#2054 『Derek Bailey & Mototeru Takagi / Live at FarOut, Atsugi 1987』
『デレク・ベイリー&高木元輝/ライヴ・アット・厚木FarOut 1987』

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text by Keita Konda 根田恵多

NoBusiness Records‎ – NBCD 132

Derek Bailey – guitar
Mototeru Takagi – soprano sax

1. Duo Ⅰ
2. Duo Ⅱ
3. Duo Ⅲ
4. Duo Ⅳ

Recorded live in 1987 at FarOut, Atsugi, Kanagawa, Japan by Minoru Fukuda
Mastered by Arūnas Zujus at MAMAstudios
Produced by Takeo Suetomi, Kojiro Tanaka and Danas Mikailionis
Co-produced by Valerij Anosov
Release coordinator: Kenny Inaoka from JazzTokyo

リトアニアのNoBusiness Recordsによる“Chap Chap Series”の第2期が始まった。2017年から2019年にかけて展開された第1期では、姜泰煥、吉沢元治、沖至、豊住芳三郎、バール・フィリップスらの優れた作品が10枚リリースされた。第2期も10枚のリリースを予定しており、その第1弾としてリリースされた3枚のうちの1枚が本作、デレク・ベイリーと高木元輝による1987年のライブ録音である。

最初のトラックは、高木のロングトーンにベイリーがハーモニクスを被せるところから幕が開ける。ゆっくりとしたオープニングから徐々に加速していき、約28分間、驚くほど息の合った即興を展開する。スティーヴ・レイシーから多大な影響を受け、ソプラノしか演奏していなかった時期もあるという高木の演奏には、確かにレイシーを思わせる部分がある。高木はベイリーの発する音に呼応しながら丁寧にフレーズを積み重ねていく。ベイリーもまた高木の音をよく聴いており、このデュオでしか成し得ない音楽を作り上げている。最後はベイリーがフェードアウトし、高木のロングトーンで幕を閉じる。

2つ目のトラックは、ベイリーのソロから始まる。12分ほどベイリーのソロが続いた後に、高木の柔らかいソプラノがおもむろに入ってくる。それまでベイリーが構築してきた世界に干渉するでもなく、異化するのでもなく、自然に調和している。それから5分ほど続くデュオの演奏は、何気なくすっと終わる。

次のトラックでは、ひらひらと舞う高木のソプラノにベイリーのギターが並走し、6分過ぎから高木のソロへと移行する。くねくねと曲がりくねった道を突き進む高木のソプラノの音色の素晴らしさが強く印象に残る。手を止めて高木の音にじっと聴き入るベイリーの姿を想像させられる。

最後のトラックは、高木による息を多分に含んだソプラノから始まる。このトラックでは、ベイリーによるハーモニクスとサステインの巧みなコントロールに耳を奪われる。リズミカルに音を刻む高木にベイリーが合わせていくシーンも興味深い。そして約70分続いた2人の交歓は、唐突に終わりを迎える。クライマックスに向かって盛り上げていくといったこともなく、観客の盛大な拍手に包まれることもなく、ぷつっと途切れるように終わっている。

 

ベイリーと高木の共演盤には、他に『Duo & Trio Improvisation』(1978, Kitty)がある。

阿部薫、吉沢元治、近藤等則、土取利行という錚々たる面子とのセッションである。この盤では、(録音・ミックスのせいもあるかもしれないが)ベイリーのギターはやや後ろに引いている。決して地味な演奏というわけではない。むしろ極めてスリリングでスピード感のある即興演奏を繰り広げているが、非常に抑制が効いており、アンサンブルの中にすっと溶け込んでいるようにも感じられる。ベイリーと高木が共演しているトラック(阿部とのトリオ)も、強烈な個性をもった三者がいずれも突出しすぎることなく、素晴らしい「集団即興」を成立させている。

それに対し、デュオという形式をとり、2人が「がっぷり四つ」で組み合っている本作は、ベイリーと高木の相性の良さを存分に味わうことのできる作品となっている。80年代の高木のソプラノをじっくりと聴けるという意味でも、他に類を見ない、非常に貴重な記録と言えるだろう。

 

 

アバター

根田 恵多

根田恵多 Keita Konda 1989年生まれ。福井県の大学で教員を務める。専門はアメリカ憲法、とくに政教分離、精神的自由権。主な著作に『判例キーポイント憲法』(共著、成文堂、2020年)『教職課程のための憲法入門〔第2版〕』(共著、弘文堂、2019年)など。ただのジャズファン。ブログ http://zu-ja.hatenablog.com/

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