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R.I.P. リー・コニッツNo. 265

Grateful-lee 〜真のインプロバイザーを悼んで〜 by 中山拓海

Text by Takumi Nakayama 中山拓海
Photo by Takehiko Tak. Tokiwa 常盤武彦

僕らくらいの若い世代は、言ってみればモダンジャズ第一世代を生で聴ける最後の世代なのだと思います。リー・コニッツ氏が亡くなった事により、そのことを強く意識させられました。

僕にとってコニッツさんとの出会いは高校生の時でした。ビバップより先にトリスターノ派の音楽に熱中しました。エキゾチックでメロディアスで、何よりコニッツさんの音色が大好きで。その時代のプレーヤーがまだ生きているのが本当に嬉しかったのを覚えています。

彼の音楽はトリスターノの影響からハーモニー的な解釈が広がり、歳を重ねるごとにメロディーに軸をおいた取り組み方になっていったと思います。晩年よくスキャットをしていたのも、そのためでしょう。サックスという楽器での表現において大いに頼りたくなる、甘さ (Sweet) や感傷的な雰囲気を避け、ひたすらインプロバイズし続けていました。アタックから正確なピッチを求め、クラシカルな要素を孕みつつサブトーンを織り混ぜたそのトーンは、正にサックスの美しさの結晶と言えるでしょう。

2017年の東京ジャズの映像をみて驚いたことがありました。Boplicity の演奏をした際、なんと全て半音上の運指で吹いているではありませんか...。借り物の楽器で合わせ辛かったのか、半音下でチューニングして半音上の運指で演奏していたということです。聞けば、この来日時の別の演奏では代表曲サブコンシャスリーを半音下で演奏していたということです。恐らく相当な相対音感だったのではないでしょうか。これも「歌」だから成り立つことの一つだと思います。

亡くなってから1週間経って尚、喪失感が大きく、まだまだコニッツさんの演奏を聴ける気がしてしまっています。今とにかく思うのはコニッツさんと世代は大きく違ったものの、同じ時代に生まれて、追いかけて、生で聴けて幸せだったということです。本当に美しい音楽をありがとうございました。

 


中山 拓海 Takumi Nakayama: alto sax
1992年静岡県富士市に生まれる。国立音楽大学を首席で卒業。大学時代、早稲田大学ハイソサエティ・オーケストラに在籍し山野ビッグバンド・ジャズ・コンテスト最優秀賞を2年連続受賞、並びに最優秀ソリスト賞受賞。ロサンゼルスで開催されたグラミー主催、”グラミーキャンプ”に日本代表として全額スカラシップを受け参加。多国籍ジャズ・オーケストラAsian Youth Jazz Orchestraにてコンサートマスターを務め、アジア六カ国でツアーを行う。アゼルバイジャン共和国で開催されたバクージャズフェスティバルに自身のバンドで出演など国外にも活動の幅を広げる。2017年ジャズ雑誌”JAZZ JAPAN”の”2010年代に頭角を現した新鋭アーティスト60″に選出される。2019年4月、渡辺貞夫クインテット2days新宿ピットイン公演に渡辺貞夫氏 本人によりゲストとして呼ばれ参加。同年12月CD『たくみの悪巧み』でキングインターナショナルよりメジャーデビュー。ジャズ国内アーティストとしてキングインターナショナルからのリリースは史上初となる。学習院大学スカイサウンズオーケストラ講師。CJC (California Jazz Conservatory) JAPAN アシスタントデイレクター。

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