#1612 『Yuko Yamaoka plays the music of Satoko Fujii / Diary 2005-2015 』
『山岡優子/藤井郷子の音楽日記 2005-2015』

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text by Masahiko Yuh 悠 雅彦

Libra Records Libra 201-053/054(2CD)

Satoko Fujii 藤井郷子 (composer)
Yuko Yamaoka 山岡優子 (pf)

CD1
1. 012805 0:21/2. 012905 0:19/3. 020405 0:27/4. 020505 0:42/5. 021205 0:56/6. 021305 1:27/
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CD2
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Recorded at Nagoya Piano Choritsu Center, Japan, on June 26 &  27, 2018, by Yasuhiro Usui.


例の調子で、笑い飛ばしたかと思うと、急に素っ頓狂なアイディアで聴く者の心を鷲掴みにして悦にいる、といったいつもの藤井郷子はここにはいない。当然だろう。なぜって彼女の作品集でありながら、 彼女は演奏者として加わっていないのだから。これは藤井郷子の楽曲をクラシック畑のピアニスト、山岡優子が、藤井郷子の過去に日の目を見る機会のなかった作品を集めて、ピアノのソロで再現したユニークなCD2枚組。発売されたのは昨年の11月だが、取り上げるほどの面白さはないだろうと勝手に決めつけて放置したまま、届いたばかりの『コンフルエンス』( LIBRA  202 – 057 )を聴こうとした瞬間、何故かふとこの作品に目がいった。スペインのドラマー、ラモン・ロペスと演奏した最新作にはしんがりを務めてもらおうかぐらいの気持で『ダイアリー』から先に聴き始めたのだが、途中で放り出せなくなった。
極くかいつまんでまとめれば、本作は藤井郷子の親しい友人でクラシック系のピアニスト、山岡優子が、何と藤井郷子の楽曲を演奏したアルバム、それもCD2枚組作品だ。ジャケットの裏面に、この2枚組で演奏された全曲が書き出されているのだが、その数たるやディスク1が62曲、ディスク2が56曲、すなわち2CDに計118曲が収録されているという物凄さ。曲名も無論ない。ただ118曲の数字がズラッと並んでいるだけだ。最初は何のことやらさっぱり分からなかった。試聴後、藤井自身が書いた解説文を読んで、これがタイトルもつけられることなく作曲されたまま放置されたメロディー、あるいはメロディーの断片だったものを、やむなく年月日で代用した数字だと分かった。例えばオープニング曲には「012805」の数字が与えられているが、これはつまり2005年1月28日に藤井がピアノで作曲した断片であることをそのままタイトルに、すなわちタイトル代わりにした数字ということになる。タイトルの『Diary  2005 – 2015 / Yuko  Yamanaka plays the music of Satoko Fujii 』がこれを明瞭に物語る。2枚のディスクに118曲ということは1曲が平均1分内外という計算になる。
藤井郷子自身があとがきでペンを執っているのだが、こんな風に書いている。「楽器演奏法習得に練習が必要なのと同様、作曲も練習ができるという話を聞いた。それがこのプロジェクト「Diary」に繋がった。ピアノの前での最初の15分は即興演奏か作曲に費やすようになった。一つの音が次に鳴らしたい音を導く。15分で1小節しか書けない時もある。できるだけその15分で1曲仕上げるように続けた。結果、小曲ばかりになった。2005年からの音楽ノートは毎年1冊ペースで増えていった。2015年くらいから、これをなんとか録音できないかと考え始めた。常にインプロヴァイザーとして活動してきた私にとって、書いたものをそのまま弾くのは難解かつ苦痛な作業で、録音は諦めていた」。
そんな藤井の脳裏に友人の山岡優子さんの演奏が閃いた。2018年の正月だったという。藤井はこう書いている。「彼女はクラシック畑の人だが、音楽にとてもオープンな人で、1996年にニューヨークで私のオーケストラのデビューCD『South Wind』録音時にスタジオへ遊びにきて演奏にも参加した勇者でもある」と。
以上で、この2枚のアルバムがどのような類の作品であり、なぜ藤井郷子自身が演奏しなかったかが解ってもらえただろうと思う。私はこの作品集を聴いていつしかまるで現代にシューマンかグリーグが蘇ってきたような錯覚すら覚えた。普通、この手の演奏録音となれば、ものの数十秒、長くても1~2分のメロディーの断片が延々続けば、ストーリー性のなさが致命的な弱点となって、全体が一つの作品としてのまとまりや一貫性を欠く恐れが多分にあると半ば恐れていた。だが、幸いにして杞憂に終わった。もしやと恐れていた演奏の空疎な退屈感もまったくなかった。2枚組ながら、少しの退屈感を感じることもなく聴くことができた。山岡が藤井とどんなやり取りをして、どんなアルバム展開にしようとしたのか。演奏や藤井の書いたノーツからは察しがつかない。もし藤井郷子からの注文や要請がほとんどない状態で、この118曲を演奏できたとしたら、この山岡優子というピアニストは並外れた詩的センスの豊かな才媛に違いない。こんなことを書いたら藤井に怒られるかもしれないが、例えばディスク2の第2曲「062809」の愛らしいワルツなど、普段の彼女の作品からは想像できないロマン美豊かな旋律が実に印象深かった。(2019年5月3日)


♫ 試聴サイト;
http://www.squidco.com/miva/merchant.mvc?Screen=PROD&Store_Code=S&Product_Code=26616
♫ 楽譜サイト:
http://www.squidco.com/miva/merchant.mvc?Screen=PROD&Store_Code=S&Product_Code=26620

悠雅彦

悠雅彦

悠 雅彦:1937年、神奈川県生まれ。早大文学部卒。ジャズ・シンガーを経てジャズ評論家に。現在、洗足学園音大講師。朝日新聞などに寄稿する他、「トーキン・ナップ・ジャズ」(ミュージックバード)のDJを務める。共著「ジャズCDの名鑑」(文春新書)、「モダン・ジャズの群像」「ぼくのジャズ・アメリカ」(共に音楽の友社)他。

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