#09 『ボボ・ステンソン・トリオ』
text by Rin Okazaki 岡崎 凛
『BOBO STENSON TRIO / Contra la Indecisión』(ECM2582, 2018)
Bobo Stenson — piano
Anders Jormin — bass
Jon Fält — drums
2018年がスタートするとほぼ同時にこのアルバムを耳にした。スピーカーから流れ出すパーカッションの音を聴いて、これほど衝撃を受けたことはなかった。気味の悪い言い方だが、まるで生命体の一部に触れたかのような感触があった。驚くほど不思議なタイミングで鳴り響くドラムやシンバルは、やがて統一感あるサウンドに変わっていく。録音するといと言うより、まるでカメラで撮影しているような、視覚にも訴える不思議な音に出会えた。録音エンジニアはステファノ・アメリオ。特に録音技術に詳しくない自分でさえ、彼の名前は覚えている。
ボボ・ステンソンを初めて聴いたのは1976年頃だったので、何十年も聴き続けているピアニストである。一時期はそれほど執着することがなく、あまり追ってなかったのだが、気がついたら彼はアンダーシュ・ヤーミーン(ヤーミン、ヨルミンとも表記される)という、とてつもないベーシストとのトリオで次々と傑作を生んでいた。トリオのドラマー(パーカッショニスト)がヨン・フェルトに替わって、このトリオにはますます磨きがかかってきたようだ。
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このアルバムについては、今年の7月にUntitled Medleyさんのサイトの「音楽ファンが選ぶ2018年のジャズ・アルバム 12選【パート1】に紹介文を載せて頂きました。
https://untitledmedley.com/2018/07/04/2018-best-jazz-1/
「重厚さと素朴さのバランスが素晴らしく、トリオの繰り出す豊かな音に圧倒されるが、彼らはただアートの極限を目指すだけではなく、ノスタルジックで穏やかな世界も楽しませてくれる」と始まる紹介文で、よろしければこちらもお読みください。
また、関西発のジャズ情報フリーペーパー、WAY OUT WEST誌1月号でも、このアルバムを年間ベストアルバムに選びました。