投稿者: 及川公生

ピアノのサウンド構成を、何かの風景に溶け込ませる趣で捉えた録音。

ボーカルの音像のすっきり感に酔う。

オンマイクの極めて良質ボーカルの音像が、きりりとセンターに突き建つ。

下賀茂神社の虫の鳴き声も聴けますよ。

ライヴで此処まで音像を引き立てた録音ができていた事は、当時のスタッフに喝采だ。

だが、時が経つにつれ、あ〜アナログ録音って、このサウンドだよ．．．と、記憶が蘇る。アナログ録音が持つ特有の重厚さを満喫。

ヴォーカルを取り巻く楽器群の引き立てが、絶妙のテクニック。ミックスに時間を要した配慮が窺える。

ジェームス・ファーバー録音＠アヴァター・スタジオ。グレッグ・カルビ マスタリング＠スターリング・サウンド。なんと贅沢な陣容。

ジェームス・ファーバーのヴィレッジ・ヴァンガード・レコーディング盤。黙って通り過ごせない。

ピアノの自然さに対するベースとドラムが迫り来る音像は、このグループの印象を強める効果なのかも知れない。

このサウンドを聴いていると、ジャズの分野でのハイレゾ録音の可能性を感じ取る。

リバーブ処理を上手く使って空間に泳がせる表現に、現実の演奏の輪郭がドサッと展開。

私自身、今まで経験しなかった録音とミックス技術を尽くした録音表現作品だと思う。

ジャズに欠かせないミュージッシャンのパワーが、録音のパッケージ規格の頂点を叩く肝の座った処理に拍手。

演奏者の技量を音圧で捉え、ミックス・バランスでかぶりを仲間に取り込む。

アコースティックをその場で聴いている雰囲気。

ライヴは制約のあるマイキングを強制される。それを録音の技法で、クリアな音色に仕上げて、清々しい音色の包囲でヴォーカルを生き生きと浮かせる。

トランペットやソロをとるエレキギター、みんな中学生、高校生。バックの熱いサウンドも同じく。音場をディストーションで構築したか？

中音域に濃厚なサウンドバランスを集中さている意図が、見事に結果を出して、ジャズ・サウンドは、こうであらねば．．．。

私自身、楽器の演奏力はピアニッシモで決まる、生意気な言い方だが、と教えられた。録り方も「そうなのだ」。このCDを聴いて膝を叩いた。生であれシンセであれ、ピアニッシモが美しい。

録音の年代もまちまちで、録音の状態を語るのは難しいが、その年代のサウンドの在り方が知識になる。

オンマイクは当然として、胴鳴りの雄大さ、響きが抜けのいい音質で捉えられ、マイクのテクニックでしか味わえないサウンドは、生とは違った世界観をもたらしている。

音の勢いを感じさせる録音。
ミックス技術にも大胆さがうかがえる。

森山の、あの強烈、圧倒されるサウンドが､見事に捉えられている。

この録音の成功の起因は音質とバランスだ。音像は広げる事なくセンターに厚く集中させたのも音圧を感じさせて心地いい。

トリオが均一な音像構成。リアルな効果的なサウンド造りと、空間感にヨーロッパ録音の特徴を聴ける。