#110『ルイ・アームストロング 生誕120年 没50年に捧ぐ』
text by Kenny Inaoka 稲岡邦彌
書名:ルイ・アームストロング 生誕120年 没50年に捧ぐ
著者:外山喜雄+外山恵子
版元:冬青社
判型:A5判 256p
初版:2021年8月4日
価格:本体 1800円+税10%
カバーに “Satchmo’s Spirit Lives on Forever”、サッチモのスピリットは永遠(とわ)に生き続ける、とある。今年は、サッチモの愛称で知られるルイ・アームストロングの生誕120年、没50年という大きなアニバーサリー・イヤーで、周年に際していろいろなCDやDVD、書物が刊行され、記念イベントも予定されている。去年がバード(チャーリー・パーカー)の生誕100年だったことを考えると、サッチモがバードより20年近く前に生まれている事実が信じ難いのだが、それだけサッチモが長生きし、さまざまな形で身近に接する機会が多いということなのだろう。まさに、“サッチモの精神は不滅”なのだ。
この著書は、サッチモの生誕日、8月4日に刊行された外山喜雄・惠子夫妻の3冊目の共著である。外山ご夫妻のキャリアについては先月号のインタヴューでご自身から詳しく語られているが、”サッチモの音楽とスピリットの伝道者”として半世紀以上を献身されてきたのだ。伝道するためには正しい知識と情報が必要で、その研究成果がまとめられて一冊の著書となった。いわば、サッチモに関するバイブルとも言える内容で、サッチモに関するすべてが網羅されていると言っても過言ではない。ネット時代を反映して、サッチモに関する映画や動画が リンク付きで紹介されているのも見逃せない。
もうひとつの大きなポイントは “サッチモ・スピリット”を実践した結果としての社会貢献と国際交流だ。ニューオリンズの若者の非行化を防止する「銃に代えて楽器を」、「ハリケーン・カトリーナ」からの復興を手助けするキャンペーン、お返しとしてのニューオリンズ市民による「東北大震災」からの復興キャンペーンなど、いずれも内外の顕彰の対象となったチャリティ活動の数々...。
この著書は、サッチモに関するバイブルであると同時に音楽人としてどう生きるべきかを気付かせてくれる人生のバイブルでもある。
なお、サッチモのジャズ史における立ち位置については本号に掲載の末冨健夫さんのCD紹介『外山喜雄&デキシーセインツ/ビビディ・バビディ・ブー〜デキシー・マッジク、Again』に的確な記述がある。