JazzTokyo

Jazz and Far Beyond

閲覧回数 55,291 回

R.I.P. チック・コリアNo. 275

フルートとジャズを繋いだチック・コリア by flutist 太田朱美

オーディオに精通した父親の影響もあって、私は子供の頃からさまざまな音楽に触れる機会を持つことができました。ピアノは習っていましたが、中学生のときに吹奏楽部に入部して、初めてフルートを手にし、広島大学ではジャズ研究会に所属しました。

そして、ここでジョー・ファレルのフルートに出会って強い衝撃を受け、本格的にジャズに傾倒し始めました。これ以降、ジョー・ファレルの演奏するフルートにはものすごく影響を受けました。チック・コリアのグループ「Return To Forever」に参加していたジョー・ファレルは、私がものごごろついた頃には既にこの世を去っており、私がジャズを知った時には「伝説の人」でした。

しかし、チック・コリアのサウンドを聴くだけで、何故かフルートの音が聴こえてくるような気がする。もうこの世にいないはずのフルート・プレイヤーの気配が感じられる。...言い過ぎかな?でもそれくらい、チック・コリアとフルートという楽器はとても親密な関係だったのだと思います。

チック・コリアとジョー・ファレルの共演で、私の中に強烈な印象を残した作品は、「Friends」です。ジャケットはとってもかわいいし、フェンダー・ローズとフルートという、一見ポップなサウンドかと思いきや、いざ足を踏み入れると、視界がぐにゃりと歪む感じ。なにこれかっこいい!やりたい!まさにこのサウンドがきっかけで、私はフルートを手に、ジャズの世界に引きずり込まれたと言っても過言ではありません。世界中に、多くの、同じ経験をしたフルーティストが居ると思います。

チック・コリアは、様々なフルート奏者との共演を残していますが、どれもとても素晴らしいものです。彼が遺してくれた沢山のものの中の一つに、間違いなく、ジャズというジャンルとフルートという楽器をしっかりと繋げてくれた、という大きな功績があるでしょう。

偉大なる音楽家。ご冥福を、心からお祈りいたします。

Chick Corea Return to Forever at Molde Jazz Festival 1972
Chick Corea (keyboards), Joe Farrell (flute, sax), Stanley Clarke (bass)
Airto Moreira (drums, percussions), Bill Tragesser (vocal, percussions)


太田朱美 Akemi Ohta – Flutist, Composer
鳥取県米子市出身。オーディオ機器に精通する父親の影響もあり、さまざまな音楽に触れる機会を持つ。中学より吹奏楽部に入部し、初めてフルートを手にする。広島大学に進学後は、ジャズ研究会に所属し、ジョー・ファレルのフルートに衝撃を受け、本格的にジャズに傾倒し始める。在学中は自らの専門である蘚苔類を研究する傍ら、広島市内のライブハウスで演奏活動を展開。そのころ広島を訪れるさまざまなジャズメンにそのセンスと力強さを買われ、大学卒業後に東京に演奏の舞台を移し、自らの世界を広げることを決心する。 自己のバンドRisk Factorでは、2008年1月23日、ファーストアルバム『Risk Factor』を、 2012年2月にセカンドアルバム『私を動物園につれてって』を発売。様々なグループに参加して、ジャンルを超えた活動も活発に行っている。
洗足学園音楽大学ジャズコース非常勤講師。公式ウェブサイト

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください