#2114 『井上陽介トリオ/NEXT STEP』with 武本和大、濱田省吾
『Yosuke Inoue Trio / Next Step』with Kazuhiro Takemoto & Shogo Hamada

閲覧回数 3,523 回


Text by Hideo Kanno 神野秀雄

『井上陽介トリオ/ネクスト・ステップ』
『Yosuke Inoue Trio / Next Step』

Pony Canyon Inc. (M&I)  MYCJ-30668
2021年9月1日 3,000円(税込)

井上陽介 Yosuke Inoue (bass)
武本和大 Kazuhiro Takemoto (piano)
濱田省吾 Shogo Hamada (drums)

1. ON GREEN DOLPHIN STREET (Bronislaw Kaper) 
2. NEXT STEP (Yosuke Inoue 井上陽介)
3. TRANQUILITY (Kazuhiro Takemoto 武本和大) 
4. TAKE THE “A” TRAIN (Billy Strayhorn) 
5. WAVE (Antonio Carlos Jobim)
6. HAMASHO BLUES (Shogo Hamada 濱田省吾)
7. SPEAK LOW (Kurt Weill)  
8. YOU RAISE ME UP (Rolf Lovland) 
9. SLEEP WALKER’S WALTZ (Kazuhiro Takemoto 武本和大)
10. MAGIC TOUCH (Yosuke Inoue 井上陽介)
11. TRAVELS (Lyle Mays / Pat Metheny)  

Produced by Yosuke Inoue
Co-produced and directed by Hiro Yamashita (Pony Canyon)
Recorded at Sound City Setagaya, Tokyo on May 10&11 of 2011
Engineer: Kentaro Kikuchi
Assistant engineer: Shion Nagano
Mastered by Yuta Tada at Pony Canyon Mastering Room on June 23 of 2021
Artwork & design: Yoshie Yokoyama (Alfaeyes design Inc.)

武本和大と濱田省吾、気鋭の若手とともに旅を続けてきた井上陽介トリオの第2弾

井上陽介は1964年、大阪生まれ。1991〜2004年にニューヨークを拠点に、ハンク・ジョーンズ、ドン・フリードマンをはじめ数々のグループでのレコーディングやライブ、ヨーロッパツアーへも参加。帰国後は、塩谷 哲、渡辺香津美、大西順子、J-Popのサポートでも活躍している。近作では筆者は2014年と2016年に録音された、井上陽介(b)、秋田慎治(p)、江藤良人(ds)、荻原 亮(g)のカルテットによる『Good Time』『Good Time Again』(Pony Canyon)を高く評価していて、気心の知れた仲間たちと創った力の抜けた意欲作だった。

そして、2018年録音の『New Stories』から動き出したのは、親子ほど歳が離れたピアノの武本和大、ドラムスの濱田省吾を迎えて結成された「井上陽介トリオ」。小曽根 真教授が率いる国立音楽大学ジャズ専修出身の気鋭の若手2人だ。井上は自らベースの講師として教鞭を取り、アンサンブルとしては多くの学生たちに接する機会があり、その中で青田買い、いや白羽の矢を立てたのがこの2人だ。井上はハンク・ジョーンズと46歳、ドン・フリードマンとは29歳の年齢差があるから井上も上の世代に育てられたことになる。ピアノの武本和大は、1995年東京生まれ、2020年にはアルバム『I Pray』を配信リリース、また小曽根真とともにブルーノート東京に出演した。自身では、佐藤潤一(b)、きたいくにと(ds)とのKKJトリオでも活動している。濱田省吾は、1993年山口県生まれ、自身のグループの他、池田 篤、椎名 豊、中島朱葉などのグループで活躍している。

多忙な井上だが、井上陽介トリオを活動の中心と明確に定め、先々のツアーを決めて、全国を何度も旅して演奏し、青山ボディ&ソウル、大塚グレコ、新宿ピットインなど都内でも頻繁にライヴを行ってきた。2年間にわたって寝食を共にしながら旅を続け、演奏を重ねてきたことは、最近の日本ジャズ界では珍しい。余談だが、井上はSNS上で2人も交えながら、ユーモアに溢れる写真を毎日投稿していたことがあり、楽しそうな旅と、3人のコミュニケーション、そしてCOVID-19下でも観客を楽しませる心が見える。

井上陽介トリオのライブを2020年にレポートしたが、2021年8月2日に新宿ピットインで聴いた井上陽介トリオの音は、全く違う次元のものになっていた。武本と濱田が今まで以上に自信に溢れ、ときに井上はそれに委ねるようであり、より自由でよりタイトな音楽に生まれ変わっていた。その音を切り取った『Next Step』は素晴らしいアルバムとなった。オリジナル、スタンダード、ポップスのカヴァーがほどよいコンビネーションとなっている。個人的な希望を言えば、もっとメンバーのオリジナル多めを楽しみにしたいと思うが、全国ツアーで売るにはスタンダードがある方が安心感があるのは確かだ。しかも井上トリオのスタンダードは月並みな演奏では終わらず、期待を裏切る仕掛けと感性が隠されていて違った楽しみがある。

オリジナルは5曲。特に目を引くのは武本のオリジナル<Tranquility>と<Sleep Walkers Waltz>のクオリティーの高さと美しい響きと心地よさだ。濱田も<Hamasho Blues>を提供し、そのドラミングが光る。タイトル曲<Next Step>は高揚感とドライブ感のあるフォービート。<Magic Touch>は『大西順子セクステットプラス/Live XI』に収録された井上の曲だが、代表曲の一つになり、トリオで頻繁に演奏される他、塩谷 哲トリオでも演奏されている。井上のオリジナルは身も蓋もなくかっこいいわけでもないのだが、シンプルで少し緩めの見かけから、ちょっとしたフレーズやハーモニーやキメなどに複雑さとかっこよさが隠されていて油断がならない。それがユーモアに溢れながら細部にこだわる人柄同様の魅力となっている。

アルバムの締めくくりは『Pat Metheny / Travels』(ECM1252/53, 1983年)から、<Travels>。井上のベースが歌い、美しいピアノの響き、濱田のブラシワーク、聴きながらなぜか自然に涙が溢れてくる。次への一歩、そして、3人の旅は続く。。。

井上陽介トリオ 「Next Step」ツアー 2021
最新情報は、井上陽介ウェブサイトを確認されたい。
10月2日 吉祥寺 MJSmile
10月17日 神奈川 Desture
10月20日 大阪 ミスターケリーズ、
10月21日 徳島 スイング
10月22日 岡山 壱番館
10月23日 宇部 BOB
10月24日 鈴鹿 どじはうす
10月25日 甲南 Zing
10月26日 名古屋 ミスターケニーズ
10月28日 大塚 グレコ
11月24日 渋谷 Body & Soul

神野秀雄

神野秀雄 Hideo Kanno 福島県出身。東京大学理学系研究科生物化学専攻修士課程修了。保原中学校吹奏楽部でサックスを始め、福島高校ジャズ研から東京大学ジャズ研へ。『キース・ジャレット/マイ・ソング』を中学で聴いて以来のECMファン。東京JAZZ 2014で、マイク・スターン、ランディ・ブレッカーとの”共演”を果たしたらしい。

コメントを残す

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。