#1110 ECM Records at 50 / ジャズ・アット・リンカーン・センター

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ECM Records at 50 – With Jack DeJohnette, Vijay Iyer, and more
2019.11.2 20:00 Rose Theater, Jazz at Lincoln Center, New York
Text by Hideo Kanno 神野秀雄
Photo by Ayano Hisa / JALC 檜佐文野
Photo by Luciano Rossetti / Phocusagency

2019年11月1日〜2日、ECM 50周年記念スペシャルコンサート「ECM Records at 50」が、ニューヨーク「ジャズ・アット・リンカーン・センター」(JALC)で開催された。JALCは、セントラルパークの南西の角、コロンバスサークルに位置しており、今回開催された大きめのホール「ローズ・ホール」とジャズクラブ「ディジーズ」から成り、ウィントン・マルサリスが芸術監督を務める。まずは、メンバーを眺めていただきたい。これだけで溜息が出るのではないだろうか。ECM初期から関わった、エグベルト・ジスモンチ、ジャック・ディジョネット、ワダダ・レオ・スミスらから、現在のニューヨークジャズシーンを牽引する中堅まで、文字通りのオールスター32人が一同に会した。ピアノにいたっては、ジャックも含めると12人もおり、しかも2日に分けるのではなく、2時間半ほどのプログラム。豪華というよりは、とにかく全員出す小学校の学芸会のような混沌とした状況が頭い浮かぶ。実際にはとてもよくできたプログラムと運営進行で現在のECMを俯瞰し、その最高の演奏とサウンドのクオリティを確かめることができる素晴らしいコンサートとなった。

Tenor Saxophone: Ravi Coltrane, Joe Lovano, Mark Turner
Trumpet: Ralph Alessi, Avishai Cohen, Enrico Rava, Wadada Leo Smith
Guitar: Bill Frisell
Piano: Egberto Gismonti,Fabian Almazan, Nik Bartsch, Marilyn Crispell, Giovanni Guidi, Ethan Iverson, Vijay Iyer, Shai Maestro, Andy Milne, Craig Taborn
Piano and Voice: Meredith Monk
Cello: Anja Lechner
Bass: Dezron Douglas, Matthew Garrison, Larry Grenadier, Drew Gress, Thomas Morgan, Barak Mori,
Drums: Carmen Castaldi, Andrew Cyrille, Jack DeJohnette, Mark Ferber, Ziv Ravitz, Nasheet Waits

セットリストを写真とともにご紹介する。

1st set


L: ©Rossetti PHOCUS R: ©Ayano Hisa / JALC
Egberto Gismonti (piano)
Caravela (Egberto Gismonti / Geraldo Carneiro)
Frevo (Egberto Gismonti)


©Rossetti PHOCUS
Joe Lovano (sax)
Marilyn Crispell (piano)
Carmen Castaldi (drums)

Seeds of Change
The Smiling Dog


L: ©Rossetti PHOCUS R: ©Hideo Kanno
Larry Grenadier (bass)
Compassion


L: ©Rossetti PHOCUS R: ©Ayano Hisa / JALC
Vyay Iyer (Feder Rhodes and acoustic piano)
Wadada Leo Smith (trumpet)

Path(new composition)


©Ayano Hisa / JALC
Adrew Cyrille (drums)
Wadada Leo Smith (trumpet)
Bill Frisell (guitar)

Pretty Beauty
TGD


©Ayano Hisa
Nik Bärtsch (solo piano)
Modul 5


©Rossetti PHOCUS
Avishai Cohen (trumpet)
Fabian Almazan(piano)
Barak Mori (bass)
Ziv Ravitz (drums)

Shoot Me in the Leg
poem: Farewell by Israeli Poet named Zelda


L: ©Ayano Hisa / JALC R: ©Hideo Kanno
Craig Taborn (piano solo)
Avenging Angel improvisation


L: ©Hideo Kanno R: ©Ayano Hisa / JALC
Jack DeJohnette (drums)
Ravi Coltrane (sax)
Matthew Garrison (bass)

In Movement

2nd set


©Ayano Hisa / JALC
Ethan Iverson (piano)
Mark Turner (sax)

Showdown


(Press Photo: ©Juan-Calros_Hernandez)
Ralph Alessi (trumpet)
Ravi Coltrane (sax)
Andy Milne (piano)
Drew Gress (bass)
Mark Ferber (drums)

Imaginary Friends


©Ayano Hisa / JALC
Shai Maestro
Larry Grenadier
Nasheet Waits

Hank and Charlie


©Ayano Hisa / JALC
Bill Frisell (guitar)
Thomas Morgan (bass)

It Should Have Happened a Long Time Ago


©Ayano Hisa / JALC
Anja Lechner (cello)
Improvisation into piece by Carl Friedrich Abel


©Hideo Kanno
Meredith Monk (piano, vocal)
Gotham Lullaby


©Ayano Hisa / JALC
Enrico Rava (trumpet)
Joe Lovano (sax)
Giovanni Guidi (piano)
Dezron Douglas (bass)
Nasheet Waits (drums)

Interiors
Fort Worth


©Ayano Hisa / JALC

1969年にミュンヘンでECMを創設し、50年にわたりそのプロデューサーを務めたマンフレート・アイヒャーとともにECM 50周年を祝う集いと思われたが、マンフレート・アイヒャーの姿はなく、以下のメッセージが読み上げられた。その後のヨーロッパでのイベントには出席していたので特に健康上の問題ではないようだし、2019年1月のウィンター・ジャズ・フェストのECMステージでも50周年スピーチなんか、拒否したくらいなので、セレモニーには深い興味を持たず、新しい音を探し創る活動を優先しそうだ。そもそもミュンヘンから人が来るというより、ECMアメリカの国内イベントとして成立していた。

A note from Manfred Eicher
I’m sorry I can’t be there tonight to participate directly in this gathering of old and new friends from across North America and from further afield – from Brazil, Israel, Italy, Germany and Switzerland. The players you will hear this evening, united in their individuality as musicians, are among the most creative artists of our time, and I’m glad that each of them has found a place in our broad panorama. Some of them have been in residence at the label for decades, some are recent arrivals, still others are welcome visitors making seasonal returns, always with new information.
The ECM story has been a fascinating journey so far, and I believe that along the way we have all sharpened our ears and discovered a little more about the art of listening.
I’m grateful to the musicians for their very dedicated work over this last half century and, too, to the audiences whose crucial support keeps our label alive. Many thanks to all of you.
Thanks also to the Rose Theater, Jazz at Lincoln Center, and ECM New York for organizing this special event, which I hope you all enjoy.

トップバッターはギターを持たずに現れた、エグベルト・ジスモンチ。出演者リストを見て気になったのが、エグベルト・ジスモンチをどこに置くのか?また1〜2曲だけの演奏をよしとするのか?今回はピアノ限定での演奏。ジャズバラード的でもある静かな穏やかな曲を心をこめて演奏する。次いで<Frevo>のリフが聴こえてくると客席から歓声が上がる。この機会をナナ・ヴァスコンセロスとともに迎えられなかったことは少し残念だが、エグベルトの躍動感と輝きに満ちた演奏に会場が魅了された。

ステージの配置としては、左手にピアノとフェンダー・ローズ・ピアノ(電気ピアノ)、中央に共用のドラムセット、まるでセッションのよう。そして右端にジャック・ディジョネット専用のドラムが置かれている。つまり、ジャックのトリオ以外では、重心が左に寄ってしまう。PAを通せば問題ないという合理的なのか、ただ視覚的にはちょっとアンバランスには見えた。

エグベルトに次いで、ジョー・ロヴァーノ・トリオ。2019年に『Trio Tapestry』(ECM 2615)をリリースしたメンバー。

ヴィジェイ・アイヤーは先日来日したばかりだが、今回はトリオではなく、ワダダ・レオ・スミスとの世代を超えたデュオ。

“RONIN(浪人)”という名のグループでも活躍するピアニスト、ニック・ベルチェ。和風な姿で現れたが、<Module 5>で、ミニマルミュージック的にピアノを連打しながら、絶妙に変わって行く倍音構成に圧倒された。

全体的には、静寂を感じる耽美的なサウンドに包まれる、というよりは、トランペットとサックス計7人を擁しつつ、メインストリームなジャズにつながる熱めでドライブ感のある演奏が多かったし、穏やかな曲でも暖かみがあり、また、それぞれが短い時間づつの共演を楽しんでいる風だった。この傾向は今回に始まったことではなく、毎年1月のウインター・ジャズ・フェストでのECMステージ(2020年はECMステージはない見込み)でもその傾向があり、マンフレート・アイヒャーもニューヨーク、そしてアメリカ発の音にはそれを楽しみ求めているようでもある。ひいては、現代のECMとブルーノート・レコードでも微妙な互換性が出てくる。ヨーロッパ在住のミュージシャンは少なめというところでもあった。他方、ニューヨーク在住のイスラエル出身者が多いのも最近の傾向だ。その中のひとり、ピアニストのシャイ・マエストロは、次作に収録予定という、ハンク・ジョーンズとチャーリー・ヘイデンに捧げた<Hank and Charlie>を演奏した。

少し違った方向では、アンニャ・レヒナーのチェロのソロ。カール・フリードリヒ・アーベルの小曲をモチーフにし拡張するインプロヴィゼーションを演奏した。

また、メレディス・モンクを生で聴くことができたのも貴重だった。作曲家、パフォーマー、演出家として知られ、その作品の他者による演奏や、映像でパフォーマンスを見る機会に留まってきた。自身の指先と声から紡ぎ出される<Gotham Lullaby>はとても美しかった。

締め括りとなったのは、ジョー・ロヴァーノ&エンリコ・ラヴァのクインテット。バラード的な<Interiors>から、4ビートでのインタープレイを繰り広げる<Fort Worth>を演奏して幕を閉じる。

最後に出演者全員がステージに再登場し、一列に並んでいる客席に挨拶して、長いコンサートを終了した。

神野秀雄

神野秀雄

神野秀雄 Hideo Kanno 福島県出身。東京大学理学系研究科生物化学専攻修士課程修了。保原中学校吹奏楽部でサックスを始め、福島高校ジャズ研から東京大学ジャズ研へ。『キース・ジャレット/マイ・ソング』を中学で聴いて以来のECMファン。東京JAZZ 2014で、マイク・スターン、ランディ・ブレッカーとの”共演”を果たしたらしい。

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