チックとマリンバ by ミカ・ストルツマン 
Chick Corea and Marimba by Mika Stolzman

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Text by Mika Stolzman ミカ・ストルツマン

チックに最後に会ったのは、2020年7月頭、チック・コリア・アカデミーへのゲスト出演依頼を受けてのオンライン上でした。その時はバッハを3人でリモート共演して、彼が作曲したマリンバ・ソロ作品”バースデー・ソング・フォー・ミカ”が聴きたいとリクエストあったので演奏しました。

その後は夫リチャード・ストルツマンへのサプライズ・バースデー・メッセージのやり取りや、私達が演奏した9月ロックポートでの配信演奏を聴いた感想メールなどをもらったりして何度かEmailやテキストメッセージで連絡を交わしていましたが...。
まさか?こんなに急に逝ってしまうなんて、まだ信じられずにいます。大きな花火が上がって消えていくように、チックはこの世から、スゥ〜といなくなってしまった感じがしています。

「マリンバはピアノとドラムの中間に位置する楽器」 (by チック・コリア)

チックと最初に会ったのは1999年トロントに留学してた頃。“オリジン”バンドのコンサートがあり聴きに行ったら、ステージ上の小さなマリンバでチックが「Wigwam」のイントロを演奏した事に興奮して、サイン会に並び「マリンバ演奏してくれて有難う!」と伝えながら恐る恐る自分のCDを渡した時...僕はマリンバ大好きなんだよ!」とチックが言った言葉が忘れられず…それから私の夢はチックにマリンバ作品を書き下ろしてもらうことになったのです。

その後、幸運な事に、エディ・ゴメス、スティーヴ・ガッド、リチャード・ストルツマンとの出会いがあり、チックとも繋がり個人的に知ってもらうことが出来、色んな経過があり...夢がどんどん叶って行きました。

2012年「マリカグルーヴ」というマリンバ、クラリネット、ドラム、ベースによるカルテットの作品を委嘱して書き下ろしてもらった時、チックとゲールからお招きを受けて、私とリチャードはフロリダ・クレアウォーターの自宅に行きました。自宅スタジオには、5オクターブのヤマハマリンバと4オクターブのマッサーマリンバが置いてあり、早速私がマリンバに飛びついて、マリカグルーヴを弾き始めたらチックがピアノで伴奏してくれてコーチしてもらった感動と興奮は鮮明に記憶に残っています。そして4人での音楽談義、チックが趣味で絵を描いてるアトリエなども見せてもらったり、プールサイドにでて、夫婦が長く一緒にいるコツなども教えてもらったりして明け方まで語り合いました。車に乗せてもらった時はストラヴィンスキーを聴いていたのが印象に残っています。

チックはヴィブラフォンよりマリンバの方が好きだったから、ゲイリー・バートンさんに良く「マリンバも弾いてよ!」と言ってたそうですが、「なかなか演奏してくれなかったんだよ」、と話してくれました。ライオネル・ハンプトンさんとの面白い経緯なども聞かされました。

私は、彼のピアノ協奏曲第1番の第3楽章がマリンバに合うと思い、ピアノソロ部分をマリンバで演奏して良いか?と尋ね、もちろん!と手書きのスコアをもらい、その2年後にメキシコとイタリアのオケと協演を果たしました。彼はいつも自分のことのように喜んでくれて、本番には必ずメッセージをくれました。この曲をボストン現代オーケストラと録音した時もスタジオに来てくれて、その後、彼の「シー・ジャーニー」を即興でレコーディングしたのがCD『デュオ・カンタンド』(日本コロムビア)に収録されています。

2019年3月末にはソロマリンバ作品「バースデー・ソング・フォー・ミカ」が届きました。その時は1ヶ月間ぐらい、何度も私が練習した録音を送っては、チックからアドバイスをもらうという作業を繰り返して、6月12日チックの78歳誕生日にカーネギーホールでドラム(スティーヴ・ガッド)とのデュオで世界初演しました。しかし、その録音を聴いてもらった時に、この作品はマリンバソロで演奏して欲しいような雰囲気を醸し出してたので、その後はマリンバソロで聴いてもらおうと励み現在に至ってます。

作曲家としてのチックとの共同作業は素晴らしいものでした。

チックは、コロナ渦のオンラインでのライブでも、最初にマリンバを即興で弾いたりしていましたが、マレットは私があげたものを使ってたので、亡くなられた後、ゲールとジョーダンに、チックが使ってたマレットを形見に欲しいとお願いしてあります。私はチックに演奏を聴いてもらうことが大きな励みとなり、大きなエナジーになっていたので、1本何か支えを無くしたような気がしています。

チック本人プロデュースで、マリンバでのチックコリア作品集(CD)を作ることが夢だったし、チックは良く私達に、チック、ゲール、リチャード&ミカの4人でロマンティックカルテットでレコーディングして、コンサートもしたいね、とも言っていました。

私にとって何十年も前からの憧れであったチックさんと親しく交流ができた上、曲も書いてもらい、沢山の素晴らしい思い出が作れた事は、とても幸運で大きな大きな財産となりました。

マリンバを愛してくれたチックさん...有難うございました。

Love, MIKA

Birthday Song for Mika 2019 by Chick Corea (Marimba Solo)
ミカ・ストルツマン マリンバ・リサイタル (2021年2月27日 銀座・王子ホール)


ミカ・ストルツマン Mika Stoltzman – Marimba
熊本県天草出身。2008年からニューヨークを拠点に演奏活動を展開し、10回のカーネギーホール(Weill & Zankel Hall)でのソロリサイタルをはじめ、世界21カ国66都市で演奏。チック・コリアより「マリンバ協奏曲」など3曲が捧げられるなど、様々な著名音楽家より楽曲提供を受ける。2014年より夫リチャードとのデュオを本格的に開始し多数の国際音楽祭等に出演。夫妻でのデュオ・アルバム『デュオ・カンタンド』『パリンプセスト』をリリース。自己名義CDアルバムが7枚、スティーヴ・ガッド&エディゴメスとのライブDVDをリリース、スティーヴ・ライヒのCD『Triple Qurtet』には編曲演奏が収録されている。クラシックとJAZZを縦横無尽にクロスオーバーするニュー・ジャンルのマリンバ奏者として幅広い演奏活動を展開している。公式ウェブサイト Mikarimaba

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