包容力、柔軟性、共振 by 内橋和久
text by Kazuhisa Uchihashi 内橋和久
僕は高校生の頃からECMのファンで、当時は片っ端からいろんなものを聞いていた。そんな中でジョン・アバークロンビー、パット・メセニー、テリエ・リピダル等の自分の好きなギタリストと共演が多いジャック・デジョネットを必然的によく聞くようになる。
もちろんマイルスのバンドで彼の名は知っていたけど、僕にとって ECMの数多くの名盤には高い確率で彼がいた。彼は僕にとってはドラマーというよりは音楽家っていう認識で、常に謙虚で驕りの無い、そして大らかで誠実なプレイをする人、と言う印象だった。彼のシャープなドラミングからは、いつもその鋭さよりも暖かさをより強く感じたし、卓越したテクニックを持ちながら、技術よりも音楽全体を包み込み、響かせるような彼の演奏が好きだった。
彼がピアニストでもあることも重要な要素だったのかもしれないけど、彼自身の音楽対する向き合い方がそうさせるのだと僕は思う。以前フランクフルト・ジャズ・フェスティバルに出演した時に、前夜の彼のロスコー・ミッチェルとのセットは、ミッチェルのシンプルで力強い歌を包み込むような演奏でとても感動した。翌朝ホテルの朝食に来ていた彼に挨拶をした時もとてもにこやかに接してくれた。
掛け替えのない音楽家を失ったことは残念だけど、それよりも彼が生きていたことへの感謝の方がより大きい。素晴らしい音楽をありがとうございました。
Cover Image: 『John Abercrombie / Timeless』(ECM1047)
内橋和久 うちはしかずひさ
ギタリスト、ダクソフォン奏者。インプロヴィゼーショントリオ/アルタードステイツ主宰。 劇団・維新派の舞台音楽監督を30年以上にわたり務める。音楽家同士の交流、切磋琢磨を促す「場」を積極的に作り出し、95年から即興ワークショップを神戸で開始する。その発展形の音楽祭、フェスティヴァル・ビヨンド・イノセンスを96年より毎年開催2007年まで続ける。これらの活動と併行して歌に積極的に取り組み、UA、細野晴臣、くるり、七尾旅人、青葉市子、Salyuらとも積極的に活動。即興音楽家とポップミュージシャンの交流の必要性を説く。また、2002年から2007年までNPOビヨン ド・イノセンスを立ち上げ、大阪でオルタナティヴ・スペース、BRIDGEを運営。現在はベルリン、東京を拠点に活動。インプロヴィゼーション(即興)とコンポジション(楽曲)の境界を消し去っていく。
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