JazzTokyo

Jazz and Far Beyond

閲覧回数 28,271 回

CD/DVD DisksNo. 295

#2208 『MAGNOLIA / El viento las flores』
〜柳原由佳、山本玲子、相川 瞳

Text & Photo by Hideo Kanno 神野秀雄

『MAGNOLIA / El viento y las flores』
『マグノリア/風と花』

1. La voz del vient (Yuka Yanagihara)
2. 春、青空 (Yuka Yanagihara)
3. Short Stories No.6 (Reiko Yamamoto)
4. Foggy Forest (Hitomi Aikawa)
5. 舟 (Hitomi Aikawa)
6. Blue Mallet (Yuka Yanagihara)
7. Pause (Hitomi Aikawa)
8. 花影 (Reiko Yamamoto)
9. 古里 (Reiko Yamamoto)
10. Swaying Willows (Reiko Yamamoto)

山本玲子 Reiko Yamamoto – vibraphone
柳原由佳 Yuka Yanagihara – Piano
相川 瞳 Hitomi Aikawa – percussion
Produced by MAGNOLIA
Recorded April 12 & 13 2022 at Studio Dede in Ikebukuro, Tokyo
Recorded, Mixed & Mastered by Akihito Yoshikawa (Studio Dede)
Graphic Design by Magnolia
Cover Photograph & All Photography by Ami Hirabayashi

MGNL-0001 2022年8月31日リリース
購入はこちらから

ヴィブラフォンの山本玲子、ピアノの柳原由佳、パーカッションの相川 瞳が、COVID-19下の2021年に結成したトリオユニットのファーストアルバム。2022年になって「MAGNOLIA(木蓮)」と命名され、4月にStudio Dedeで録音が行われた。アルバムタイトルはスペイン語で「風と花」を意味する。

埼玉出身の山本と、大阪出身の柳原は、ボストン・バークリー音楽大学で同時期に学び、これまで多くの共演の機会を持ってきた。JAZZ TOKYOでは筆者が2018年のベスト国内ライヴとして、これに伊東佑季が加わった「te-te-Yuka」を挙げている。相川は東京出身で東京芸術大学音楽学部器楽科打楽器専攻を卒業後、ブルガリアで開催されたプロヴディフ国際打楽器コンクールDuo部門にて2位入賞(1位なし)。さまざまなレコーディングやアーティストサポート、劇伴、現代音楽などに参加、大友良英スペシャルビッグバンド(前身は、あまちゃんスペシャルビッグバンド)、「琴鼓’n管のメンバー。

筆者は、MAGNOLIA 結成時から神田小川町Lydianで何度か聴いていて、最近では渋谷「公園通りクラシックス」という格好のハコで素晴らしい響きを聴かせてくれた。9月にはツアーも行われた。ブライトで色彩豊かで繊細なサウンド、心地よいグルーヴ、COVID-19の下で生まれたご機嫌なユニットの一つだ。


©Ami Hirabayashi

4月に録音されたこともあり、春を感じさせる曲や演奏も多めと感じる。1曲目<La voz del vient>はスペイン語で「風の声」という意味、まだ冷たい風をイメージしているのか物憂げに始まりながら、3人の鮮やかな音色が物語の始まりを告げる。続く<春、青空>は柳原が得意とするメジャーで爽やかに飛翔する一曲。爽やかな青空を3人が駆け抜けて行く。ちなみにライヴのMCで「春、青空をイメージした曲ですが、タイトルを考えています」という柳原に、「春、青空そのものでよいのではないですか?」と伝えたような気がする。柳原作曲では<Blue Mallett>は山本玲子に宛てて書いた曲だ。

山本作曲では、お蔵入りになっていたけどMAGNOLIAならと持ち出してきた<花影>。影があってこそ美しい花に、柳原と相原の立体感のある輝きを重ね合わせて。<古里>は飛騨ジャズフェスティヴァルで訪れた”飛騨の里”に触発され即興でできた曲。里山の風景。筆者はこの曲にマイク・マイニエリ<Sarah’s Touch>および福山雅治<最愛>と感性がつながっているようにも感じた(福山雅治バンドのスピンアウト、井上鑑・山木秀夫・三沢またろうのトリオには<最愛’s Touch>という演奏があるほど)。似てていけないのではなく、安らぎの先に世界観がつながったのではと思っている。

MAGNOLIAで特に嬉しいことのひとつは、相川作品の新鮮さ。相川も参加した「琴鼓’n管」の各曲もそうだが、ジャズ畑以外、そしてクラシック畑ならではの発想やアプローチの違いがユニットに新しい息を吹き込む。<Foggy forest>は森を包み込む潤いのある優しい霧を変拍子の中に描く。<Pause(パウゼ)>はドイツ語の休息。<舟>はすぐにひっくり返りそうな小舟、確信を持って波を乗り越えていくような力強いグルーヴで演奏される。

MAGNOLIAはまだ始まったばかり。豊かな色彩感と表現力、作曲力を兼ね備えたこのユニットの活躍に期待したい。

神野秀雄

神野秀雄 Hideo Kanno 福島県出身。東京大学理学系研究科生物化学専攻修士課程修了。保原中学校吹奏楽部でサックスを始め、福島高校ジャズ研から東京大学ジャズ研へ。『キース・ジャレット/マイ・ソング』を中学で聴いて以来のECMファン。Facebookグループ「ECM Fan Group in Japan - Jazz, Classic & Beyond」を主催。ECMファンの情報交換に活用していただければ幸いだ。

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください