JazzTokyo

Jazz and Far Beyond

閲覧回数 29,747 回

CD/DVD DisksNo. 271

#2022 『Dafnis Prieto Sextet / Transparency』
『ダフニス・プリート・セクステット/トランスパレンシー』

text by Keiichi Konishi 小西啓一

Dafnison Music

DAFNIS PRIETO SEXTET:

Román Filiú, Alto & Soprano Sax
Alex Norris, Trumpet
Peter Apfelbaum, Tenor Sax, Melodica & Percussion
Alex Brown, Piano
Johannes Weidenmueller, Acoustic & Electric Bass
Dafnis Prieto, Drums & Music Director

1. Amanecer Contigo
2. No Es Fácil
3. Uncerntradition
4. Con Alma
5. Cry With Me
6. On the Way
7. Feed the Lions
8. Nothing or Everything
9. Lazy Blues
All compositions by Dafnis Prieto except Con Alma by Dizzy Gillespie
All arrangements by Dafnis Prieto

Recorded by Mike Marciano of Systems Two Recording Studio on March 9 & 10, 2020 at The Samurai Hotel Recording Studio, Astoria, NY
Mixing & Mastering Engineer: Mike Marciano, Systems Two Recording Studio, Long Island, NY
Assistant Engineer: Max Ross
Mixing: Mike Marciano, Dafnis Prieto & Eric Oberstein
Produced by Dafnis Prieto & Eric Oberstein
Executive Producers: Lindsay Evans, Harsha Murthy


キューバ出身でNYに進出して以降、ミッシェル・カミロやジェーン・バーネットなどのラテン・ジャズの王道ユニットから、ヘンリー・スレッギル、スティーブ・コールマンといった前衛派の闘将バンド迄、実に幅広い活動歴を誇り自身の音楽を深化・進化させてきた、今最注目のドラマー&音楽家、ダフニス・プリート。18年にはオールスター・メンバーを揃えて自身が組織したビッグ・バンド、これにスレッギルらをゲストに迎えた大作『バック・トゥ・ザ・サンセット』(ぼくは18年度の最重要作として推した)を世に問い各方面から高評価を得、自身大いに気を吐いた。その彼が3管によるラージ・ユニット、今一つのジャズ潮流とも言えそうな、ラージ・アンサンブルを売りにした自身のグループによる新作を、自身のレーベル”ダフニソン・ミュージック“から今回発表した。

『トランスパレンシー』=透明性と言った意味合いを持つこの作品、NYの進取性・先鋭性にラテン・ジャズの熱気をプラスさせた、と言うよりも塗したと言う表現の方が適切な趣きの、コンテンポラリー・ジャズ作品とも言えそうだ。ディジー・ガレスピーによるラテン・ジャズの銘品 <コン・アルマ> を除く、残りの8曲は彼自身のオリジナルで、前述のビッグ・バンド作でも見せ付けたその作・編曲能力の高さを披露、特に3管アンサンブルを見事に生かした編曲力に感服する。その好例が <コン・アルマ> で、かなりイケイケで攻めのラテン・ジャズを…と期待したのだが、これが見事に肩透かし。かなり優雅な <コン・アルマ> に変身しており、そのアレンジ力を発揮した曲仕上げ、ここら辺もこの新作の興味深いところだ。また彼自身のドラミングも、天才&狂人とも言えそうなオラシオ・エルネグロをも凌ぐ、手数王としての面目躍如といった感じで、<クライ・ウイズ・ミー> などでも聞かれるように、パワー一辺倒ではないニュアンスに富んだ、凄味と深味を伴った匠技を随所で展開、全体のコンテンポラリー感覚に一層のアクセントを付加している。

ここでのメンバーでは、パキート・デリベラ(sax) のユニットで名前を挙げ、10年には印象的なリーダー作も発表している、ピアノのアレックス・ブラウン、彼が最注目株だが、その他の3管メンバー (特にサックスがグッド) も、それぞれ実力派揃いのようで(ぼくはほとんど知らない面々だが…)、ソロやアンサンブルでハイライトを現出する。現代ジャズの注目作と言える一作。





小西啓一

小西啓一 Keiichi Konishi ジャズ・ライター/ラジオ・プロデューサー。本職はラジオのプロデューサーで、ジャズ番組からドラマ、ドキュメンタリー、スポーツ、経済など幅広く担当、傍らスイング・ジャーナル、ジャズ・ジャパン、ジャズ・ライフ誌などのレビューを長年担当するジャズ・ライターでもある。好きなのはラテン・ジャズ、好きなミュージシャンはアマディート・バルデス、ヘンリー・スレッギル、川嶋哲郎、ベッカ・スティーブンス等々。

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください