#1207 RIO / アルバム『RIO』リリースライヴ at コットンクラブ
Text by Hideo Kanno 神野秀雄
ウクレレ奏者RIO
デビュー・アルバム『RIO』リリース・ライヴ
丸の内「コットンクラブ」
2022年4月2日(土) 16:45 19:30
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RIO: ukulele
井上 銘 Mei Inoue: guitar
山本 連 Ren Yamamoto: acoustic & electric bass
ダニエル・バエデール Daniel Baeder: drums, percussions
<Guest> 有田純弘 Yoshihiro Arita: banjo
Joker (Miki Saito)
My Favorite Things (Richard Rodgers / Oscar Hammerstein II)
Asa Branca – O Ovo (Luiz Gongaza – Hermeto Pascoal)
Waltz for Beth (RIO)
Mother (Miki Saito)
Bright Size Life (Pat Metheny)
Transit (RIO)
This Nearly was Mine (Richard Rodgers / Oscar Hammerstein II)
Wishy Washy (RIO)
若きウクレレ奏者RIOが、自らの20歳を記念して、ギタリスト井上 銘をプロデュースに迎えてアルバム『RIO』を2021年12月にリリース。その後、2022年1月に21歳(ハワイの成人!)を迎えたが、その録音メンバーによる待望のリリースライヴが、コットンクラブで行われた。
RIOは2001年生まれ、インターナショナルスクールでバイリンガルに育ち、現在は洗足学園音楽大学に学ぶ。10歳のときに家族と出かけたハワイでウクレレに出会う。これまでにハワイの由緒ある「デュークス・ウクレレ・コンテスト」や、「インターナショナル・ウクレレ・コンテスト」で1位を獲得。また、ニューヨーク・ハーレムのアポロ・シアターのアマチュア・ナイトでも1位を獲得している。「ダイナースクラブ・ソーシャル・ジャズ・セッション2013-2014」で最優秀賞を受賞。13歳での最年少受賞にリー・リトナー、ブルーノート東京より賞賛される。ハワイのカマカウクレレのエンドースドアーティストとして、NAMM Showにも参加している。14歳で初のフルアルバム『I〜around〜』をリリースしている。コンピレーションアルバム『Island Style Ukulele Vol.2』、カマカウクレレ100周年記念アルバム『Kamaka Ukulele Presents Keep Strumming!』は、”ハワイのグラミー賞”と称される「ナ・ホク・ハノハノ・アワード」を受賞、『I~around~』は、”International Album of The Year”にノミネートされた。2020年、2021年にブルーノート東京で小曽根 真、片山士駿、角野隼斗、中川英二郎、エリック・ミヤシロらと共演、その一部は動画が世界に公開された。
まずギターの井上、ベースの山本 蓮、ドラムスのダニエル・バエデールがステージへ、ビートを刻み出すと、後方からRIOがウクレレを弾きながら登場し、大きな拍手を受ける。アルバム2曲目の<Joker>、ノリのよいブルージーな曲から始まった。続いてリチャード・ロジャース&オスカー・ハマーシュタインの名曲、「The Sound of Music」より<My Favorite Things>を静かに透明感のある音とともに弾き始めるが、ベースとドラムスが打ち出す強烈なビートと交わったり、井上の鮮やかなソロも交えながら世界が移ろって行く。
アルバムにもルイス・ゴンザーガとエルメート・パスコアールが取り上げられたことに驚いた。「白い翼」から「卵」へ。ブラジルの爽やかな朝から、大地と人の躍動を賛美するような演奏。ちょっと普通ではない魅力的なハーモニーやメロディの曲だけに、メンバーが触発されて自由に飛び立つような印象を受けた。
愛犬ベスに捧げられた<Waltz for Beth>から<Mother>へ。特に美しく優しい2曲に心を掴まれる。
バイリンガル、いやむしろ英語、アメリカ文化の方が自然なRIOだが、大学は敢えて日本の音楽大学を選んでいて、その理由はずっと疑問に思っていたが、ギターの先生、有田純弘を慕って洗足学園大学を選んでいたことがわかった。そしてRIOはアルバムにも発売ライヴにも有田を呼んだ。バンジョーを持った有田が後方から登場、そして始まった曲はパット・メセニーの初リーダーアルバム『Bright Size Life』(ECM1073)より<Bright Size Life>。RIOのinstagram liveにパット・メセニーをリクエストしていたが、最近、浜町のSESSiON Daining & BarでのRIO & 井上銘のデュオで<Bright Size Life>を目撃して驚いた。有田が教えた1曲だというが、よく考えるとRIOが生まれる25年近く前の曲。なお、4月28日〜29日の角野隼斗と、エリック・ミヤシロ率いるブルーノート東京・オールスター・ジャズ・オーケストラの共演でも<The First Circle>が演奏されていたから、時を超えて若きミュージシャンたちをパットの曲がインスパイアするというのはとても嬉しい。
有田が入ってみると、ウクレレ、ギター、ベース、バンジョーの弦楽器4本、しかも起源や背景が異なる4本、そして打楽器1人のみが加わる編成。この弦楽器の集合だから生まれる不思議な響きとグルーヴが心地よい。
締めくくりはアルバム『RIO』の1曲目<Transit>。RIOの作曲の才能の素晴らしさと、井上らと創ったサウンドの巧みさが伝わり、高揚感と爽やかさを感じる。冒頭に録音時の動画もつけたのでぜひご覧いただきたい。
鳴り止まない拍手に、ウクレレ・ソロで<This Nearly was Mine>が端正に美しく演奏される。そして全員で盛り上がる<Wishy Washy>へ。
結局、アルバムと同数の9曲が演奏され、実際は、<Joker>または<You Know>が入り、アルバムにない<Bright Size Life>または<Almando’s Rhumba>が演奏される構成だった。21歳で初コットンクラブ・ライヴにしてこれだけの充実の内容とクオリティに圧倒される。これから世界に向けて無限に広がっていくRIOの音楽が楽しみでならない。