岡さんとは函館ラ・ラサール高校出身の同窓生。そうしたご縁で結ばれた3人がさして広くない店内に集うとそれだけで和気藹々とした雰囲気が漂う中での幕開けとなった。
ステージは、新譜からの楽曲(知己さん、浜均さんオリジナル等)を中心に進められたが、1stステージでは、知己さんの盟友・津村和彦氏(G)に捧げたバラードの絶品〈Beyond〉も飛び出し、思わず息を呑んでしまう。全体のステージを通して印象的なテーマ部を持つ躍動感のあるアレンジの施された楽曲が多く供されだが、そこでは、リズム隊の女子達の如何にも瑞々しい感性に支配されたフレッシュな感覚のアプローチに触発されて、おじさん(失敬!)ふたりも弾けに弾けた。浜均さんは固い打点で色彩感溢れる印象的なハーモニーを叩き出し、知己さんはいつにもまして熱いブローを繰り広げて行った。各人がこのバンドに在ることでその個性が十分に活かされて、奔流と緩流が巧みに同居する鮮やかなコントラストを生み出した曲選択の構成も申し分なかった。世代差と性差を超えてジャズという言語で結ばれし者共の強みとでも言うものが遺憾なく発揮された胸のすくような快演の連続。本編最終曲は、知己さんと清水くるみさんの共演盤の標題にもなっている〈Reconfirmation〉をテンポを上げて。これには元岡さんも居ても立ってもいられなくなったと見え、ピアノに駆け寄る一幕も。(そのままアンコールのGのブルースもシットイン)。
しかし、ほんのり苦味走っていながらスッキリとしたキレとコクのある味わいに満ち溢れた痛快な音が溢れた夜だった。

#206 11月21日(日)
池袋・東京芸術劇場
https://www.geigeki.jp/
讀賣日本交響楽団第242回日曜マチネーシリーズ  山下洋輔 (p)

今日のライブは、讀賣日本交響楽団第242回日曜マチネーシリーズ@池袋・東京芸術劇場。
本日の全体メニューは、ブラームスの大曲・交響曲第四番「ロマンティック」(約65分:以下各演奏時間はプログラム情報より)を含む全三曲であったが、私のお目当ては、山下洋輔氏(P)をソリストに迎えたG.ガーシュインの〈ラプソディ・イン・ブルー〉(約16分)。
実は私は、‘16/11に小田原フィルハーモニー交響楽団と山下さんの同曲での共演に触れたことがあるが、この時は、かの有名な冒頭のクラリネットのグリッサンドがヒットしなかったからという訳ではなかろうが、オケは終始生彩を欠き、山下さんの奮闘振りもその多くの場面で肩透かしをくらった感が否めなかっこともあり再聴の機会を長く狙っていた。
そんな中、今日は新進気鋭の指揮者・作曲家であり鍵盤奏者としてはバッハ・コレギウム・ジャパンのチェンバリスト/オルガニストでもある鈴木優人氏〈私はお初〉(山下氏とは、麻布学園の先輩後輩にあたり、鈴木氏が創った学園OBオケで同曲を度々共演してきた仲だという)が、(近年海外からの大物指揮者の招聘により鍛えられその総合力に益々磨きをかけている)讀響を振って共演するとあって、私の期待値は開演前からMAX値に達した。それは、ほぼ満場(主催者に確認すると定員2.000席に対し入場者数約1.500名)の聴き人の皆さんも同様だったのではないかと思う。
定刻キッカリに、黒のラフな上下に身を包んだ鈴木氏が登場、弦主席陣達とグータッチし指揮台へ。まず冒頭に配置されたR.アルフテルの〈祝典序曲〉(約7分)では、オケの各パートが流麗清楚な響きを発散して、その後に対する予感を増長させてくれる適切なオープナーとしての重責を見事に担った。演奏が終わると鈴木氏は直ぐに舞台下手に下がるが、程なくしてその鈴木氏を伴い、こちらは定番の白の上下にベスト姿の山下さんが現れると、かなり盛大な拍手が沸き起こる。
それからは、本日の宣伝口上ではないが、「クラシック界の気鋭とジャズ界の巨匠が夢の共演..,そして新たな伝説になる」に相応しい、まさしく稀代の表現者による幸福なマリアージュが実現した。
(昔何かの本で読んだ記憶によれば)ガーシュインは作曲に際して、NYCからボストンへの汽車の中、リズミカルな機械音に刺激されて、一気にその曲想を練り上げたというが、オケの様々なパートが大都会の猥雑と喧騒、郊外田園地帯の安穏等を想起させる様々な曲想の変化の中でフィーチャーされる構造に在って、マエストロはそのひとつひとつのパートを固まりとして丁寧に創り込み際立たせながら、やがてそれらのパート同士を鮮やかに繋ぎ合わせて行くことでオケ全体の総合力を巧みに引き出しながらその音の連なりにしなやかな推進力と説得力のある立体感を生み出すことに成功していたと言える。対する山下さんも常に予断の許さない爆発を予感させながらも、ゴツゴツザクザクとした肌触りを纏いつつその表現は端正を極めた。伝家の宝刀の「肘打ち」も(今日の私の席は3Fだったため、ステージまでかなりの距離があり目視には限界があったが)第四コーナーのカデンツァ部の最初と最後の早目のパッセージの途中でさらりと繰り出しただけだったように思う。しかし、曲全体を通して、やはり、そこには圧倒的に山下洋輔氏が居て、圧倒的にジャズがあった、と思う。
個人的には、「シンフォニック・ジャズ」という表現は好みではなく、敢えていうならば、「ジャズ・コンチェルト」とでも言わせてもらおうか。
まあ、それはそうとしても、久しぶりに山下さんの気品のあるピアノプレイを十二分に堪能できた絶好のT POだった。加えて、プログラムを見ていて、鈴木氏が1981年の生まれで自分からは丁度一回り下の歳まわりであることを知り、今後とも同時代でこの卓越した表現者の進化の道程にお付き合い出来るとわかり嬉しい心持ちになったことも付しておきたい。
本稿の最後に、本日の思いがけないドラマティックな場面を書き忘れてはなるまい。ガーシュインが終わり、場内からは事前の禁止アナウンスにもかかわらず、多くの「ブラボー」の声があがると共に、惜しみない万雷の拍手が送られた。一度、二度とカーテンコールが続いたが、三度目のカーテンコールが終わった時、鈴木氏がすっとオケの中にさがり、誘った右手に応えて、山下さんが再度ピアノに歩み寄り椅子に腰をおろす。さあ、何を弾くんだ?
流れて来たのはこの季節には相応しい〈Autumn Leaves〉だった!そうして、緩やかにテンポをあげながら、それはいつしか、〈It Don’t Mean A Thing If It Ain’t Got That Swing〉へと変容した。
やはり、千両役者はやることが違う!私自身も初めての途中アンコールの出来栄えに正直腰が抜ける思いだった。それ程迄に絶品のジャズを聴かせて貰った。

小野 健彦

小野健彦(Takehiko Ono) 1969年生まれ、出生直後から川崎で育つ。1992年、大阪に本社を置く某電器メーカーに就職。2012年、インドネシア・ジャカルタへ海外赴任1年後に現地にて脳梗塞を発症。後遺症による左半身片麻痺状態ながら勤務の合間にジャズ・ライヴ通いを続ける。。

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