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No. 228R.I.P. ミシャ・メンゲルベルク

ミシャ・メンゲルベルク追悼コンサート

text by Atsuko Kohashi 小橋敦子

2017年3月25日(土)14:30 –
at Bumhuis in Amsterdam, Nederlands

Concert for Misha Mengelberg by  ICP Orchestra, Benjamin Herman, Nora Mulder and many others –  in memory of Misha

 

 
 

「ジャズピアニスト、ミシャ・メンゲルベルク(81才):自嘲的アバンガルディスト(前衛芸術家)。ミシャ・メンゲルベルク(1935~2017)は、実にヘタクソなピアノ弾きだった―こんなふうにメンゲルベルクは自称していたが、インプロジャズで彼はニュー・ダッチ・スウィングの主導者として貢献した。・・・・・・」(3月3日オランダ 紙NRCの記事より)

「オランダ人ピアニスト、作曲科、即興演奏家のミシャ・メンゲルベルクが81才の生涯を閉じた。晩年、アルツハイマーが進行し言語表現が困難になると、彼は訪ねてきた友人との談話中に時々歌ったり口笛を吹いたりしていたらしい。だが、メンゲルベルク氏にとっては、こんな会話の仕方も他の人に比べればおそらくそれほど不具合はなかったろう。50年以上もの歳月を捧げてきた彼の音楽は、気まぐれで、脈絡のない、人を惑わすようなユーモアを発するこの即興的な会話によく似ていた。」(3月8日英国紙Guardianの追悼記事の冒頭)

「オランダの偉大なるピアニスト、バンドリーダー、コメディアン、チェインスモーカーのミシャ・メンゲルベルク逝く」(3月5日Free Jazz Collective)

こんなメディアの追悼記事に続いて、アムステルダムの音楽施設Bimhuis(ビムハウス)とInstant Composer Pool(ICP)はミシャのためのコンサートを開くと知らせた。チケットはすぐに完売となった。

Memorial concert for Misha Mengelberg:
March 25 (Saturday) 14:30   at Bumhuis in Amsterdam
By ICP Orchestra, Benjamin Herman, Nora Mulder and many others – in memory of Misha

(Bimhuis(ビムハウス)はミシャのホームグラウンド。この音楽施設はミシャを中心にミュージシャンらが自ら立ち上がって「即興音楽」を演奏する場所を確保するためにアムステルダム市と直接交渉、1974年に市のサポートを得て獲得した音楽施設。BIMHUISの名称は、BIM 「即興音楽家のプロ集団」の略語+HUIS「家」 という意味。ICPとの絆も深い。当初はレッドライト地区付近にあったのが2005年に中央駅北側IJ湾に面した新しい場所に移転した。)

ミシャはジャズという即興音楽にオランダのアイデンティティーを盛り込んだ人。
リベラルで寛容、そして時に自嘲的。
ユーモアと皮肉。
気取らない、気負わない。
仲間意識、職人気質。

ICPはミシャなしで続行する―アルツハイマーが進行していると悟った時、ミシャはそう決めた。自分が身を引く用意はいつもできていた。「ICPにオレのピアノはなくても大したことじゃない」。

追悼コンサートはICPの美しい不協和音と共に、温かく、心地よく、愉快だった。

最後はミシャの曲「Zing Zang Zaterdag」

zing zang zaterdag   土曜日に歌を歌おう
zing zang zondag ook   日曜日にも歌を歌おう
zing zang maandag dinsdag woensdag   月曜日、火曜日、水曜日
donderdag   木曜日に歌を歌おう

zing zang donderdag   木曜日に歌を歌おう
vrij-dag eveneens   金曜日にもね
zing zang zaterdag   土曜日に歌を歌おう
en zondag samenzang   そして日曜日にも同じ歌を

maar op maandag heb ik hoofpijn   でも月曜日、僕は頭が痛い
wel van elf uur aan een stuk   11時間もの間ずーっと
tot de klokke slaat van eenen   時計が1時を打つまで

ミシャのスピリットが溢れた会場に、笑いと歌声が響いた。

*このコンサートでは晩年のミシャの登場する2つのビデオが公開された。1つはICPのオフィシャルビデオでICPのユーモアとウイット溢れる映像、もう1つのMisha enzovooer 「ミシャとその他いろいろ」と題されたドキュメンタリー・ビデオ。後者はアルツハイマーを患った音楽家ミシャの記憶が次第に失われていく様が淡々と映し出されオランダで話題を呼んだ。最期のシーン、彼の口笛が胸を打つ。

そのビデオをここに紹介したい。

ICP Official music video:

Misha enzovoort / nederlandse trailer:

小橋敦子

小橋敦子 Atsuko Kohashi 慶大卒。ジャズ・ピアニスト。翻訳家。エッセイスト。在アムステルダム。 最新作は『Crescent』(Jazz in Motion records)。 http://www.atzkokohashi.com/

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